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例の相談員(『お悩み相談室』参照)とマリナさまの話。
17.匿名希望
マリナには、とある友人がいる。
その彼女は悩み相談のバイトをしていて、相手の顔が見え無いながらもどうにかアドバイスを与えることが出来たりすると、とても嬉しいのだと笑って話してくれたこともあった。つまり、彼女にとってそれは天職だったのである。
が、しかし。
彼女は、今、その職について少し悩んでいることがあるらしい。
『あのですね、何か、似た様な内容が続けて相談されるんです』
「…?同一人物から?」
『いいえ、全員が全員、別物。ただし、何だか繋がっている様な気がして…』
「偶然でしょう?」
『だと、良いんですけれど』
すっかりと相談員としての口調が染みついてしまっている彼女は、通信機の向こう側でため息を吐いたようだった。
どうやら、彼女も偶然であろうと思っているらしい。正確に言うと、思おうと思っているらしい。だいたい、そんな偶然があったところで相手は名前も分からない他人だし、そもそも一つの相談窓口にそんなにたくさん関連者がかけてくるのも不思議だし。
だから、それはきっと全員知り合いに見える、全くの赤の他人たちなのだ。
そう思うのが一番分かり易い。
『しかし…どれもこれもが似た様な内容というのも妙です。恋とか愛とかメロメロとか観客になるのが楽しいとか背中を押してあげたいとか、果てには殺す殺さないなんて』
「…最後のは本当に、恋に愛に関係ない物ね」
『そうでしょう?でも、本当に何だか…繋がってるんです』
「どんな風に、かしら」
『とある人は、妨害が良く入ると言っていました。さらに別の人は、どうやら盗撮をしているみたいでしたし、妨害をし続けているという人もいました。中にはそういう話をしつつ、別の……何か、なりたい物があるという人もいましたけれど』
「その人たち個人個人から、新しい相談は?」
『一度きりですけれど、やはり不思議でしたからこうして連絡をかけてみたんです』
「そう…面白い話ね」
『そう言うと思ったんです』
「匿名というのが悔やまれるわね」
名前さえ分かれば、どうとでも調べ様はあるに違いないのに。それをしたら相談室の意味がほとんど無いだなんて、そんなこと知ってはいるけれど。それでもこういう時、どうしてそんな物があるのだろうと思ってしまうのは仕方がないだろう。
その中に、刹那が入っていたらそれこそ面白いというか、妙な縁があるのだけれどと苦笑しながら、そうだ、とマリナは手を打った。
きょと、としている彼女に笑顔で言う。
「ねぇ、私の質問も少し聞いて頂戴」
『構いませんけれど…突然どうしたんです?国云々は私には無理な相談ですよ?』
「分かっているわ。もっと別の、個人的なことなの」
『…なら、構いませんが…』
まだ少し警戒している彼女に、マリナは安心させる様な微笑みを浮かべて口を開いた。
「あのね、戦っている少年にあったの」
『少年?戦っているんですか?』
「えぇ。ずっとずっと、今よりも子供の時から戦っているのだと言っていたわ。だからかしら、平和を求めるのは、平和を欲しいと思うのは同じようなのに、私たちの会話は平行線しかたどれなかったわ」
『それは…仕方がないことではないのですか?』
彼女は、やや困惑気味に言う。
どうしてこんな話、と思っているのだろう。
『育ちが違えば立場も違い、ならば考え方が違うのは道理でしょう』
「そうね。でも、分かり合えなかったのは悲しかったわ」
『分かり合えているのかも知れません。分かり合えているけれど、それは心の奥底で過ぎで、どうしても認識できないだけかも知れません』
「あら、そう言うことがあるのかしら」
『無いとは言い切れませんから』
さら、と彼女は答えた。
『ならばあっても問題ないでしょう?』
「…えぇ、それもそうね」
そうだったら…本当に良いのだけれど。少しくらい、分かり合えていたというのならば、それはとても嬉しいことなのだけれど。
あの、小さな戦い続ける少年と。
道は違えど同じ場所を目指している事を誇りに思っている自分としては。
やはり、そうであって欲しいのだ。
そんな感じの話でした。
そしてあれですね…相談員さんおつかれさま。