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このあいだupした『花送』の裏話です。



「……」
 見上げれば、母国から遠く離れた地でありながら、かつて日本で良く見たような光景が瞳に映った。舞い散る薄桃色が青い空に映え、軽く目を細める。
 こちらに活動の拠点を移してからどれくらい時間がたったのだろう。一年か、二年か。そんなものではないことくらい、理解しているけれど。なんといっても自分の事だ。しかし、ハッキリとした事は覚えていない。興味が無いから覚えていない。
 自分がここに居る。
 把握しておけばいいのはその程度の事。
 だが、それでも。
「おいテメェ!それは十代目のだっつってんだろーが!」
「ま…まぁまぁ、落ち着いてよ獄寺君」
「そうですよ獄寺隼人。まだまだ沢山あるんですから」
「…確かに沢山あるけど…何で貴方がここにいるんですか…?」
「みんな仲良しだよなー」
「………………………帰りてぇ…」
「何?疲れたの?もう?やっぱ年じゃない?…あ、それ王子が予約ー!」
「知らないよ、早い者勝ち。ねぇ、ところで余った分は持って帰ってもいいの?」
 …何でこんなどんちゃん騒ぎの中に自分が居るのだろうと、思う事は思うわけで。
 持っていた湯飲みにヒビが入るくらい手に力を込めつつ、雲雀恭弥は精神的な限界がやって来る足音を聞いていた。
 この状況……仮に罰ゲームだと言うなら信じよう。拷問だといっても受け入れるかもしれない。褒美だと言うのならば百億倍にして返してやろう、自分が納得できる方法で。
 だが、一番正しい表現は『試練』なのであった。
 この花見に呼ばれ、断らずにこちらに来たのは他でもなくリボーンとの『取引』があったからである。
 曰く、宴会が終わるまで耐え切ったら相手をしてくれる、ということで。
 最近は弱い相手との戦闘ばかりで、丁度、骨がある相手との戦いに飢えていた雲雀が即に提案を受け入れたのは当然の結果だった。
 結果として今に至るのである。
 最初は…耐え切れると思っていた。不本意ながら何度も半ば強制的に巻き込まれ続け、これでも多少は耐性がついてきているのだ。
 そしてそれは、正しかった……最初、は。
 つまり、現在は。
「……」
 このままでは本気で湯飲みが割れかねないと、それで怪我をしたら馬鹿馬鹿しいと手に持っていたそれをシートの下に置いて、目の前に繰り広げられている光景に目をやる。桜を見るのも選択肢の一つだが、今それを見ていると苛立ちしか生まれないので、だめ。
 もっとも、目の前の光景を見ている事だって、そんなに良い選択肢ではないのだ。
 獄寺隼人がいつものように騒ぎ立て、それを沢田綱吉が抑えようとして、山本武が状況とそぐわない態度を示して。良く分からない牛がいたりするがこれはどうでも良い。それから、ぐったりとしているスクアーロに、我関せずで食事を続けるベルフェゴールに、がめつい事を言っているマーモン。
 付け加えて。
 あの……ナッポー頭。
 本当になんで居るのだと、最初はクローム髑髏だった筈ではないのかと、雲雀としてはまるで詐欺にあったような気分だった。彼女だったらまだ、このあとに待つ楽しい楽しい戦闘の時間を考える事で乗り切れそうな気がしていたのだ。
 なのに突然やってきたあの南国植物。
 これであの南国植物を滅せずしてどうしろというのだろう。
 だいたい、あの南国植物と桜の組み合わせには良い思い出と言うものが全く無いのだ。彼に初めて敗北した時の記憶は未だに鮮明だし、そもそも忘れる気も無い。こうなると、懐かしく思えていた桜の風景が忌々しい物になってくる。
「いやぁ、まさかでしたけどー、師匠ここまでして花見に参加したがっているとは思ってませんでしたー」
「…あぁ、そういえばあの南国植物の今回の長期任務は君が、」
「はい、裏で手を引いてましたー」
 フランとか言う南国植物の弟子はうんうんと頷いた。
「だって師匠がいたら安心してお花見なんて出来ませんしー。ていうか堕王子だけじゃなくて師匠の顔見て食べ物食べるって言う選択肢が既に無かったんでー」
「その点は酷く同意させてもらうよ」
 チャッ、とトンファーを構えつつ雲雀は答えた。
 もう……良いやと、思ったのである。
 リボーンとの戦いは諦めよう。楽しみだったけど、諦めよう。
 まずは南国植物を叩き潰す。
「お前らよくそんな……っ」
「あれ、スクどうし……」
「うわ…」
 自分の様子に気づいたらしい暗殺部隊三名は直ぐさま離脱の用意を始めた。それは、とても良い判断だろう。巻き添えなんて雲雀は気にする気が無い。
 ゆらりと立ち上がった雲雀は、そのまま地を蹴った。
 トンファーが六道骸の頭蓋を打つまで後、三秒。





※題名の意味

花送=かそう=花葬

読みが一緒なんです。
ただそれだけの意味。
でも言わないと分かってもらえそうもないない微妙なこだわりです…。
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