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再会からちょっと経った頃ですね。
「嫌な再会だねぇ、それ」
「言うな。他人に改めて言われると何とも言えない」
「あはは…それはそうだろうね。でも、決着が付かなかったのはせめてもの救い?」
「…違いない」
サンクキングダムの貸家にて。
宇宙から帰ってきたウイングに紅茶を出しながら、彼の話に耳を傾けるサンドロックは苦笑を浮かべるしかなかった。ヘビーアームズはあまりいつもと表情が変わっていないのだが、内心では苦く思っているに違いない。
折角の再会が、戦闘というのは。
ハッキリ言えば自分とヘビーアームズだって似たような物だったけれど、あの時はパイロットがそれぞれ正式なものであったし、直ぐに戦闘は止まって和解した。けれどもパイロットが方や正式、方や不正式となれば、互いに折り合う場所も和解できる箇所もあるわけがないのだった。
そうなれば戦うしか進んでしまう道はない。
「難儀な物だね、僕らって」
「今更だな」
「うん、その言葉は否定しない」
「出来ないの間違いじゃないのか」
「出来ないからしないんだよ。それに僕らがそういう存在である以上、もう仕方がないって諦めきってるしね」
この辺りの諦めの良さは、意外にもあの五人の老人たちの教育があってこそだとサンドロックの方では推測している。彼らは他の一切の事柄に関しては完全に飛び抜けきってしまった思考やらを自分たちに直伝しかけていたのだが、そういう『この存在との折り合い』という事柄に関しては完全に真面目な態度を取ってくれた。
それが、けじめだとでも思ったのか。
だとしたら随分と律儀なマッドサイエンティストだけれど。
まぁ、それに付随してハッキングの仕方やらデータ破壊の方法、難解なプログラミングについて、機械を弄る手腕、道具を形作る素材等々……何だか普通に生きて行くには不要すぎる知識ももらっていたりするのだが。
「これは別に良いか…得になるだけだし」
「…?」
「あ、何でもないよ、ヘビーアームズ。ちょっと独り言」
零れた独り言に首を傾げる仲間に軽く答え、茶請けとして出していた菓子に手を伸ばす。ちなみにこれは市販の物ではなく、いつの間にやらリリーナ・ピースクラフトと仲良くなっていたヘビーアームズが彼女からもらってきた物、である。
…一体どこで親しくなったのだろう。ちょっと謎なのだが。
彼女と仲良くなるためというわけではないけれど、ちょっと学校に転入するのも楽しいかも知れない。戸籍がないのは当然だから、そこは偽の経歴でもでっち上げてしまえばいいのだし。そして退学するときはそのデータを完全に消してしまえばいい。
自分たちの顔写真なんて、完全に不必要だ。
しかしこの案は少し保留にしようと決め、改めて視線をウイングに向ける。
「で、こっちに戻ったって事は…また?」
「恐らく。何らかの作戦が地上で展開されるようだからな、どうせヒイロはそちらに行くだろうと推測した」
「本当に宇宙に地上に行ったり来たりだね…大変そう」
「何なら代わってやっても良いが」
「遠慮するよ。ね?」
「……」
「…いやまぁそうだが」
視線の中に「そもそも代われないじゃないか」という返答を込めた視線を向けられたからか、ウイングはため息を吐いた。
その様子をクスクスと笑いながら眺め、サンドロックは席を立ち、窓の方へと向かう。
そこから空を見上げればそれは青く、ふと視線を下に向ければ楽しそうに談笑している人々が瞳に映る。穏やかな時間が流れていると実感する。
これが平和。
ここに来てから幾度となく瞳に映した光景に、目を細める。
「僕らは…こういう世界を求めて戦っているんだよね」
「…サンドロック?」
「早く世界から戦いが消えればいいのに」
そうすれば人々はもっと明るい笑みを浮かべるようになるだろう。
そして傷つく人間も、減るだろう。
それこそが、欲しい世界。
そこまで思って、くるりと振り向いて微笑む。
「だってほら、そうしたらみんなで一緒にのんびりできるから」
「…それもそうか」
思うところがあったらしいウイングはどこか真剣な様子で頷き、ヘビーアームズは少しだけ笑みを浮かべて頷いた。どちらも肯定。
それが嬉しくて、心の底から笑った。
あともうちょっとでTV版はラストまで行けそうですか…いや、まだちょっと遠いかな…。
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