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たまにはこちらも更新しないとね。
というか…最近これ、ウイングとヘビーアームズしか出てな…。
この人は、こんな体で自分を操縦して大丈夫なのだろうかと、ヘビーアームズは思いながらも黙って操縦に従っていた。
彼が並のパイロットでないことは分かる。それはウイングの操縦を見ていても分かることだし、自爆を行ってもまだ生きているその生命力を取ると……別の意味でもそうだということが理解できる。
だが、それも持てる力全てを使えるとき、だ。
傷ついた体で、一体どれ程の力が出せるというのだろう。
「それでもヒイロはやるだろうな」
ヒイロの練習が終わったからと、とん、と精神体で輸送機の床に降り立つやいなや、腕を組んだウイングは呟くように、自分に向かって言った。
「一度やると決めたら、恐らくそれを曲げることはないだろう。これはどうやら……全てのガンダムパイロットに共通する点であるようだが」
「……」
それはそうかもしれない。トロワだって似たような物。その決定を覆せるような何かがなければ、自分が死ぬような行動も一度決めれば辞さないだろう。自爆の時は、その決定事項を覆させる何かがあっただけだ。
そして、決定事項を覆させるのは、難しい。
トロワが生きているのはとても大きな偶然なのだと、ヘビーアームズは理解していた。
ヒイロが生きていることは……いっそ奇蹟と呼ぶべきだろう。これは偶然と呼ぶには大きすぎる。彼は今、動かない物体になっていてもおかしくはなかったのだ。
そんな奇蹟のためにパイロットを失わなかった自分の仲間は、続けて言う。
「だから…悪いが付き合ってやってくれ」
「……」
言われるまでもなく、そんなの答えは決まっていた。
こくりと頷いて、けれど、とヘビーアームズは向かっている先へと視線を向ける。
ウイングから話は聞いている。彼のバラバラになった体を修理している者がいると。聞いて以来、それが恐らくトールギスのパイロットたるゼクスであるのだ、ということも薄々分かっていた。
彼は、パイロットとしてヒイロと戦いたいらしい。トールギスにわざわざ聞かなくても、そのくらいは推測できる。
しかしそうなると……この練習に意味はあるのだろうかと、首を傾げなければならないだろう。何せ、ウイングは修理されているのである。ヒイロだって使い慣れていない、トロワの機体である自分よりはウイングの方が良いに違いない。
これも、その時にならなければ分からないことか。
小さく息を吐いて、ヘビーアームズは、調子は?と問いかけるようにウイングを見た。
その意図を正確に察知したのか、ウイングはまずまずだ、と答える。
「修理と言っても限界はあるだろうがな…あちらは別に俺たちの専門家でもない。完全な修理を求めることは出来ないだろう」
「……そう」
「あぁ。だからやはり、お前の方が適任かもしれない」
最も、最後にどちらを使うかはヒイロ次第だが。
最後にそう締めて、ウイングは腕組みを解いて格納庫の出入り口へ向かった。
「……?」
「何かが来る。お前も感じていないか?」
「……」
確かに。何となく、嫌な物が近づいているような気はしている。
それは明確な悪意、敵意を持ってこちらに向かっているような気がするのだ。
何てことだろうと、ヘビーアームズは自分の本体を見上げた。こちらの輸送機には自分が乗っている。もしもこれが見つかったらコロニーが、沈む。
阻止しなければならない。それを引き起こさせることはは、間違いなく自分たちの存在理由から外れるから。道具にとっての存在理由とは、中々に大きく大切な物だ。だからといってそれに完全に縛られるわけでもないが。簡単に言うとアイデンティティの一種、というところだろう。
「どうにかノインとか言ったか?彼女が凌いでくれれば良いんだが」
「……」
「…その通りだな。最悪は考えておくべきだ。ヘビーアームズ、備えておけ」
「…」
分かったと首を縦に振り、ヘビーアームズは格納庫から完全に出て行こうとしているウイングの背を見る。彼は、酷くもどかしい気持ちであるに違いない。敵が来るのに彼は何も出来ないのだから。
まさか『もしもの時』の自分が、トロワが倒されるなんて、そんな事は考えていないとは思うけれど。
自然にドアが閉まることでウイングの背が見えなくなって、くるりと体を反転させて本体の方を見た。それから直ぐに、戦闘を出来るようにと『中』へと戻る。出番はどうやら、後になりそうだけれど。
それでも出番は来るのだろうと、事態に対してため息を吐いた。
ヒイロは凄いと思うんだ…。