式ワタリによる、好きな物を愛でるブログサイト。完全復活目指して頑張ります。
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再会どころか出会わせてしまいましたが。
今、ヘビーアームズは迷子だった。
いや…迷子、というのは些か語弊があるかも知れない。この場所から自分たちが拠点としている場所に帰るまでの道のりを、決して忘れているわけでもないのだから。
だが、迷っている子、という言葉に現状が間違っているとも言いにくい。
結論から言うと。
ヘビーアームズはサンドロックとはぐれていた。
ほんの少しだけ、互いに意識を別方向に向けてしまったのが問題だったらしい。ふと気付けば彼の姿は傍にはなく、どこにいるのかが全く分からないようになっていた。自分はこうやって冷静にしていられるけれど、そういえば彼の方はどうなのだろう。慌てていたりするのだろうか。
有り得そうだと思いながら、海に面している道の、とある部分で足を止めた。
それからふっと、直ぐ側にある大きな建物を見る。
学校。学園。どちらが正しいのかは知らない。その両者に違いがあるのだとしても興味はないし、もしかしたら学院というのが最も正確なのかも知れない。つまり、自分はこの学校の名前を知らないのである。名前を知れば、どれで表すべきかも分かろう物だろうが。
しかし、だからといってここに興味がないわけではない。
…完全平和主義。
ここは、それを学ぶ事が出来る場所らしいのだ。
とても希有な場所だろうと、ヘビーアームズは建物を眺めながら思考した。この戦争ばかりしかしていない世界で、平和を掲げて無抵抗を掲げて武器を捨てるというのは、有る意味では自殺行為に等しい。それを承知でそれを行うなど、よっぽどの馬鹿か、人を信用しすぎている誰かか……あるいは、覚悟を決めきった誰かだろうか。
果たしてどれなのか、それも自分には分からない。そもそもリリーナ・ピースクラフトという人物に、自分は会ったことも無い。南極で少しだけ姿を見たけれど、あれだけで彼女がどのような人物であるか何て分かるわけもない。
まぁ少なくとも、国主である時点で三つの選択肢の中の一つめはないだろうと思いながら、フェンスに僅かに体重をかけて建物を見る。
別に、何かを思うわけでもなく。
ただただ、じっと。
有る意味で完全平和主義を一番体現しようとしているのかもしれないその建物を、眺めることで何かを得ようと思っているわけでもなく。
多分、その行為に意味なんて無かった。
意味もなく自分たちの存在を否定する証を、ただただ見ているだけだった。
「貴方」
そんな時。
前方から声が聞こえてきて、見上げていた視線をやや下にずらした。
すると、見えたのはいつぞや見た顔。
「一人で…そんなところで何をしているの?」
リリーナ・ピースクラフト、その人だった。
彼女はどうやら一人でここにいた自分を訝しく思い、あるいは不思議に思ってこちらに寄ってきたらしい。見も知りもしない、どちらかといえば不審人物だろう相手に不用意に近づくのはどうかと思うけれど、これは他人を信頼しているからなのかもしれない。
そんな無条件の信頼、存在してはいけないだろうに。
けれど実際はそうであったとしてもそれだけではなく、自分の見た目も関係しているだろう。仲間に以前指摘されたのだけれど、自分のこの姿の時の目は眠そうな感じを相手に与えるらしく、背もあまり大きいわけでもないから、自分は他人を案外油断させやすいらしいのだ。
その特性が今まさに活かされているということなのだろう。
それに関しては不快感を覚えるわけでもないから、気にもしないことにしてヘビーアームズは口を開いた。仲間ではない相手には、ちゃんと言葉で応答しなければならない。
「…仲間とはぐれたから」
「仲間?どのような人?」
…あぁ、近づいたのは不思議というより心配という気持ちがあったからか。
どうやら良い人らしい。覚えておこう。
「茶髪で……その中に、緑がちょっと混じってる」
「それは…珍しい髪ね」
「…全部白よりマシだって言ってたけど」
ウイングみたいな、まるで若白髪みたいなアレは流石に嫌だと苦笑していたのを思い出しながら言うと、リリーナはクスリと笑った。
そして彼女は口を開き、しばらく迷った様子を見せ、それからこちらを改めて見た。
「貴方、名前は?」
「…好きに呼んでくれればいい」
本名を名乗るわけにもいかないからそう言うと、先ほどとは比べものにならないくらい不思議そうな表情を浮かべたが……直ぐにそれを消して笑みを浮かべて、彼女は応じた。
「じゃあ、貴方の灰色の髪の毛にあやかってグレイにしましょう。偽名なのだから、そういう簡単な物でも構わないと思うのだけど…」
「それで良い」
「そう、ありがとう。私はリリーナ・ピースクラフト。よろしく、グレイ」
「…よろしく」
差し出された手を、ヘビーアームズは握り返した。
彼女の手……人間の手というのは昔から思っていたままに暖かく、柔らかく……とてつもなく脆いような気が、した。
