晴れ時々歌の雨飲み会・現代編

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2024/12/12 (Thu)

飲み会・現代編

来神時代の飲み会の続編です。今度は成人後の飲み会。

「ねぇ新羅、アルコールに対する抵抗って、どんどん強くなる物だったっけ」

「うーん……違った様な気がするんだけど、どうだったかな……もう何か全然分からないよ。悪いけれどさ」

「……ま、そうなるよねぇ」

　くぴ、と缶ビールを飲むことで臨也はため息を殺した。

　全く、化け物化け物と言ってはいたけれど、何でそう言う無駄なところまで凄くなってしまうのだろうか、あの池袋最強は。

「学生時代の第一回飲み会が懐かしいよ……」

「そう言えばそんな事もしたね。僕は早々にリタイアしちゃったわけなんだけど……あの後、どんな感じになってたんだい？」

「君の後にすぐドタチンもつぶれちゃって、俺とシズちゃんだけになったんだよね」

　しかし現状を見てみると残念ながらそんな事は全く無く、静雄も門田も素面のまま杯を交わしてたりする。もちろん静雄の方は素面に見える酔いつぶれ……ではない。いたって普通の素面である。

　……何でこうなっちゃったんだろうかと、思わなくもない。

「でねぇ……あの時、実はシズちゃん一番最初に酔ってたらしくてさ」

「え、そうだったの？いや、僕はそこまで覚えてないけれど……あれ？でも一回も、静雄のそういう姿を見た事が無いよ？」

「そりゃそうだろうと思うよ……何か二回目から、そこそこ飲めるようになっちゃってたからさ。しかも三回、四回と上がっていくたびに免疫も上がっていくし」

「あぁ、その辺りは僕も分かってる」

「そう言ってくれて嬉しいよ。納得させる手間が省ける。ま……結果としてあぁなたった、ということなんだよね」

　そのお陰で、どうしても成せない事がある自分としては実に残念なことなのだけれど。

　まぁ……幸いと言うべきなのかは知らないが、五、六回目あたりから免疫がそれ以上になることはなかったようで、現在の彼の飲める酒の量は安定している。

　もっとも、それがこちらの助けになったことなど一度も無いのだが。

　……本当に、過去が懐かしい。

　過去は神だといつぞや言った事があった気がするけれど、全くもってその通りだ。憧れだとか羨ましさだとか、過去にはいろいろな素敵な物が詰まっている。きっと、タイムマシンが欲しいとか言い出す人間がいるのはそのせいなのだろう。

　かく言う自分も、多少そんな人々の気持ちが分かったりしているわけで。

　今度は殺す事も無く、ため息を外に出す。

「全くさぁ……そういう進化？みたいなことをするんなら先に言って欲しいよね」

「いや、たとえ自身の事だとしてもさ……静雄にだって、そんなことは分からないと思うんだけど」

「そんなの知らないよ」

「理不尽だねぇ。……やっぱりさ、臨也はセルティの事をもっと見習うべきだと思うよ。セルティはそんな理不尽な事を全くしないんだから。ま、たまに焦って理不尽な状況を作っちゃう事もあるけれど、それはセルティのせいじゃないし悪意も無いし仕方ないよね。それに何より焦ってる姿もとっても素敵なんだから、たとえそこでどれだけ酷い目にあったって全部チャラだよ！」

「運び屋の事を語りたいならドタチンでも捕まえて言い聞かせてなよ」

　耳を両手でふさぎながら答えると、不思議そうに新羅が目をぱちぱちと瞬かせた。

「あれ？静雄じゃなくって？」

「……間違った。シズちゃんでもドタチンでも捕まえて喋ってて」

「はいはい。じゃあそうさせてもらうよ」

　しょうがないなぁと言わんばかりに肩を竦めて答える新羅に、少しだけナイフを突き刺して脅してやろうかな、なんて思った。そんな事をしたら自分が非常に困る事になるので、結局やらないわけだけれども。

　どうせそんな事も考えて喋っているのだろうが、だとしたら本当に手ごわい相手だ。

「おい、ちょっとお前らこっち来い」

　と、不意に門田の声が聞こえて来て、そちらに顔を向ける。

　彼は、どうやら困っているようだった。困り切った表情で、静雄の肩を軽く揺らしている。そして、揺らされている方はと言うと……不思議そうな顔でこちらを見ていた。

　その表情に、まさか、という思いがよぎる。

　果たして。