式ワタリによる、好きな物を愛でるブログサイト。完全復活目指して頑張ります。
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とりあえず言えることは一つ。
ちゃんと動いてください。
「退屈だなぁ……」
呟いて、臨也は欠伸をした。
眠い。本当に眠い。多分、結末の分かってしまったドラマを見ている時と同じ気分。
ナイフはもう……手には無い。必要がないから、無い。
面倒なので、全部罪歌に任せる事にしたのだ。
そのせいで罪歌の『子』が増える事は分かっていた。愛する人間が人外に奪われていく事は少々どころでなく気に入らなかったが、静雄に人質を持って挑もうとする馬鹿者たちにはそのくらいの末路が丁度いいだろう。
だから、彼女が日本刀を振りまわしている事を、自分は黙認する事にした。
勿論……手は出さないしそろそろ飽きてきたけれど、観察はつづけている。もしかしたら未だに『愛している人間』のままでいてくれる誰かが、それはそれは面白い、自分の予測をはるかに超えるような行動を起こしてくれるかもしれないから。
九割くらい無いだろうな、と思いながら、壁に背を預けて、眺める。
「ひ…いぃぃぃぃぃぃぃぃ!」
「たっ…助っ……!」
耳障りな雑音が素通りしていくのを感じながら、眺める。
「逃げないで!私は貴方たちを愛したいだけなの!」
不快な声を耳が捉えるのを不愉快に思いながら、眺める。
眺めて眺めて眺めて……完全に飽きた。
「やっぱり結末が分かってたらそうなるよな…」
背を壁から話して、足元に転がっている怯えの表情を浮かべたチンピラを見やる。
彼が、自分たちに襲撃について教えてくれた裏切り者だった。二人組だったのだけれど、片方は普通に気絶してしまったから彼を使った。恐怖に怯える彼は、それはもう頼みを快く聞いてくれて、この場所を教えてくれた上に招待までしてくれた…
親切な愚者、だった。
「ねぇ、」
何気なく一言書けるだけで、彼の肩が勢いよく跳ねた。
まだ怖いのだろうか?……彼を脅していた日本刀は、向こうにあるのに。
どこまでも怖がりな『人間』という存在に愛おしさを覚えつつ、それ程興味も無く愛しいとも思わない愚者の頭を蹴りつけて、倒れたところを踏みつける。顔面では受け答えが難しくなるだろうから、胸辺りを。
俺って優しいなぁ、なんて思いながら、愚者を見下ろす。
「ちょっと訊きたいんだけど」
「ひ…ぃ…」
「あのさぁ」
ガタガタという震えを靴の裏から間接的に感じながら、臨也は言った。
「俺に始末されるのとナマクラ刀にやられるの、どっちが良い?」
「……ひっ!」
「あぁ、これだけの情報じゃあ答えられないよね?具体的に言ってあげると、アレに任せた場合はアンタは人でありながら人でない、アレの奴隷になっちゃうわけだね。俺だったらそうだなぁ……ちょっと嫌な情報が流れるだけかな。大丈夫、社会的に死ぬだけだから」
命だけは取らないよ。
そう言って微笑んでやったら、さらにいっそう震えが酷くなった。
どうしてなのかは分かり切っていたので、さらに笑みを深めて、促す。
「で、どっちが良い?」
「……ア…アンタは…」
けれど、返って来たのは答えではなかった。
「何で……邪魔すんだよ!」
「何で、って?」
「アンタは平和島静雄が嫌いじゃなかったのかよ!」
愚者はヤケクソのように、そう叫んだ。
彼のそんな態度に目を少しだけ見開いて……先ほどとは違う笑みを、臨也は浮かべた。
多分、嘲笑。
「嫌いだよ?大嫌いだ。そのくらい知ってるだろ?」
「じゃ…じゃあ」
「でも、さ」
彼の言葉を遮って、口を開く。
「それ以上に暇なんだよね、今」
「え…?」
「ま、どうせ成功するわけも無いし?だったら暇つぶしに俺たちが邪魔しちゃっても良いよね。結末は同じなんだから。それに、折角今楽しい所なのに、シズちゃん襲撃でそれを邪魔されるのも嫌だったし。まぁ、……というわけで、」
「……ぁ」
感情の指針が降り切れたのか、恐怖を超え、救いを求めるように見上げてくる彼に静かに笑いかける。嘲りはもはや影すら存在しないだろう。
「死んでね?」
その言葉に絶望に染まった彼の表情は見苦しく。
無表情に見下しているところで、ふと、悲鳴が消えている事に気付いた。
最後の「死んでね?」=社会的にですよ。社会的にですからね。
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