式ワタリによる、好きな物を愛でるブログサイト。完全復活目指して頑張ります。
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地上に降りた二人の話。
サンクキングダムは、思った以上に心地よい国だった。
まず、自然がたくさんある。町並みも綺麗だし、治安も良さそうだ。治安に関してはきっと『完全平和主義』というこの王国の基本理念が強い影響を持っているのだろう。この場所に住み着こうとするのは、平和を愛して戦いを嫌う人たちだけなのかもしれない。少なくとも戦闘中毒者には、この場所はとても居心地が悪いに違いないから。
まぁ、自分たちは中毒者ではなくて依存者というのが正しいかも知れないけど。
何せ、戦闘の実行こそが存在理由なのだから。
依存どころでなく戦闘とベッタリな存在が自分たちだ。
…そんな存在が、こんな場所にいるというのは些か妙だろうか。
「ま…妙と言われても気にしないけどね」
サンドロックは一人呟いて、部屋の窓部分を開けた。
すると朝の光が入ってきて、その明るさに目を細める。
ここはサンクキングダムの中の、とある貸家の一つ。ヘビーアームズが思った以上にたくさんのお金を盗ってきていたために、貸家を借りることすら可能になっていたのである。
あの時…貨幣を全て出されたとき、思わず固まったのも良い思い出だ。どこに、どうやってそれ程隠したのかと言いたくなるくらい、彼は大量に持ってきていたのである。その中にはもちろん紙幣もあったりしたが。
多分、働かなくても二、三週間くらいは普通の人間なら生きていける。
自分たちなら、それ以上。
人間らしい姿を形取っているとはいえ、やはり人間ではないから、別に食事がいるわけではないのである。生活費を切り詰めたいと思えばそこを切ってしまえばいい。それでも、人間を形取っている以上は食べられないわけではないし、さしせまってお金に関して困ってもいないので、一日二食くらいは食べているのが実情だけれど。
それで、暇な昼はふらりと外に出たりする。
やってきたのは本当に数日前だけれど、顔見知りと呼べそうな人も何人か出来た。その人たちに学校があるのだと言うことを訊いて、コッソリと見に行ったこともある。偶然その時に学校の理事をやっている少女を見たりもした。
確か、王家の生き残りという話だったと思う。
名前はリリーナ・ピースクラフト、だそうだ。
…そういえばトールギスの所のゼクスとかいう人のもう一つの名前はミリアルド・ピースクラフトだった。姓が同じと言うことは、もしかしたら血縁関係なのだろうか。かつて南極でゼクスとウイングのパイロットとの決闘に立ち会った…というか関係者(関係機、だろうか、正確には)であるヘビーアームズなら、もう少し詳しく知っているかも知れないけれども。
だが、そのことは今は良いかと保留している。どうせこの場所に住んでいたらその内知ることになる。やることが無くて退屈で、やることと言ったら散歩と世間話とハッキングくらいの物なのだし、今のところ。
これが平和だというのなら、まぁ、目指すのも悪くないかも知れない。
戦うための存在が戦わなくてすむような場所。
戦う道具が廃棄されるべき場所。
自分たちの存在が許されていないという点は心苦しくもあるが、そんなのは黙っていればこの姿であればごまかせる。自分の心はごまかせないままだろうと、他人をごまかして生活することは一応、可能だ。
だから今、こうしているのだけれど。
今日はもう面倒だから朝食は抜きで良いかな、と思いながらぼうっと外を見ていると、ふいに扉が開くような音がして振り向いた。
そうして、笑む。
「ヘビーアームズ、寝間着とはいえ少しは整えた方が良いんじゃないかな」
「……」
起きてきた仲間の着ている服がとてもずれたままなのを指摘すると、彼は黙ってそれを直した。無表情ながら。しかしその無表情の中に未だに眠気が残っていると気づけるのは自分の自慢でもある。
目を擦りながらこちらに着た仲間に、笑みを浮かべたまま言う。
「今日、朝ご飯は抜きでも良い?」
「…」
「うん。じゃあ代わりにお昼は食べようか。外に出て食べに行くのもありだと思うし。それで食べ終わったらさ、また散歩にでも行こう?」
「……」
眠気が強いからか、寝ぼけたままに頷くだけのヘビーアームズを起こしたままでいるのが何となく忍びなく、サンドロックは彼の手を引いて彼の自室として割り当てた部屋の方に向かう。
どうせ昼間でやることはないのだし、ギリギリまで眠ってもらっても良いだろう。
「じゃあ、出発するときにでも起こすね」
「……」
そうしてベッドに倒れるように伏せた彼は、こくりと頷きもせずに直ぐに眠りに落ちた。
多分、彼も疲れているのだろうと思う。最も疲れていないのは自分かナタク…あるいは両方かも知れないけれど、他の三人はとっても『疲れて』いる。
起こってしまった過去形の出来事と、現在進行形で続いている今と、それぞれがそれぞれの苦労や痛みを抱いているのだと、思う。ウイングだってコロニーを落としたことを悔いているだろうし、敵だと思わない人々の敵意を真正面から受けてデスサイズはまだ内心傷ついたままだろう。そして、ヘビーアームズだって、パイロットが行方不明のまま。
