[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
そういえば、みんなは何利きなのだろう…?
06.左利き
「ごめん、今何て言ったんで?」
「だから、今日は全員左利きでお願いって言ったの」
にこりと笑みを浮かべる戦術予報士に、ティエリアが隣で呆れを込めた息を吐いたのが分かった。刹那の方は相変わらずの表情だが、ティエリアと似たような感情を抱いてはいるようだ。そのくらいは付き合いが短くても分かる。それと、アレルヤは、やっぱり困ったように笑っていた。
この反応は絶対に当たり前だ。断言したい。
けれどスメラギはそうは思わなかったらしい。程度の差こそあれ全員が乗り気でないことに気付いた彼女は、不満そうに頬を膨らませた。
「良いじゃないたまにはこういうのも」
「良くないです。どうして貴方は四年前からこんなよく分かりもしない事を考えつくんですか?」
「あら、たまには娯楽も必要でしょう?」
「娯楽…?それは誰に対しての娯楽だ…?」
「貴方たちと私」
「…」
口をつぐんだ刹那から漂う感情が、呆れから諦めにシフトしたのが感じられる。
「…絶対に貴方だけだろう、楽しいのは」
「ティエリア?何か言った?」
「いや…」
「言ったんならあの女装をもう一回位しててくれても良いのよ、お詫びの証に」
「言ってません」
「そーう?」
クスクスと笑うスメラギに、ライルはいっそ拍手を送りたいと思った。あのティエリアへでも簡単に反撃を加えられるなんて……それが出来るだけで自分にとっては尊敬出来る。今でもたまに銃を片手に追い回されているから。
いつか自分にもあぁいう事が出来るだろうかと、考えてみて首を振った。結論は簡単に出たが、全くありがたくない結論だったから忘れることにしよう。
そんな事を考えていると気付いたわけでもないだろうが、ティエリアがギギギ、と音が鳴らんばかりに首を回して顔をこちらに向けた。
「ライル・ディランディ、君は何か言うことはないのか」
「というと?」
「お前は反論しないのかと訊いているんだ」
「俺はなー」
何となく面白そうだから、別に良いんじゃないかと思っているのだが。
ただし、それを言うとティエリアから考え直すことを求められるだろうから、そのまま言うことは出来ない。こんな話だし少々意見が変わろうと大して問題は起きないだろうとは思うが、こんな時だからこそ自分の意見を曲げたくはないというのもある。変えなくても良いのに圧力で変えるなんて面倒は嫌だ。
どうやって逃げようかと逃げるためのネタを探して視線を巡らし、その『ネタ』を見つけてにやりと笑う。
「アレルヤ、お前は?」
「へ?僕?」
「そうそう。さっきから一度も喋ってないだろ」
「僕は…えっと…」
どうやら賛成も反対も考えていなかったらしい。
うぅんと考え込み始めたアレルヤにライルは重ねて言った。
「面倒だとか思ってないのか?」
「それはあまり。いつもの事だからね」
「じゃあ乗り気?」
「そういう事ではないと…」
「ライル」
と、刹那がそこで言葉を割り込ませてきた。
どうしたんだ?と視線を向けると、彼はほんの僅かに表情を動かす。その表情が何なのかはまだ読み取れないのだが。
「話の矛先から逃げるためにアレルヤを使うのはいただけないと思う」
「その通りだな、刹那。そういう相手には制裁が必要だとは思わないか?」
「そこまでは思わないが」
「…ティエリアも分かってたんだな、俺の目論見」
ていうか制裁ですか。
一体何をされるのかという恐怖に一歩思わず後ずさると、ティエリアがにまりと笑った。
「さあ、何をして欲しい?」
「何にもして欲しくないッ!」
叫んで、とりあえず訊きから逃げるべくライルはくるりと身を半回転させた。
「頑張って逃げなさいねー」
ダッシュで逃げる自分の背にかかるのんびりとした声に、一体誰のせいでと思いながら、ライルは走るスピードを上げた。
本気で逃げても捕まる確率が五分五分であるのは知っているのだから。
もう、桜のお題はみんな仲良しで良くね?
そして思うのですが、逃げ切れる確率は明らかに低いと思います。半分より。