式ワタリによる、好きな物を愛でるブログサイト。完全復活目指して頑張ります。
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あと一つで茶色お題も終了ですね。
19.偉そうに
ミッションであれ休暇であれ、マイスター四人で揃って地上に降りる事がしばしばある。
そんな時、どうしても世話係に自分からまわってしまうこの身を思うと、何だか苦笑が浮かんでしまうのは仕方がない事だろう。いくら最年長だとはいえ、残り三人も子供ではないのだから、世話なんて必要あるわけがない。
だからもう世話を焼くのを止めようと思う事もある。
しかし。
「…エクシア…」
「え?あぁ、うん、そうだねハレルヤ。でもそれは前回買ったから止めとこうよ」
「…宇宙に帰りたい……ヴェーダ…」
……これを見て、何もするなと言う方が酷だろう。
はぁ、とため息を吐いてロックオンは付いてくる残り三名をちらりと見やった。
まず宇宙を恋しがっている二名。彼らはそれぞれ、宇宙にあるエクシアとヴェーダを恋しがって憂愁の思いを抱いている。
そういえば、最後まで宇宙に残ろうと抵抗していたのはこの二人だった。地上に降りるのを最後まで渋っていたところを引きずって来たのだから、彼らに関しては世話……ではなく見張りが必要だろう。でないと気付かない内に勝手に帰りかねない。
それから一人事が長い約一名。あれはハレルヤと会話をしているのだと、自分たちは分かっているから良いけれど……何も知らない人が見たらとんでもなく怪しい光景ではある。地上には文句もなしに付いて来てくれた彼だけれど、二人とは別の意味で……やっぱり目は離せない。…ていうか前回何買った。
というわけで。
世話は要らないかもしれない。
…が、見張りは必要なのである。
……そっちの方が問題だけど。
はぁ、と二度目のため息を吐くと、アレルヤが不思議そうな表情でこちらを見た。
「…ロックオン?どうかしました?」
「ん?いや、何でもない」
彼の問いに軽く答えて、そういえば大丈夫だろうかと残り二名の方を見る。
そして後悔した。
「エクシアエクシアエクシアエクシアエクシアエクシア……」
「ヴェーダヴェーダヴェーダヴェーダヴェーダヴェーダ……」
二人とも同じようにどんよりとした空気をまとい、なおかつそれぞれの現在最も会いたい対象の名前を連呼していたのである。
思わず半歩引く。
「……怖」
「二人とも、本当に好きですよね、エクシアとヴェーダ」
「それだけ!?」
「え?っと…他に何かあるんでしょうか」
「…あぁ、まぁそうだろうな…」
「…?」
アレルヤのきょとんとした表情に対してさえ、途方もない脱力感を感じながら……ロックオンは改めて今一番の問題の二名を見た。
何を言っても無駄であろうそのオーラもさることながら、何度も何度も零されては無造作に漂いだされていく呟きの方が脅威だろう。言葉に力が在ると言う話を聞いた事があるが、今ならそれを素直に信じる事ができそうだ。確かに言葉に力はあった。断言しよう。
しかし、自分はその力をどうにかしなければならないのである。
無駄だと分かっていると言うのに、だ。
となれば。
「…ダメ元か」
とにかく言ってみる他に出来る事は無い。
どんなに無碍にされても仕方がないのだと、そう何度も自分に言い聞かせながら、歩み寄ってぽんと二人の肩に手を置く。
すると当然ながら刹那とティエリア、二人分の視線が突き刺さる。彼らからすると自分は、大好きすぎる存在から彼らをひきはがした張本人……いわば敵である。視線が痛いのは仕方がない話だった。
それでも言わなければ、と冷や汗をかきながら確認し、口を開く。
「お前ら、もうちょっと帰りたいにしても押さえてくれないか?」
決死の行動、だった。
対して二人は。
「黙れ、ロリコン」
「偉そうに何か言えると思うな、人攫い」
…冷たい視線と冷ややかな声で迎え打ってくるだけだった。
まぁそうなるよなぁ、と思いつつも、涙が出そうになる事こそ……仕方がない事だったのだろう。
人攫い=無理やり地上に連れてきたこと、です。
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