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「…状況を理解しましょう」
オーガンダムの、静かな声を聞いてダブルオーはこっそりと笑みを浮かべた。
姉が、帰ってきた。アリオスはイカレ女と称し、他の面々も少しずつ諦めていった、けれど自分だけは諦めきれなかった姉の存在が、こうして直ぐ側にある。
何と嬉しいことだろうか。
ただ、刹那を状況に取り残してしまったのは申し訳ないと思った。けれど、これは自分たち人形の問題だったから仕方が無いとも思った。
その刹那は、不思議そうな顔をして自分と姉を見比べていた。
「姉妹か?」
「はい。元は私だけだったのですが、お父様が私の弟妹を作るとしたときに私が頼んだんです。妹も欲しい、と」
そうしてダブルオーは生まれた。
そう認知しているし、間違いではないだろう。オーガンダムの言葉の有無によっては、自分という存在は別の物になっていた可能性もあるのだから。
そう言う意味で、ダブルオーとオーガンダムには他のメンバーとは違う繋がりがあるとも言える。だからこそ、諦められなかったのだろうけど。
「自己紹介を改めて。私はダブルオーたちの姉の、オーガンダムと言います」
「俺は刹那という」
「では刹那、私の事情を説明します…と言っても」
くすりと、姉は笑った。
ほんの少し含みのある笑いだと思った。
「私の事情の少しの部分はそうですね、貴方とも関係があるんですよ」
「俺と?」
「正確には貴方の故郷と、ですけれど」
穏やかな笑みを浮かべ続けるオーガンダムに、ダブルオーは答えを求める視線を送った。刹那も動揺にしているのが分かり、姉が二人分の視線を受けて笑みを苦笑に変えたのにも気付いた。
「私、貴方の国の国宝だったんです」
「…あれがお前!?」
「えぇ。貴方の国の国宝の、あの首飾りです。マリナ姫の首に掛かって、この都には来たんですけれどね……」
そこで少し顔を曇らせて、姉は息を吐いた。
「…残念ながら、ちょっとした隙がありまして、その時に私はリジェネ・レジェッタに連れ去られてしまったんです。後は私の弱みにつけ込んだ洗脳ですね」
「…そうハッキリとさばさばと言うことか?」
「事実なのだから仕方有りません」
きっぱりと言い切って、姉は申し訳なさそうな表情を浮かべてダブルオーを見た。何か、言うことがあるらしいと分かって、ほんの少しだけ背筋を伸ばす。
「…お姉様」
「貴方たちに迷惑をかけたことを謝りたいと思います。他の皆にも、後で謝ろうとは思いますが、まずは貴方に。…ダブルオー、今までありがとう」
「…待て」
と、刹那が制止の声を上げた。
何?と視線を向けると、彼は酷く訝しげな表情をしていた。
「謝るのに、礼を言うのか?」
「私も以前は『すみません』と言っていましたが、『王』にそれよりは礼の方が良いと言われたので直してみました。『王』自身は普通に謝っているのですけど」
「…『王』?」
「えぇ、『王』です。本名は知りません。あるかどうかも分からない人ですから」