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 目が覚めた時に感じたのは、柔らかな感触だった。
 一瞬、何がどうなっているのかと刹那は状況の把握が遅れた。何せ、自分は確か……そう、地べたに倒れていたはずなのである。正確には、壁にもたれかかっていたはず、なのだが。

 それが、一体どうして。
 ゆっくりと起き上がりながら周りを見てみれば、そこは石造りの壁でも道でもなく、どうやら家の中らしいということが分かった。
 尚更、困惑する。

 誰か、この状況に至るまでの事情を説明してくれない物だろうかと、一人、頭を抱えた。ふと視線を下に向けたら、同じベッドにダブルオーもいたから彼女の所在の心配をしなくて済む、というのは素晴らしいこととは思うが。

 それでも、現状は少し有り得ないというか。
 額に手を当て息を吐いていると、がちゃり、と部屋の扉が開いた。

「起きましたか?」
「……お前は」
「偶然、貴方がたを見つけた者です」

 初対面の女性は緑ではあるが通常よりも明るいソレを湛えた瞳を、ほんの僅かに細めた。微笑んでいるのだと、直ぐに分かった。それ以上に、彼女のその目をどこかで見たことがあるような気も、した。

「どうやら、体調は優れているようですね」
「あぁ……礼を言う」
「いえ、気にしないでください。私の勝手ですから」
「そうか」
「えぇ。…ところで」

 彼女は、どこか不思議そうにダブルオーを見やった。
 何かが思い出されそうだが、すんでの所で思い出せない、そんな感じの表情だと思った。

「彼女と私は接点があるんではないでしょうか」
「…いや、何を突然」
「分からないんですが、どうしてもそう思えます」
「俺に言われても困るぞ。俺も彼女とは最近会ったんだ」
「そうでしたか…」

 すみません、と彼女は頭を下げた。先ほどからの口調や態度を見てみると、総合的に判断して……褒める意味での、良い性格の相手らしい。
 その事に安堵しながら、刹那はダブルオーの邪魔をしないようにベッドから降りた。

「改めて…すまないな」
「いいえ。ですから、これは私の勝手なので」
「…その言い方は、何かが違うと思うんだが」
「そうでしょうか?」
「多分、俺も人のことは言えないが…そうだと思うぞ」

 いやまぁ、正しくないかと言えばそうでもないので何とも言えないが。
 どんな表現が他にあるだろうかと悩んでいると、ふと、ベッドにまだ寝ていたダブルオーがぴくりと動いた。起きるらしい。
 そして案の定、彼女は目を開いた。

「ここは…」
「起きたか」
「……………………!?」

 こくり、と頷こうとした彼女の動きが、助けてくれた女性の顔を見てピシリと固まった。
 予想外の反応に困惑している間に、刹那は、一つ気がつくことがあった。

「オーガンダム……どうしてここに!?」

 彼女の明るい緑の瞳が、どこかで見たことがあるような気がしていた。
 それは、ダブルオーたち人形の物と一緒だったのだ。
 

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