みんな、早く立ち直ることが出来ればいいのに。思って、はぁと息を吐いた。
いや、君も充分疲れてると思うけれど…。
まず、自然がたくさんある。町並みも綺麗だし、治安も良さそうだ。治安に関してはきっと『完全平和主義』というこの王国の基本理念が強い影響を持っているのだろう。この場所に住み着こうとするのは、平和を愛して戦いを嫌う人たちだけなのかもしれない。少なくとも戦闘中毒者には、この場所はとても居心地が悪いに違いないから。
まぁ、自分たちは中毒者ではなくて依存者というのが正しいかも知れないけど。
何せ、戦闘の実行こそが存在理由なのだから。
依存どころでなく戦闘とベッタリな存在が自分たちだ。
…そんな存在が、こんな場所にいるというのは些か妙だろうか。
「ま…妙と言われても気にしないけどね」
サンドロックは一人呟いて、部屋の窓部分を開けた。
すると朝の光が入ってきて、その明るさに目を細める。
ここはサンクキングダムの中の、とある貸家の一つ。ヘビーアームズが思った以上にたくさんのお金を盗ってきていたために、貸家を借りることすら可能になっていたのである。
あの時…貨幣を全て出されたとき、思わず固まったのも良い思い出だ。どこに、どうやってそれ程隠したのかと言いたくなるくらい、彼は大量に持ってきていたのである。その中にはもちろん紙幣もあったりしたが。
多分、働かなくても二、三週間くらいは普通の人間なら生きていける。
自分たちなら、それ以上。
人間らしい姿を形取っているとはいえ、やはり人間ではないから、別に食事がいるわけではないのである。生活費を切り詰めたいと思えばそこを切ってしまえばいい。それでも、人間を形取っている以上は食べられないわけではないし、さしせまってお金に関して困ってもいないので、一日二食くらいは食べているのが実情だけれど。
それで、暇な昼はふらりと外に出たりする。
やってきたのは本当に数日前だけれど、顔見知りと呼べそうな人も何人か出来た。その人たちに学校があるのだと言うことを訊いて、コッソリと見に行ったこともある。偶然その時に学校の理事をやっている少女を見たりもした。
確か、王家の生き残りという話だったと思う。
名前はリリーナ・ピースクラフト、だそうだ。
…そういえばトールギスの所のゼクスとかいう人のもう一つの名前はミリアルド・ピースクラフトだった。姓が同じと言うことは、もしかしたら血縁関係なのだろうか。かつて南極でゼクスとウイングのパイロットとの決闘に立ち会った…というか関係者(関係機、だろうか、正確には)であるヘビーアームズなら、もう少し詳しく知っているかも知れないけれども。
だが、そのことは今は良いかと保留している。どうせこの場所に住んでいたらその内知ることになる。やることが無くて退屈で、やることと言ったら散歩と世間話とハッキングくらいの物なのだし、今のところ。
これが平和だというのなら、まぁ、目指すのも悪くないかも知れない。
戦うための存在が戦わなくてすむような場所。
戦う道具が廃棄されるべき場所。
自分たちの存在が許されていないという点は心苦しくもあるが、そんなのは黙っていればこの姿であればごまかせる。自分の心はごまかせないままだろうと、他人をごまかして生活することは一応、可能だ。
だから今、こうしているのだけれど。
今日はもう面倒だから朝食は抜きで良いかな、と思いながらぼうっと外を見ていると、ふいに扉が開くような音がして振り向いた。
そうして、笑む。
「ヘビーアームズ、寝間着とはいえ少しは整えた方が良いんじゃないかな」
「……」
起きてきた仲間の着ている服がとてもずれたままなのを指摘すると、彼は黙ってそれを直した。無表情ながら。しかしその無表情の中に未だに眠気が残っていると気づけるのは自分の自慢でもある。
目を擦りながらこちらに着た仲間に、笑みを浮かべたまま言う。
「今日、朝ご飯は抜きでも良い?」
「…」
「うん。じゃあ代わりにお昼は食べようか。外に出て食べに行くのもありだと思うし。それで食べ終わったらさ、また散歩にでも行こう?」
「……」
眠気が強いからか、寝ぼけたままに頷くだけのヘビーアームズを起こしたままでいるのが何となく忍びなく、サンドロックは彼の手を引いて彼の自室として割り当てた部屋の方に向かう。
どうせ昼間でやることはないのだし、ギリギリまで眠ってもらっても良いだろう。
「じゃあ、出発するときにでも起こすね」
「……」
そうしてベッドに倒れるように伏せた彼は、こくりと頷きもせずに直ぐに眠りに落ちた。
多分、彼も疲れているのだろうと思う。最も疲れていないのは自分かナタク…あるいは両方かも知れないけれど、他の三人はとっても『疲れて』いる。
起こってしまった過去形の出来事と、現在進行形で続いている今と、それぞれがそれぞれの苦労や痛みを抱いているのだと、思う。ウイングだってコロニーを落としたことを悔いているだろうし、敵だと思わない人々の敵意を真正面から受けてデスサイズはまだ内心傷ついたままだろう。そして、ヘビーアームズだって、パイロットが行方不明のまま。
みんな、早く立ち直ることが出来ればいいのに。思って、はぁと息を吐いた。
いや、君も充分疲れてると思うけれど…。
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