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そしてお母様の降臨です。
ざわ、と、教室の空気が揺れた。
それと同時に、政宗から気力が殆ど抜け落ちた。
二つの変化を感じながら、小太郎はその変化たちの原因であろう新たなる『登場人物』の方へと視線を向けた。つまり、というか。
入ってきたのは政宗の母親だった、ということなのだろう。
だろう、というのも、そもそも小太郎は政宗の母親を見たことが一度もない。幸村も、慶次も、半兵衛も、学年が違う他の皆も、とにかく見たことがある人物はたったの一人もいないだろう。県外に住んでいると言うから、それは当然なのだけれど。
しかし、政宗の反応を見れば一目瞭然。
彼女こそが間違いなく、政宗の母親だ。
彼の様子を踏まえてみてみれば、成る程、似ていると言えるであろう箇所は幾つか見受けられる。似ていない親子が多々といる中では、どうやらこの二人は似たもの親子であるらしかった。
…それにしても心配なのが政宗の様子である。
彼女が現れた途端に一気に萎み込んだ彼の様子であるが、果たして、大丈夫なのだろうか。普段の彼ならばこのような心配は全く不要であるのだが、今の彼を見ていると、どうしたってそうとは思えない。というか、普段の彼と今の彼、正直別人と言っても信じるかも知れない。気配が一緒だからそれは無いと知っているけど。
これは、半兵衛の頼みのままに幸村を押さえていたのは正解だったかも知れない。この状態の彼に、幸村のテンションはキツイだろう。もっとも、半兵衛は別の思惑と不安があったようだけれど、そちらはさほど気にする必要はなかったのでは、と思う。しかし、反論は出来なかったので黙っていたけれど。
まぁ、黙っているのはいつもの事。
黙り続けるのもいつもの事、だ。
そう結論づける頃には教室の中の空気はいくらか落ち着いてきており、教師もどうにか気を取り直して授業を再開した。今の教師が女性の教師で良かったかも知れないと、今の様子を見ながら考える。もしも男性だったら、見とれて授業どころではなくなっていたかもしれない…などと思わせるくらいに、政宗の母は美しかった。
結局その後もつつがなく授業は進み、終わり、丁度それが今日の授業の最終時間で帰りの伝達もなく帰って良いと言われていたからかは知らないが、ともかく。
政宗は、終わるやいなや逃げ出した。
いや……正確には逃げだそうとした、というのが正しいのだろう。
教室にある二つの入り口の中の、母がいる方の出入り口には向かわずもう一つの出入り口を目指し、その判断は恐らく間違いなかったのだとしても。
ドアを開けた向こう側に、小十郎がいてはどうしようもない。
「Oh…No…」
なんてこったと政宗はうめき、小十郎はため息を吐く。
「政宗様、少しくらい話をお聞きになっても良いのではないですか?」
「断る!だから俺は家を継ぐ気は全くねぇんだ!」
「しかし…」
「だぁぁ!だから俺は意見を曲げる気は、」
「政宗、」
凜、と。
宥め賺そうとしている小十郎にくってかかる政宗を、その人はその一言だけで止めた。
「そのようなことを言うのではありません。小十郎は伊達家のため、ひいては貴方のためにそう言ってくれているのですから」
「…母上」
「というわけですので政宗」
次の瞬間、彼女の手には何らかの書類が出現していた。小太郎でさえいつ出てきたか判別できないほどに素早く取り出されたそれは、見れば随分と分厚く、一番上の紙は少なくとも、サインをするべきものであるようだった。
一体何だろうと疑問に思っている間に、変化は起きた。
政宗が、冷や汗を流しながら一歩、後ろに下がったのである。
それを逃すまいとするかのように、彼女も頬身ながら前に出る。
「さぁ、これにサインをなさい。それだけで貴方は立派に伊達家次期当主」
「ち…父上がまだ存命中なんだからよ…別にい…今じゃなくっても良いんじゃ…」
「そう言ってまた逃げる気ですね?そうはいきませんよ。十数年に及ぶ攻防戦、今日こそ決着を付けさせていただきますよ、政宗」
「…っく!」
そうして、追い詰められた政宗は渾身の力を振り絞ってであろう、小十郎が反応するより遙かに速く、彼の隣の隙間をすり抜けて廊下に出た。
その行為が何であるかなどは、考えるまでもなく明白。
政宗は、逃亡を開始したのだ。
「…!お待ちなさい政宗!…小十郎、貴方も追いなさい。私も探しに参ります」
「分かりました」
かくして。
政宗を捕まえるべく、大人たちが行動を開始した。
小太郎はそれを見送り、何となく、荷物を置いて廊下に出た。
母上が強い…。
