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何度も言うようですが、女の子同士の話もいいですよね。
091:祈りを捧げても
失われた時は帰ってこない。
失われた人が帰ってこないように。
ざぁざぁと降る雨の中、ポツンとただ公園のブランコに座って。
ざぁざぁと。
いっそ、心の中もこんな音で満たされてしまえばいいのに。
そうすれば、考えなくて済む。
どんどんと、大切な、大切なみんながいなくなる事実から目をそらすことが出来る。
目を、逸らしたい。
けれども、それはイケナイコト。
だめなのだ。生き残った者はずっと彼らのことを忘れてはならない。何故なら、忘れてしまえば彼らの存在は露の如くに消えてしまう。それは、何よりも嫌。
…嫌なんてものではない
忌避すべき、事だ。
ざぁざぁと雨が降る。
雨は何物も流し去らず、何者も奪い去らない。
ただただ、降る。
降るだけの、雨。
使命も何もない、雨。
この後に雷でも落ちるだろうか。そうしたらもしかしたら嵐でも起こるかも知れない。過ぎ去れば晴れて、雲はいつも空に浮かぶ。霧は…流石に無理だけど。
でも、大空がいないとどうしようもない。
いなくなった、空。
青空。
「あ…イーピン……いた」
「…クローム?」
「……探した。…帰ろう?」
差し伸べられた手を取って、立ち上がる。
空を失った自分たちに、帰る場所は果たしてあるのか。
何をしても戻らないと、疑問に思いながら。
けれど、確かにここに、自分の居場所があると。彼女と繋いだ手を握って、決して次は奪われないように。
ぎゅっと。
十年後のお話。最終的には帰ってきてくれたけどね、大空。
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