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番外編・5
素直に話される保証はもらえなかったが、私はとりあえず『世界』の方にも同じ問いかけをしてみることにした。何も言わずにいても答えはないのだから、訊いてみるだけ訊いてみた方がいいかと思ったのだ。
「『世界』、少し良いでしょうか」
「ん?何だ?」
「貴方たちはどのような種族なのですか?」
椅子に座る『世界』に単刀直入に尋ねると、彼は不思議そうな顔をして、それから『王』の方を見てあぁ、と納得したようだった。私からも『王』の表情は見えて、つまり彼は『お願いだから話してあげて』というような表情をしていた。やはり彼はとても優しい。お父様と同じくらい好きに慣れそうな予感がする。
では『世界』はどうかというと、それはまだ保留だ。未だにチンピラのような印象は拭えないし、お父様の知人としても相応しくないように思える。けれども、決して悪い相手ではないのだということも、分かっている。判断が難しいのだ。
「話は少し長くなるけど良いのか?」
「構いません」
「……昔、地上に住む人型どもは、一種類しか種族を持ってなかった」
言いながら『世界』は瞳を閉じた。何かを思い出しているような表情だ。
私は黙って彼の話を聞くことにした。折角話してくれるのだし、邪魔をしては悪い。
「そいつらはまぁ、そこそこ纏まった生活をしていた…んじゃねぇかと思う。今の人間と異端のグダグダした様子を見てりゃあな、あいつらの争いはまだ良い方だろ。んで、そいつらの血の四つの性質をを二つ分けて、それぞれで作り出した人型が人間と異端」
四つの性質を二つに。
分かりにくいが、それは例えば四角い領地があったとして……それは初めから四つに分かれていて、それらを二個二個の二組に分けてしまったということで…何となくは理解した。完全にかと言えば、ちょっと怪しいが。
「けどな、人間も異端もそれぞれ二つの別の要素が混じって出来てる。時代が流れりゃ、直にそれも一つ一つ分かれてくかもしれねぇ」
「それが第三の種族と第四の種族、ですか」
いずれ、私が見るかもしれないという残り二つの種族。
成る程と頷きながら、じゃあと私は『世界』を見た。
「貴方たちはどこに属するのですか?」
「最も近いのは一番最初の種族だな」
「……零番目」
この世に最も一番最初に存在していたという種族。
零番目の種族。
彼らを何と呼ぶのか、私は知らない。あるいは、呼ぶような名前は付いていないのかもしれなかった。最初の種族は初めから一つしか無く、他と区別をする必要が無いのならば名前を付ける必要など無かっただろう。
そうしてふと、私は疑問を覚えた。
零番目の種族は、もういないのだろうか。
滅びた……のだろうか。
「あ、そういえば僕、これから料理作ってこないといけないんだった」
「は?お前客だろ。何でんな話……」
「久しいからってイオリアと約束してたの。じゃあ、そういうことだから行くね」
首をかしげている内に『王』は席を立ち、残った『世界』はつまらなさそうに『王』の背中を見送っていた。
そんな彼らのことを見ながら思う。
彼らは一体、何の種族なのだろう。
『世界』は最も近いのは零番目だと言ったが、自分たちがそれそのものだとは言わなかったから。