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実は、というか。
罪歌が現段階だと結構好きだったりする…。



 朝起きたら目の前に自分と同じ顔があるというのは、こんな気持ちを引き起こすものなのかと、杏里は、ただただしみじみと思った。
 驚愕と、呆然とした気分と。
 混乱は不自然ながら…いや、あまりに自然に、無い。
 それはきっと、目の前の彼女が『彼女』だから、だろう。
 そのことに関しては、不思議でもなく確信があった。だからこそ『彼女』は自分と同じ顔を持っているのだろう。ただ、顔は同じでも細部が違うのは『彼女』が自分ではないからなのかもしれない。
 まず、髪が長かった。今の杏里の髪をそのまま伸ばしたら、丁度こんな感じになるだろうという様子である。
 それから、確認してみたら眼鏡は一つだけだった。ということは『彼女』は眼鏡を使わないのだろう。仮に視力が低かったとしても、生憎と眼鏡の予備なんてものはこの家には無いのだし、どっちにしたって『彼女』用の眼鏡は無いのだけれど。
 背の高さは寝たままだから何とも比べ難いが…同じくらい、だと思われる。
 それならば、問題の一つは解決できる。服は、自分の私服を着てもらえばいい。
 すると次の問題が浮かび上がってくる。というのも、今日は平日なので杏里は学校に行かなければならない。つまりその間、『彼女』はずっと一人きりだということである。それは流石に……駄目だろう。危ないなんて言葉じゃ語れないほどに危ない。主に普通の人が。
 セルティに頼もうか。そんなことを思いながらベッドから降り、支度を始める事にする。
 朝食は二人分用意……すれば良いのだろうか?良く考えると『彼女』が食事をするかどうかだって自分には分からない。そもそもこんな現象に立ち会うことが初めてなのだから、それも無理ない話だとは思うが。
 とりあえず『彼女』を起こそうと決め、杏里は振り向いた。
 けれども……そんな考えもどうやら意味が無かったようで、『彼女』は眠そうに目を擦りながらも既に起き上がっていた。
「…変ね…?何だか妙な気分…」
「それは…妙な気分だと思うよ……?」
 寝起きで寝ぼけているのか妙なリアクションをとる『彼女』に、杏里は思わず苦笑した。
 それから、まだ少し自身の置かれている状況が分かっていない『彼女』に、言う。

 
「おはよう…罪歌」
 
 
 それは、何の麺哲もないとある月曜日のことだった。






そんな感じでこのシリーズは始まるのです。
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