そんな感じでお知り合いになりました。
いや…迷子、というのは些か語弊があるかも知れない。この場所から自分たちが拠点としている場所に帰るまでの道のりを、決して忘れているわけでもないのだから。
だが、迷っている子、という言葉に現状が間違っているとも言いにくい。
結論から言うと。
ヘビーアームズはサンドロックとはぐれていた。
ほんの少しだけ、互いに意識を別方向に向けてしまったのが問題だったらしい。ふと気付けば彼の姿は傍にはなく、どこにいるのかが全く分からないようになっていた。自分はこうやって冷静にしていられるけれど、そういえば彼の方はどうなのだろう。慌てていたりするのだろうか。
有り得そうだと思いながら、海に面している道の、とある部分で足を止めた。
それからふっと、直ぐ側にある大きな建物を見る。
学校。学園。どちらが正しいのかは知らない。その両者に違いがあるのだとしても興味はないし、もしかしたら学院というのが最も正確なのかも知れない。つまり、自分はこの学校の名前を知らないのである。名前を知れば、どれで表すべきかも分かろう物だろうが。
しかし、だからといってここに興味がないわけではない。
…完全平和主義。
ここは、それを学ぶ事が出来る場所らしいのだ。
とても希有な場所だろうと、ヘビーアームズは建物を眺めながら思考した。この戦争ばかりしかしていない世界で、平和を掲げて無抵抗を掲げて武器を捨てるというのは、有る意味では自殺行為に等しい。それを承知でそれを行うなど、よっぽどの馬鹿か、人を信用しすぎている誰かか……あるいは、覚悟を決めきった誰かだろうか。
果たしてどれなのか、それも自分には分からない。そもそもリリーナ・ピースクラフトという人物に、自分は会ったことも無い。南極で少しだけ姿を見たけれど、あれだけで彼女がどのような人物であるか何て分かるわけもない。
まぁ少なくとも、国主である時点で三つの選択肢の中の一つめはないだろうと思いながら、フェンスに僅かに体重をかけて建物を見る。
別に、何かを思うわけでもなく。
ただただ、じっと。
有る意味で完全平和主義を一番体現しようとしているのかもしれないその建物を、眺めることで何かを得ようと思っているわけでもなく。
多分、その行為に意味なんて無かった。
意味もなく自分たちの存在を否定する証を、ただただ見ているだけだった。
「貴方」
そんな時。
前方から声が聞こえてきて、見上げていた視線をやや下にずらした。
すると、見えたのはいつぞや見た顔。
「一人で…そんなところで何をしているの?」
リリーナ・ピースクラフト、その人だった。
彼女はどうやら一人でここにいた自分を訝しく思い、あるいは不思議に思ってこちらに寄ってきたらしい。見も知りもしない、どちらかといえば不審人物だろう相手に不用意に近づくのはどうかと思うけれど、これは他人を信頼しているからなのかもしれない。
そんな無条件の信頼、存在してはいけないだろうに。
けれど実際はそうであったとしてもそれだけではなく、自分の見た目も関係しているだろう。仲間に以前指摘されたのだけれど、自分のこの姿の時の目は眠そうな感じを相手に与えるらしく、背もあまり大きいわけでもないから、自分は他人を案外油断させやすいらしいのだ。
その特性が今まさに活かされているということなのだろう。
それに関しては不快感を覚えるわけでもないから、気にもしないことにしてヘビーアームズは口を開いた。仲間ではない相手には、ちゃんと言葉で応答しなければならない。
「…仲間とはぐれたから」
「仲間?どのような人?」
…あぁ、近づいたのは不思議というより心配という気持ちがあったからか。
どうやら良い人らしい。覚えておこう。
「茶髪で……その中に、緑がちょっと混じってる」
「それは…珍しい髪ね」
「…全部白よりマシだって言ってたけど」
ウイングみたいな、まるで若白髪みたいなアレは流石に嫌だと苦笑していたのを思い出しながら言うと、リリーナはクスリと笑った。
そして彼女は口を開き、しばらく迷った様子を見せ、それからこちらを改めて見た。
「貴方、名前は?」
「…好きに呼んでくれればいい」
本名を名乗るわけにもいかないからそう言うと、先ほどとは比べものにならないくらい不思議そうな表情を浮かべたが……直ぐにそれを消して笑みを浮かべて、彼女は応じた。
「じゃあ、貴方の灰色の髪の毛にあやかってグレイにしましょう。偽名なのだから、そういう簡単な物でも構わないと思うのだけど…」
「それで良い」
「そう、ありがとう。私はリリーナ・ピースクラフト。よろしく、グレイ」
「…よろしく」
差し出された手を、ヘビーアームズは握り返した。
彼女の手……人間の手というのは昔から思っていたままに暖かく、柔らかく……とてつもなく脆いような気が、した。
そんな感じでお知り合いになりました。
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