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生徒集会なのでしょうが、生徒会の集会になってます。
「では」
しん、と静まりかえる体育館の中。
現生徒会長・毛利元就は壇上に上がりマイクを取った。
「これより、我が駒となる者の選定を開始する!」
「…あれで問題が起きないってーから凄いよな、元就」
「全くだね。その点は悔しいが、評価するほか無いな」
「……で、副会長は」
「いないよ。というか生徒会長の所にいった」
「いっつも通りってことか」
「だね。では僕らは僕らで庶務とか何とか片付けておこうか」
政宗と半兵衛がそうやってステージ脇で生徒会の仕事を始める、丁度その頃。
ステージのスポットライトで照らされている場所の中心辺りに、生徒会の会長と副会長の二つの影が揃った。
その中、元就がちらと視線を副会長に向ける。
「何か用事でもあるのか、浅井」
「用事も何もない!」
生徒会副会長である長政は叫ぶように…というか実際に叫んで…言った。
「我々生徒会は全生徒の代表にして、生徒のために働く者だ!それがどうして他の生徒を『駒』などと表現する!」
「駒なのだから仕方あるまい」
「だから駒ではないのだ!」
断言するような長政の言葉だが、こればかりは間違いなく副会長の方が正解だろうと政宗は思った。思いながらも当然のように手は動いている。こんな結構わりとある光景のために仕事の効率を落とす気はない。
しかし、正論に対しても元就はびくともしなかった。
何を世迷い言を、と言わんばかりの表情で言ったのだ。
「駒であろうが。所詮、何もしておらぬ生徒など使い捨ての駒ぞ」
「…貴様!その考えが悪だと何故分からん!」
「考え方の相違であろう」
それは相違以前の問題だろうに。
新しい仕事の紙に手を伸ばしながら、政宗はポツリと呟いた。
「何で元就が生徒会長になれたのかが俺には分からねぇ」
「同感だ。まとめ上げる力があるのは事実だけど、それだけじゃ生徒は付いていかない」
「じゃあ何でだ?」
「毛利君は知将だよ、政宗君」
知将。何か使い所が違う気がするのだが、それほど元就にピッタリな言葉もないだろう。
そして、その表現の理由に関しては政宗は大して思考を必要とはしなかった。それに類する話はこの学院ではかなりの有名なエピソードである。どこまでが正しいのかは分からないが。
「ま、元就なら敵を陥れるくらいはしそうだよな、場合によったら」
「それに、彼が出るって聞いて直ぐに棄権した人もいるらしい。流石は毛利君、と言っておくべきかな」
「てか半兵衛、前々から思ってたんだが先輩を『君』付けってどうだ?」
「そういう君こそ呼び捨てじゃないか、しかも名前の方」
などと平和的に会話をしている間も、元就と長政の言い合いは続いていた。
「毛利元就!私はその考え方の改善を要求する!」
「断る。我が貴様などの意見を聞くと思うか」
「おのれ悪の権化め…っ」
「悪の権化なら別におろうが。不良の頭など、まさにその極みであろう」
ちなみに不良の頭とは元親のことである。不良は不良でも、地域に優しい不良なのだが。
もちろんそれは長政も知っていた。話を逸らそうとする元就の思惑に乗ることなく、話を続ける。
「そちらも悪だが、まずは貴様が先だ!」
「…ち」
「ち!?今、舌打ちをしなかったか?」
「気のせいであろう。何故我がそのようなことを」
何でもないようにそう言ってのける元就にいっそ賞賛を覚えるのだが。感覚はまだまともなはずだと思うけれど、たまにこう言うとき不安になる。
はぁ、と息を吐くと、隣からクスリと笑い声。
「絶対に毛利君、浅井君と長曾我部君の共倒れを狙ってたね」
「だろーな。今頃、元親のヤツくしゃみでもしてんじゃねーか?」
「有り得そうだね、それ」
「てかこれ、どうやって終わらすんだ今回は」
「そうだねぇ…こっちで勝手に強制終了させる?」
「良いのか?後でアイツらに睨まれるぜ?」
「そのくらいは仕方ないさ。そのくらいの覚悟は必要だよ」
「…しゃーねーか」
頭を掻きながら、政宗は直ぐ側にあったマイクを手に取った。
生徒会は、今日も大変だ。
何か…政宗と半兵衛が仲良いな、これ。まぁそれもありということで行きましょうか。