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「……遅い」
「それはどっちの組み合わせに関してだ?」
「ダブルオーと刹那の方、だ」
腕を組んで、ヴァーチェはイライラと床を踏みならした。
直ぐに帰ってくる、とか言っていたはずなのだが。
「あの二人……全く帰ってくる様子がないというのはどういう事だ?腹が空いているのは俺たちも一緒だというのに…」
「だな。アイツらが目的を忘れるとは思えないんだが…」
「それでも、寄り道くらいするんじゃない?」
欠伸をしながらの軽いセラヴィーの言葉に、ぎろと睨み付けると怖い怖いとばかりに身をすくめられてしまった。その態度の嘘くささに、さらに眉間に皺が寄る。だから、何でコイツはこちらの気を苛立たせるような事しか言わないのか。
自分の対応型だとはいえ、いや、だからこそ……何だか余計に腹が立つ。もう少しくらい相手の気持ちを考える術を学べと、一体何度思ったことだろう。もっともヴァーチェ自身もそれほど他人の感情を敏感に察知するタイプではないのだが、少なくともセラヴィーよりはマシだと自負している。
というか、セラヴィーに負けるようになったら負けだ。
もちろん、ありとあらゆる意味で。
そんな評価を下されていると知ってか知らずか、当然知らないだろうが知っていても変化はないだろう彼は、続けて肩をすくめた。
「あの二人だって自由に考える特権は持っているんだから。何も目的だけを果たそうとか考えてるわけでもないんだしさ、刹那に至っては人間だよ?もしかしたら人間の街であるこの都で、誰か知り合いに会っているかもしれないじゃないか。そういう場合だったら、少しくらいの寄り道だってあると思わない?何も、今すぐ食事を運ばないと僕らが死ぬなんてワケでもあるまいし」
「……」
確かに、それはそうなのだが……どうしたらいいのだろう、何だかセラヴィーの言葉に素直に頷くのはプライドが許さない。
黙り込んだヴァーチェに何かを悟ったのか、デュナメスが息を吐いて、とにかく、と手を打った。
「それじゃあ待つ、ってことで良いな?」
「えぇ?探しに行かないの?僕とっても外に出たい気分…」
「却下だ」
「えぇぇぇぇ?何でどうして僕理由が全然分からないー」
「自分の胸に手を当てて考えてみろ!」
ヴァーチェの叫びにセラヴィーは耳を塞いで、その後直ぐに耳を塞いでいた手を胸に当て……首を傾げた。
それからこちらを向く。
「全然分からないよ?」
「……あぁ、そうだったな。お前はそう言うヤツだったんだ…」
「ヴァーチェ、お前、そんなあきらめ顔とか似合わないぜ…?」
「そうだよヴァーチェ。君はいつも無駄にでも自信満々であるべきなんだよ?」
「セラヴィー、お前は少し黙れ」
その声を聞くことさえ煩わしくなってきた。
額を抑え、ふらりと歩を進めるヴァーチェに、デュナメスが訝しげに声を上げる。
「どうしたんだ?」
「…少し、外の空気を吸ってくる…」
「……おー、行ってこい」
「え、じゃあ僕も一緒に外に出…」
「セラヴィー、今のヴァーチェには一人の時間が必要なんだぜ?」
「でも……」
「良いからお前は付いてくるな…」