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四日目・08:00のの流れを汲んでおります。



「……お前ら、何でそんなに疲れてんの」
「ナタクのせいだ」
「は?ナタク?」
「あぁ」
 そう言ってウイングはこちらを見た。
 瞳に映る恨めしげな感情には気がついたが、だから何というわけもなくフイと顔を背けた。確かに自分は原因だったかもしれないが、別に頼んだわけでもないし……というか邪魔をされて不満が残ったのはこちらなのである。そんな目で見られるいわれはない、ハズだ、きっと。
「……別にオレは悪くない」
「朝っぱらからこの時間までずっと卓球を続けていたヤツが言うセリフか」
「……卓球…で朝っぱらからこの時間まで!?」
「放っておいたらお前、いつまでもやってただろうが」
「当然だ。決着が付いていなかったからな」
 まだ真剣勝負の真っ最中だったのだ。それを無理矢理に卓球台から引きはがされたときの気持ちと言ったら……ショックという以外に形容のしようがないその感情は、どうやら勝負の相手も同じように感じていたらしく、今朝、偶然に出会った少年も卓球台を片付けている間は憮然とした表情だった。
 にしても、あの少年は結構な強敵だった。途中たまに疲れのためかスローペースになってしまうことがあっても球を落とすことはなかった。付け加えるとナタクも時々、撃ち返す球がゆっくりになってしまうことがあった。それも当然ながら疲れによる物で、まだまだ修行が足りないと嘆息する気持ちである。
 もう少し、ジョギングの距離を伸ばしてみようか。
 そんな事を考えていると察知したのか、デスサイズがじとっとした目をこちらに向けた。
「ナタクー、もう少しお前は修行の量を減らそうぜー…」
「何故だ?修行無くして強くはなれんぞ?」
「だからなぁ…これ以上強くならなくて良いと思うんだけどな……十分今でも強いじゃんか、ナタクってば」
「何を言う」
 腕を組んで、ナタクはデスサイズを見やる。
「昨日の組み手で互角に渡り合っていたヤツが」
 それは昨日の夜の話だ。ジョギングを終えて旅館前に辿り着いた自分へと、何となく機嫌が悪そうなデスサイズが組み手を申し込んできたのである。事情はそれが終わった後に本人から聞いたが。
 ともかく、だ。その組み手は組み手というよりは本格的な戦闘に近い物があり、旅館の壁を少しばかり破壊してしまったりしたのだが……それは置いておいて……ナタクは、改めて仲間の強さという物を実感した。
 普段はこういうことをしないから、たまに実感が無くなるのだが。
 ともかく、そんな相手に十分強いと言われても困る。自分はさらに強くなるのが目標なのである。
 そんな自分の気持ちを知ってか知らずか、デスサイズはそう言われても、と続けた。
「あれはお前もジョギングの後で疲れてたろ?」
「そんな物、何の妨げにもならん」
「あぁそうですか……」
「それよりもヘビーアームズとサンドロックはどうした?」
 先ほどから姿が見えないのだが。
 首を傾げていると、それに答えたのは当然というか、デスサイズだった。ウイングは自分を引きずってこちらに来ていて、つまり自分がこちらに来る前の情報を知っているのは彼くらいのもなのだ、この三人の中だと。
 手元にあったアイスの袋を開けながら、彼は口を開いた。
「あの二人はただ今買い物中」
「…そういえば旅館の中に売店もあったな」
「そうそ。明日帰るからねー、お土産何か買ってかないとって話になってさ。オレは留守番組なワケ。ウイングも後で行く?ナタクはオレが見てるから」
「いや、構わない。あの二人に任せれば問題はないだろうしな。ナタクに関してはお前にだけ任せるのも悪い」
 ……何だか二人の会話の中の自分の立ち位置に色々ともの申したい気がするのだが。
 だが、ナタクが言葉を探し出して口に出す前に、それらは放られた袋へ注意を向けたことで見事に霧散してしまった。何を言おうとしたかも思い出せない。
 難なく袋をキャッチして放った本人に物問う視線を送れば、やるよ、と笑みが向けられた。それは、その後直ぐにウイングの方にも向けられる。
「アイス。溶けたら勿体ないし、オレだけじゃ三つも食べられないしなー」
「売店に行った二人のは?」
「アイツらは食べてから行ったから問題ナシ」
「というか……何でアイスなんだ?」
 もっと別の、保存が利く物も選ぼうと思えば選べるのではないだろうか。恐らく自分たちがいない間に買ってきていたのだろうそれを眺めて首を捻ると、そんなの、とこれらを買ってきた当人である可能性が高いデスサイズが呟くように言った。
「安かったからに決まってるだろ。丁度五つで割引だったし……あと、ヘビーアームズが食べたがってた」
「そうか…」
 どちらも実に納得できる理由だった。







五つで何円、とかありますよね。
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