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拍手再録です。
~不思議な注文~
「あの……これ、で、本当によろしいのですか?」
「うんうん、全然オッケー」
「だよね…あ、でも、首元にもっとヒラヒラ付けてみるのも楽しいんじゃないかな」
「それ良いかも!」
目の前できゃいきゃいとわいわいと話している顧客二人を見ながら、私は改めて注文された服の、大まかなデザインについて思いをはせた。
どのようなものなのか、などと問われれば一言で答えることが出来る、それ。
まぁ、そういうわけなので一言で言ってしまうと。
とんでもなく、時代錯誤な代物だったのである。
このご時世……そんなものを着ていたらとにかく目立って仕方がない。パーティで着るのだというから、その目立ち方は幾分か押さえられるかもしれないけれども……というかそういう時以外に着ることが出来ないような物だけれど…やっぱり、そういう問題ではないと思う。市街を十二単を着て歩いているような物だろう。
そして、どうやら。
話を聞いていると、どうやら着るのはこの顧客二人ではないらしい。
思わず、え?という表情をすると、二人の内の片方、メガネをかけた紫の髪の青年がにこりと笑った。
「だからね、思いっきり凄いのにしてあげることにしたんだ」
「そう言うこと」
同意を示したのは、もう一人の柔らかな黄緑の髪の女性。
「私たちのは普通のスーツでお願いするわね。あ、私、色は白が良いんだけど」
「それなら僕は黒で。…そういえば他のみんなはどうするんだろ」
「さぁ?行くのは私たちだけじゃないの、パーティ」
「じゃあ、あの服着てる姿を写真撮ってみんなにも見せてあげようよ」
「賛成!」
…あぁ、つまりアレか。自分が着ないから好きなだけ変にしても構わないとか、そういうわけなのか。
どこまでも楽しげな二人の様子と、まるで中世ヨーロッパの貴族様の着る服である注文の品を見比べ、私はため息を吐いた。
(2010/05/06)
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