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放置されまくってたあの人が登場いたします。



 幸村は彷徨っていた。
 というのも、それは教室にいつの間にか自分の他に誰もいなくなっていたから。これから大事な何かがあるわけでもなく、帰ったところで問題はなかっただろうが、何となく帰ろうという気分になれなかったのだ。走り去っていった政宗や、その後を追うようにして教室から出て行った慶次と半兵衛、いつの間にか消えていた小太郎の行動の理由がとても気になったので。
 だから行動を起こしたのだが、当て、という物があるわけでは無い自分。
 結果として、彷徨うことになってしまった。
 まぁ、それを理由に諦めようなどとは思わないけれども。
「しかし政宗殿たちはどこへ行ったのであろうか…」
 多分、まだ学校の中にいるとは思うのだ。小十郎も動いているらしいから、政宗だってうっかりとした行動を取ることは出来ないだろう。政宗が小十郎に勝てた所なんて見たことがないから、そこは断言したって良い。
 足を購買の方に向けながら、幸村は考える。
 慶次や半兵衛、小太郎は政宗を捉えることが出来ただろうか。というか、小太郎も二人のように政宗を追いかけていったと言うことで良いのだろうか。多分、良いとは思うけど。そして、この状況を生徒会は知っているのだろうか。
 考えても考えても全く答えのでない問いを頭の中でグルグルと回しつつ、動かし続けていた足は幸村を購買の見える場所まで運んでいて。
 購買の姿を視界に収め瞬間、ぴん、と来た。
 その直感に従って、購買のカウンターへ全速力で走り寄る。途中で誰か二人を追い越したが気にせず、店番をしていたいつきの所へと向かう。
 そして驚いた表情を浮かべる彼女に、勢いよく問いかけた。
「いつき殿!ここに政宗殿はおられるだろうか!?」
「ゆ…幸村!?」
「政宗殿がここにいるような気がしたのでござるが」
「気がしたって…」
 ちらちらとした視線を幸村を素通りさせながら、いつきが呻く。
「…気のせいだべ。政宗はここにはいないからな」
「政宗殿ー!…む?佐助もいるのか?」
「人の話を聞いてけろ!ていうかその無駄に自信に溢れてる言動は何だべ!?」
「ぴん、と来たのでござる」
 そして、ぴん、と来たときは基本的に間違わない。
 故に自信を持ってここに政宗と佐助がいると断言できるのである。
 というわけなので。
「いつき殿、それでは某、中に入らせてもらいたく」
「どうしてそうなるべか!」
「政宗殿がいるようなので、少し今回の顛末について訊きたいのでござるが」
「それなら後ろにいる二人組に訊いてけろ!別に中にいる政宗じゃな…むぐっ!?」
 何事か言いかけたいつきだったが、後ろから伸びてきた手によってそれは中断させられた。手は、彼女の口元を覆ったのである。
 幸村は、いつきの後ろに立っている相手を認めてきょとんと首を傾げた。
「小太郎殿、今までどこにいたので?」
「……」
 どこからどう見ても、何もない場所から突然現れた様にしか見えない無口なクラスメイトは、幸村の言葉に応じることなく、ただただ購買少女の口を手で塞いでいるだけだった。
 その行為の理由が分からないのだけれど。いや、喋らせないようにしているのだろうなぁ、というのは漠然と分かるのだが、それにしたってどうして喋ってはいけないのかが分からない。何か、言ってはいけないことを言いかけたのだろうか。
 さらに謎が増え、どうしようかと考えていると、ふいに聞き慣れた声が耳に届いた。
「小太郎…どこから出てきたとか色々訊きてぇけど……良いぜ、もう。あの人たちには完ッ全にバレてるから」
「……」
「おぉ、政宗殿。その様なところにいたので……っ!?」
 ひょこ、と購買の中の積み上げられた段ボールの影から頭を出した政宗に幸村は何気なく声をかけ。
「……のバカ幸村ぁーッ!」
 …返ってきたのは跳び蹴りだった。
 突然のことに避けることも受け身も出来ず、顎目がけて繰り出されたそれをモロに食らう。やはり相手は伊達政宗、その威力は仰向けに倒れて後頭部を地面に強かに打ち付けたことを差し引いても、涙目になるには充分すぎるほど。
 …だというのに、倒れている自分の顔面に靴裏がめり込む現状は行き過ぎでは無いだろうか。その上、ぐりぐりされてるのだけれど。抗議の声を上げたくても痛くて痛くて実行の仕様がなかった。何せ、顔面を踏みつけられているのだから。
 そんな状態だというのに、彼は容赦がなかった。
「テ・メ・エは一体何を考えてやがんだっ!?どうして俺が隠れてたと思ってんだよ!母上たちに居場所バラしてんじゃねぇ!これで継ぐの決定した全部テメェのせいだからな真田幸村!」
 依然として状況は全く分からなかったけれど。
 ……やっちゃいけないことをやったんだろうなぁ、というのは漠然ながら理解した幸村だった。







バカ幸村をバカ村にしようかとか考えてたんですけれど。
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