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別名を付けるなら「アレルヤの災難」
08.4コマ漫画
「みんな……心して聞いて頂戴」
ブリーフィングルームにて。
全クルーから向けられる視線の中、スメラギはそう言った。
「私たちは今……かつて無いほどの危機にさらされているわ」
「…危機、ですか」
「えぇ、危機よ、フェルト。とんでもない危機だわ……だから私たちは、その危機に対して立ち向かうべきなの。そうしないとCBは、終わり」
「そんな重大な問題ならば、どうして今ごろになって口にするんだ」
「だって、ついさっき気付いたんだもの」
「え…重大な問題って言ってたのに?」
「気付かなかった物は気付かなかったんだから仕方ないじゃない」
ティエリアとアレルヤを軽くあしらうようにして、彼女は「とにかく」と言葉を続けた。
「今、私たちは『金欠』という大変な状況に直面しているのよ」
「………………金欠?」
「そんな疑わしそうな目で私を見ないでくれるかしら、刹那。本当にお金がないの。王留美との連絡も途絶えてるし、お金も入ってこないし…そんな状況なのよ、今って」
そんな危機、今まであっただろうか。
あくまで深刻そうな表情のスメラギを見ながら、刹那は思った。まぁ、今までにない危機だと彼女自身言っていたし、多分、目に見えるところで見えないところでも、そんな問題は発生していなかったのだろうが。
それにしても、金欠。
その問題は、致命的だ。ガンダムの修理のために必要な器具というのは土からひょこひょこと生えてくるわけではない。木になるわけでもない。ちゃんと金を出し、機材を受け取る。そういう流れは当然の元、入手する物品なのである。
留美との連絡が途絶えた事以上に、それは重大な問題だろう。あるいは留美がその件に関わっている可能性もあるのだが、連絡が付かないのならば仕方がない。
こちらで出来ることをするしかないのである。
「しかし……だとしても、一体我々は何をすれば?」
「本を出しましょう」
「…本?」
「本、よ。適当に色々書き殴って出版しましょう。出版社の方にはもう話を付けてあるわ」
「早っ!?」
「ていうかスメラギさん、みんなの了承取る前に何やってるんですか!?」
「これしかないんだもの。仕方ないわ」
「仕方ないなどと…先ほどから連呼しているが、スメラギ・李・ノリエガ、貴方はその言葉を何だと思っているんだ?」
「魔法の言葉」
「……」
近くは、あるかもしれない。
人知れず刹那がこっそりと納得しているとも知らず、隣にいたライルが腕を組んでスメラギを見た。
「けどな、やっぱお題かなんか無いと、書き様が無いと思うけどねぇ」
「じゃあ四コマでも書けばいいじゃない。はい決定。マイスターは四コマを書いてくること。これが原稿用紙」
「え」
「あ、アレルヤはハレルヤがいるから二人分ね」
「ちょ…ちょっと待ってくださいスメラギさん!ハレルヤがそういうことをやってくれると思いますか!?」
「それもそうねぇ。でも、良いじゃないそのくらい。貴方の労力が二倍になるだけよ」
「二倍になるだけって、『だけ』で済む問題じゃないですって!」
必死に食い下がるアレルヤだが、多分、そのうちいつもの如くスメラギに負けることになるのだろう。彼に限らず、トレミーのクルーは誰もスメラギに口で勝てたことがないのである。可能性があるとしたら…イアンくらいか。
そしてそのイアンが静観を決め込んでいる時点で、アレルヤの敗北は間違いない。
憐れとは思うが、ここで下手に助け船を出すと自分が危ないので、口は出さない。
……後で、ちゃんと手伝ってやるべきか。
「じゃあ、そういうことだからみんな頑張ってね」
などと思っている間に話は済んだらしい。
見るからに落ち込んでいるアレルヤの横でスメラギが朗らかに笑って解散、と言わんばかりに手をパンパンと叩いていた。やはり負けたらしい。しかも負けたせいか、ちょっと灰みたいになっている。
………………後で手伝ってやろう。刹那は、そう決めた。
四年前と違って金欠ありそうだなぁ…なんて思ったのが始まり。
アレルヤごめん。多分、刹那だけでなくてティエとかライルとかも手伝ってくれるよ。