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描写100題もあと十個くらいです…。
090:音
ぎ、と扉が開く音がして、ラルはうっすらと目を開いた。
敵ではないだろう。この気配は知っている。
寝ていたソファーからゆっくりと身を起こし、扉の方に立っていたイーピンの姿を認める。彼女は、手に何らかの書類を持っていた。遣い、ということか。
「何か用か」
「あの、これ」
ちゃんと問いかけてやると、イーピンは近づいてきて案の定、書類を渡してきた。
それを受け取って、中身にざっと目を通す。何と言うことはない、常時連絡のような物だった。…まぁ、もっと重要な物なら別の運ばれ方もあるだろうが。少なくとも、紙のまま外に出されてということはないだろう。ケースとか何とか、そういう場合は入れ物が必ず存在するはずだ。
「すまないな」
「いいえ、これくらいはどうってことないです。…にしても」
ちら、と彼女は視線を扉の方に向けた。
「ちょっとだけ立て付けが悪くなってませんか?」
「あぁ……勢いだけの馬鹿どもがいるからな」
「馬鹿ども、ですか」
「その通りだ」
そしてその馬鹿どもは無駄に勢いよく扉を開けるのである。
全く…良い迷惑だ。ここは公共スペースだと何回言ったら分かるのか。
治らないような気が、しなくもないのだが。治る以前に苛々するのを止めてもらわなければ、とも思うのだけれど。
「その内綱吉がどうにかするだろう」
「それもそうですね」
最終的に述べた結論に異論はないようで、こくりと頷いたイーピンは、それから直ぐに失礼します、と言って部屋から出て行った。
再び一人になったラルは、書類を持ったまま再びソファーに寝ころんだ。
いつもならこんな事はしないが、そんな事も言っていられないほどに今は疲れているのである。
馬鹿たちの中にはコロネロも入っているのかもしれない。
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