お題：赤 19.四畳半

初出撃前のトリニティ、的な。実際にこんなのだったら色んな意味で悲しすぎるけどさ…。

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19．四畳半



「……というわけだから、出番までここで待っていてくれたまえ」
　などという言葉と共に扉は閉められ。
　非常に狭い部屋に三人は取り残された。
　……
　…………
　………………
「ってちょっと待て！？何で俺らこんな狭い部屋に突っ込まれてんだよ！？」
「まぁ落ち着け、ミハエル。多分部屋がなかったんだろう」
「んな馬鹿な話あるか！」
　今まで通らされた廊下にはやけに高そうな絵とか、棚の上には金ぴかの壺とか皿とか、あと恐らく歴代の当主か何かの写真がこれまた金ぴかの額縁の中に入れられて飾ってあったりもしたし。
　そんな『金が有り余っています』と存在全てで表しているようなこの家だ、物置だって普通の家の何倍の大きさだってあるだろう。
　しかし、今。
　三人が通されたのは非常に狭い、狭すぎる部屋。
　納得がいかないのも無理はないだろう。
「何だよコレ…何だ？何をする前から嫌われてんのかよ俺たち」
「うわ、ミハ兄何やったの？」
「え、ネーナ、その言葉本気か？」
「ネーナ、決めつけで言ってしまってはミハエルに悪いぞ」
「兄貴…！」
　ネーナの言葉に反論のようなものをしてくれるらしい兄に、ミハエルは感動を覚えた。何だかんだでやはり長男、公平な視点を持っていると言うことだろう。
　だがしかし、表情をピクリとも変えずに、兄はとんでもない言葉を続けてくれた。
「もしかしたら何もしないうちに嫌われているのかも知れないからな」
「え゛」
「あ、そっか」
「そっかじゃねーッ！」
　いくら最愛の妹だろうとその言葉に頷くのは酷い。
　故に渾身の叫びが出たのだが、対して向けられたのは冷たい視線。
「ミハ兄、もうちょっと自覚持った方が良いよ？」
「何の自覚だよ何の！てかな、ネーナ、お前もちょっと危ないんだからな！？」
「私？私が何かしたっけ」
「知ってンだからな……お前、ア…アラハ………ドロ？…えーと何だっけ…」
「泥で良いんじゃないか？」
「あ、それ良いかも。流石兄貴。…とにかくあの泥の金を勝手に横領してたろ！」
「なっ……何でそれ知ってるの！？ちゃんと脳量子波使って情報偽造してたのに！」
　びくぅっと肩を揺らすネーナ。どうやら数々の悪行がバレていることに気付いていなかったらしい。まぁ、悟らせなかったのだから当然ではある。長兄が何も言わない限りは黙って好きなようにさせておこうと、自分にしては珍しいほどに心を砕いていたのだから。
　最愛の妹の為なので、それも苦にはならなかったが。
　だが、今、それを全て隠している必要もなくなった。
　ここぞとばかりに全て暴かせてもらうことにしよう。
「ふっ…それだけじゃねぇぜ！横領した金が殆ど服やら化粧品やら菓子やらに還元されてたことも知ってンだからな！それに俺の小遣いだって勝手に奪ってくし！」
「ミハ兄の物は私の物なんだから良いじゃない、最後のは！」
「うん、それは認める」
「認めちゃうの！？」
「おうよ！だけどなッ！どうしてそれで兄貴のには手、付けてねーんだよ！」
「え…だって…」
　と、ネーナは急に弱気になって、それから。
　ついと視線を自分とも、ヨハンとも合わないような方向に逸らして呟いた。
「…バレたら…怖いし…」
「あぁ……だよなー…」
　確かに、ヨハンにバレると後が恐ろしい。
　じゃあ自分の場合は怖くないのかと疑問には思わないミハエルだった。
　そうして二人の言い合いが終わった頃を見計らってだろう、少し疲れた様子でヨハンが口を開いた。
「二人とも落ち着いたか？ならとりあえず茶でも飲むと良い。…というか、もう大声で言い合うな。ただでさえ狭いスペースなんだからな。響く」
「あ…ごめん」
「…つか、兄貴、茶って…アイツらそんなの運んできたか？」
「ん？あぁ、いや、これは通ってきた部屋の一つに置いてあったから拝借してきただけだ」
　さらりとそう告げる、ヨハンが一番『悪』かもしれない。悪びれもしていないのだから。
　ちょこ、と部屋の中心に置いてある紅茶セットを眺め、ミハエルはため息を吐いた。

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いつも通りっぽいネーナを目指し、一番可哀想な役割のミハエルを目指し、さらりと酷いヨハンを目指した話。
…ミハエルごめんね…。