ちなみに日輪学院内ではこの親子はこんな感じ。
それと同時に、政宗から気力が殆ど抜け落ちた。
二つの変化を感じながら、小太郎はその変化たちの原因であろう新たなる『登場人物』の方へと視線を向けた。つまり、というか。
入ってきたのは政宗の母親だった、ということなのだろう。
だろう、というのも、そもそも小太郎は政宗の母親を見たことが一度もない。幸村も、慶次も、半兵衛も、学年が違う他の皆も、とにかく見たことがある人物はたったの一人もいないだろう。県外に住んでいると言うから、それは当然なのだけれど。
しかし、政宗の反応を見れば一目瞭然。
彼女こそが間違いなく、政宗の母親だ。
彼の様子を踏まえてみてみれば、成る程、似ていると言えるであろう箇所は幾つか見受けられる。似ていない親子が多々といる中では、どうやらこの二人は似たもの親子であるらしかった。
…それにしても心配なのが政宗の様子である。
彼女が現れた途端に一気に萎み込んだ彼の様子であるが、果たして、大丈夫なのだろうか。普段の彼ならばこのような心配は全く不要であるのだが、今の彼を見ていると、どうしたってそうとは思えない。というか、普段の彼と今の彼、正直別人と言っても信じるかも知れない。気配が一緒だからそれは無いと知っているけど。
これは、半兵衛の頼みのままに幸村を押さえていたのは正解だったかも知れない。この状態の彼に、幸村のテンションはキツイだろう。もっとも、半兵衛は別の思惑と不安があったようだけれど、そちらはさほど気にする必要はなかったのでは、と思う。しかし、反論は出来なかったので黙っていたけれど。
まぁ、黙っているのはいつもの事。
黙り続けるのもいつもの事、だ。
そう結論づける頃には教室の中の空気はいくらか落ち着いてきており、教師もどうにか気を取り直して授業を再開した。今の教師が女性の教師で良かったかも知れないと、今の様子を見ながら考える。もしも男性だったら、見とれて授業どころではなくなっていたかもしれない…などと思わせるくらいに、政宗の母は美しかった。
結局その後もつつがなく授業は進み、終わり、丁度それが今日の授業の最終時間で帰りの伝達もなく帰って良いと言われていたからかは知らないが、ともかく。
政宗は、終わるやいなや逃げ出した。
いや……正確には逃げだそうとした、というのが正しいのだろう。
教室にある二つの入り口の中の、母がいる方の出入り口には向かわずもう一つの出入り口を目指し、その判断は恐らく間違いなかったのだとしても。
ドアを開けた向こう側に、小十郎がいてはどうしようもない。
「Oh…No…」
なんてこったと政宗はうめき、小十郎はため息を吐く。
「政宗様、少しくらい話をお聞きになっても良いのではないですか?」
「断る!だから俺は家を継ぐ気は全くねぇんだ!」
「しかし…」
「だぁぁ!だから俺は意見を曲げる気は、」
「政宗、」
凜、と。
宥め賺そうとしている小十郎にくってかかる政宗を、その人はその一言だけで止めた。
「そのようなことを言うのではありません。小十郎は伊達家のため、ひいては貴方のためにそう言ってくれているのですから」
「…母上」
「というわけですので政宗」
次の瞬間、彼女の手には何らかの書類が出現していた。小太郎でさえいつ出てきたか判別できないほどに素早く取り出されたそれは、見れば随分と分厚く、一番上の紙は少なくとも、サインをするべきものであるようだった。
一体何だろうと疑問に思っている間に、変化は起きた。
政宗が、冷や汗を流しながら一歩、後ろに下がったのである。
それを逃すまいとするかのように、彼女も頬身ながら前に出る。
「さぁ、これにサインをなさい。それだけで貴方は立派に伊達家次期当主」
「ち…父上がまだ存命中なんだからよ…別にい…今じゃなくっても良いんじゃ…」
「そう言ってまた逃げる気ですね?そうはいきませんよ。十数年に及ぶ攻防戦、今日こそ決着を付けさせていただきますよ、政宗」
「…っく!」
そうして、追い詰められた政宗は渾身の力を振り絞ってであろう、小十郎が反応するより遙かに速く、彼の隣の隙間をすり抜けて廊下に出た。
その行為が何であるかなどは、考えるまでもなく明白。
政宗は、逃亡を開始したのだ。
「…!お待ちなさい政宗!…小十郎、貴方も追いなさい。私も探しに参ります」
「分かりました」
かくして。
政宗を捕まえるべく、大人たちが行動を開始した。
小太郎はそれを見送り、何となく、荷物を置いて廊下に出た。
母上が強い…。
ちなみに日輪学院内ではこの親子はこんな感じ。
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