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話の性質上、名も知らぬクラスメイトの一人が出てきますがあしからず。



 放課後、誰もいないはずの教室。
 けれどそこには自分と、クラスメイトの女子が、いた。
 どうしてこんなことになっているんだろうと、アリオスは内心酷くオロオロとしっぱなしだった。話があるからと引き留められて、誰もいない教室になって。こうなってしまえば続きがどんな話になるかくらいは自分にだって予測は出来る。
 ただ、自信満々な彼女には悪いのだけれど。
 あまり、そういうのに今のところは興味が無い。
 けれどもそれを言って、信じてくれるかなとそれだけが本当に気がかりだった。見るからに自信たっぷりの彼女は、きっと断られる事なんて考えてもいないだろう。そんな相手に遠慮しますなんて言ってしまったら、続きは想像に難くない。
 つまるところ。
 自信満々な女子の自信を少しでも砕いてしまうと、後という物が怖いのであって。
 それ関連で失敗したセラヴィーを見たことがあったから、アリオスはその恐ろしさが何となくだが分かっている。女子が全員で団結して色々としてくれるのだ、口で言うのもちょっとばかし勇気が要るようなことを。あれは、そのふられてしまった女子生徒がアルコと無いことを吹き込んだからだと思う。
 多分、そういうのに自分には耐えられない。
 もっと普通の人だったら普通に断ったって、何の問題もないはずなのに。そんなことを思ってみても現状が変わるわけでもない。目の前にいるのは自信たっぷりの、断るに断ることが出来なさそうな女子、ただそれだけ。
「ねぇ、付き合ってる人いるの?」
 そして案の定。
 やっぱり想像通り、予測通り、お約束のまま、彼女の口から出たのはこんな言葉であって。頭を抱えたいと思ったけれど、そんなことをして気分を害されても困ると、寸前の所で堪えた。
 まぁ、耐えたところで何が変わるわけでもないのだけれど。
 何と答えるべきだろうと考え込んでいると、相手の眉が不機嫌に上がった。
「ちょっと、話聞いてる?」
「あ、いっ…いない…よ」
 …言ってしまった。
 コレを言うと、後には戻れないらしいとデュナメスから聞いて知っていたのに。
 お友達から始めましょうなんて、こういう相手には通じないのに。
「そう。じゃあ私と付き合って。……嫌とか言わないわよね?」
「あぅ…その、えっと……」
「何?私じゃ不服だとでも言うの?」
「そ……そうじゃなくって…」
 あぁどうしようこの状況。
 正直、相対する相手が知らないこういう人というのは、自分にとっては酷く致命傷だ。致死傷と言い換えるべきだろうか。とにかく、押されると断れないのは自分の悪い部分なのかも知れない。治せる物では無いだろうけれど。
 どうやったらちゃんと断れるだろうか。
 思い悩み、いい加減頭がパンクしそうになった時。
「アリオスー、お前いつまで残って…って何だこの女」
 救世主か、はたまた魔王か。
 現れたのは、最近分裂したばっかりの半身…キュリオスだった。
 彼はどこか呆れたように教室の中に入ってきて、アリオスの手首をグッと握った。
「いつまでも降りてこねぇと思ったら…こんなトコで油売ってやがったのかよ」
「え…待っててくれたの?」
「俺とお前の小遣い入った財布持ってんのお前だろ。俺が財布持ってねぇから。んで、俺は帰り際にスーパーに寄って菓子とか買いてぇの」
「…あはは」
 らしいセリフだった、本当に。思わず笑っていると、ぎんっ、と鋭い視線が向けられたのを感じて身を竦める。笑みは、当然ながら引っ込んだ。
 恐る恐る見ると、無視してしまった形になる女子生徒が、とても不快そうな顔をして立っていた。やっぱり自信が有りすぎる人だった、この人は。だからこんな少しの間の無視でも許せないし、我慢できない。
 …何だか、似てる、かも。
 半身を見ながら思ったのだけれど、半身もそれを思っているわけではなく。彼は彼女以上に不機嫌そうな顔で、その上目つきが鋭いのに容赦なく、圧倒するような迫力を込めて彼女を睨み付けていた。不機嫌なんて物ではなく、不快でもなく、これは完全なる敵意。
「何か文句でもあんのか?」
 その言葉に、女子生徒はとても泣きそうな顔をして、そのまま走って教室を出て行ってしまった。悔しいとか、きっと彼女の中ではそういう感情が渦巻いているのだろう。
 申し訳なく思う。半身は、本当に『敵』と見なした人にはキツイから。
 あと一つ。彼女がいなくなって、話がうやむやになってホッとしている事実も申し訳ないのだけれど。
「…待っててくれてありがと。そういえば、いつも待ってくれるよね。…どうして?」
「財布持ってるのがお前だからって言ってんだろ」
「でも毎日の理由…」
「あーもうコイツは!オレがそう言ってんだからそうなんだよ!分かったか!」
「…うん」
 そんな感情は、嬉しさで全て消えてしまいそうだった。








仲良しキュリとアリを書きたかった。そして書けたかは謎。
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