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拍手再録です。



~保護者親和会~

「……刹那がまたやらかしたって本当か」
「いやぁ、やらかしたっていうか……動かないって言うか、ね」
 今、ロックオンは刹那の通う学校まで着ていた。どうしてそんな場所にいるかと言えば、当然ながら呼び出されたから、である。しかもその電話を受け取ったときに家にいたのが自分とライルだけでは、自分が来るしかないではないか。
 しかも、それが今回初めての話ではないところが何とも言えない。
 そのたびに何度か会っているビリー・カタギリという理科の先生は、苦笑を浮かべながら肩をすくめた。
「僕だけでは色々と無理な気がしたから来てもらったんだけど…悪いね、本当」
「いや、それは俺の方が言いたいぜ。毎回毎回…世話になって」
「お互い苦労するね」
「ま、慣れっこだ」
 軽く息を吐いて、それで?と話を元に戻す。
「刹那のヤツはどこに?」
「彼のホームルームだよ。本日も担任と口論をしてる」
「口論……ねぇ」
 口論というか、むしろあれは……もっと別の。
 そう思いはしたが、だからといって形容の仕方が全く思いつかなかったので、ロックオンは何も言わないことにした。その辺りはどうやら、相手の方も分かっているらしいからだ。様子を見ればそのくらいは分かる。
「今回はどんな議題なんだ?」
「確かねぇ…僕が部屋を出たときには、エクシアとフラッグのどっちが強いか、だったと思うけれど」
「…いや、そこは普通にエクシアじゃね?」
「いやいや、フラッグも中々に捨てがたいよ」
 言われてそういえば、と思い出す。この理科教師はフラッグのことを酷く気に入っているのだ。刹那や、刹那の担任のようにガンプラを集めたりする人間ではないものの、それについてはいくらか詳しい知識を持っているらしい。
 それもこれも、彼の場合は全て刹那の担任による影響が大きいのだろうと、思ってロックオンは息を吐いた。何だか自分も刹那に結構毒されているような気がしたのだ。
 そして、それはあながち間違いではないのだろう。

(2009/07/10)


 ~頑駄無愛好会~

「少年!君はフラッグの性能を甘く見ているのではないか!?」
「ガンダムの方がフラッグよりもハイスペックであることは公式で認められている」
「ふっふっふ…甘い!甘いぞ少年!」
 いつものようなオーバーリアクションで、刹那の担任……グラハム・エーカーはバッと手を広げた。その行動に意味を求める必要はない。ただ単にそうしようと思ったから、彼はそれを行うのである。
「そのような性能の差を埋めてこそのパイロットだ!」
「…つまり、埋めるほどの性能性があると認めるのか?」
「それとこれとは話が別だ、少年」
「別なら言うな」
「言いたかったのだから仕方あるまい」
「……」
 そんな『仕方ない』があってたまるか。
 本気でそう思ったのだが、それでもそれを口にするような愚は犯さない。そうすると、そこに突っ込まれて再び別の方向へ話が行くことは間違いないのだ。
 生憎、どうでもいい話に時間を取られるつもりはない。
 今の議題はあくまで『エクシアとフラッグのどちらが強いか』なのである。
「とにかく、絶対にエクシアだ」
「フラッグ以外に有り得まい」
「エクシアにはセブンソードがある。太陽炉を持っているから半永久的に活動可能だ」
「フラッグは存在そのものが素晴らしい…そう、あれこそがまさに我々が求めるべき姿!少年も早くそれを認めたまえ!」
「断る!」
 感情論過ぎる言葉たちに、ガンダムへの想いを揺らされてたまるものか。
 徹底抗戦だ、とグラハムを見据えた刹那は、一つ言っておくことがある、と言った。
「…言っておくこと?」
「あぁ。俺は……」
 首を傾げているグラハムに、一言。
「少年ではなく刹那・F・セイエイという名前がある!」
「少年は少年で良いではないか」
「良くないから言っている!」

(2009/07/10)


~原点回帰者達~

「ティエリア、久しぶりだね。帰ってくる気になったのかい?」
「誰が。少なくともお前がいる間は帰る気はないな」
「そうかい、残念だね」
 あまり残念そうな様子でなく呟いて、まぁ座りなよ、とソファーを示して微笑んでくる相手……リボンズ。リボンズ・アルマーク。
 かつて、ティエリア自身と大喧嘩をして、それを理由に自分がこの家を出て行くという、ある意味できっかけを作った相手だ。
 部屋の入り口辺りからアニューが心配そうな顔をして覗いてくるのには気付いているのだが、そんな相手を前にして苛立ちを押さえることなど出来るわけもない。彼女には申し訳ないのだが、もう少しこの苛立ちについては我慢して欲しい。
 大人しくソファーに座り、腕と足を組んでティエリアはリボンズを見やった。
「少しは自分の非を認めるようになったか?」
「それはこちらのセリフだよ、ティエリア」
 ふっと笑ってリボンズは言って返す。
「君こそ、悔い改める気には?」
「なるわけがないだろう。悪いのはこちらではない」
「そうかい……残念だね」
 ふぅ、と息を吐いてリボンズが言う。
 本日二度目の『残念』だが、やはりこちらにも感情はこもっていない。それは彼が残念だと心の底から思っているわけではない、からである。分かっているのだ、ティエリアが折れることなどあるはずがないのだと。
 同様に、こちらも分かっている。リボンズがティエリアに負けを認めるような事態は到底、起こり得ないのだと言うことを。
 それでも来たのは、アニューに会いに来たから、それだけだ。
「……ともかく、俺はあの時の意見を変える気はない」
「奇遇だね、僕もさ」
 ばちばちと視線で火花を散らして、どちらからともなく、言う。
「あの日の夕飯はカレーが良かったんだよ」
「あの日の夕食はシチューにするべきだったんだ」

「……どっちでも、いっしょ…だと思うんだけど」
 ポツリとアニューは呟いたが、それが二人の耳にはいることはなかった。

(2009/07/10) 

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