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途美設定で女子。フェルト、クリスティナ、マリナ様。
19.甘い香り
クリスティナの傍に立つフェルトの手の中にある物を見て、マリナは思わず首を傾げた。
「……花束?」
しかも、見た所とてつもなく立派な物。
そんな物が一体どうして今日は学校であったはずの彼女の手の中にあって、寮の方にそれが持って来られているのだろう。
顔中に疑問符を浮かべていただろうマリナに、呆れ交じりに最初に答えを与えたのはクリスティナの方だった。
「花束ね……学園所有者さんがもらったらしいんだけどさ、要らないからってフェルトの所に置いて行っちゃったらしいのよ」
「それで……私じゃどうしようもないから、寮に置こうと思って持って来たんですけど」
フェルトは言って、くるりと頭を巡らせた。
「……どこかに置けませんか?」
「少し……難しいと思うわ」
若干困りながらも、はっきりとそう答える。
実際、花瓶をこの寮に置くと言うのは難しい。基本的には寮の中で暴れたりしないメンバーが寮生になっているけれど、そのメンバーが個性派ぞろい過ぎるせいで、何週間かに何度かの頻度で厄介事が起こったりする。
普通の小競り合いで済めばいいのだけれど、それがたまに大事件に発展してしまうから本当に油断ならない。
その際の戦場の様な光景を思い出しつつ、フェルトの傍に立つクリスティナに尋ねた。
「食堂には置けないんですか?」
寮の一部であるが、食堂はけれどもこちらとは別空間だと自分は思っていた。クリスティナの努力のたまものか、それとも食事を抜かれるか否かが寮生にとって死活問題だからかなのか……多分両方なのだろうが、寮であったら絶対に騒動が起こる様な困った事態があったとしても、食堂ではそれがそこまで発展する事が少ないのである。これはある意味奇跡だと思う。
だから玄関や部屋の前の廊下などに置くよりは、随分安全だろうと思ったのだけれど。
しかし食堂を預かり持つ彼女は、残念そうに息を吐いた。
「それは私も考えたんだけど……もう、小さめの植物をテーブル全部に一個ずつ、置いちゃってるからさ。一つだけ大きいのって言うのも何かねぇ……」
「あ……それもそうですね」
「じゃあさ、マリナの部屋はどうなの?」
「私の部屋ですか?」
「そうそう。マリナは寮生でしょ?部屋広いし、置く場所ってあるんじゃない?」
「私は良いんですけれど……相方がいるから無理だと思います」
「相方?」
「同室の人、ですか?」
「えぇ。ティエリア、こういう香りの強いの好きじゃないでしょう、きっと」
むしろ要らないとか言ってぽいと捨てかねない気がする。
今は学校の方で生徒会の仕事でもしているのであろう同級生の事を思いながら、香りが強く無くても断るんでしょうね……なんて思っていると。
「あ、ティエリアなら大丈夫だよ」
いとも簡単にそう断定したのは、クリスティナだった。
え?とマリナとフェルトの二人で共に彼女の方に顔を向けると、彼女はあっさりと断定の根拠を口にした。
「だってこれ、学園所有者さんのもらって来たものだもん」
「えっと、それって……」
まだ分からないらしいフェルトの言葉の後を継ぐように、自分も口を開く。
「……つまり、ヴェーダの作りだした厄介事を、彼が放っておけるわけがない、と?」
「その通り。ってことで、マリナが大丈夫なら問題ないの。どうする?」
「お願いします」
ティエリアには大変申し訳ないが、やっぱり花は欲しい。
即答すると、クリスティナは楽しそうに笑った。
「了解了解。えっと、じゃあ花瓶用意しないとね。ガラスののと金属のがあったっけな……うん、後で用意したの見て選んでね」
「ありがとうございます。……あ、出来れば二つくらい、お願いしたいんですけど」
「花の量からまぁ、そのくらいは要るかもだけど……どうして?」
「ティエリアに半分押しつけますから。机の上にどんっ、て置いとくんです」
「あ、それ良いかも!」
「……良い?」
「良いのよ、フェルト」
ニコリと笑ってマリナは言った。
「そっちの方が面白そうでしょう?」
ティエリア、ファイトー。負けないでね、本当に。
ティエリア、ファイトー。負けないでね、本当に。
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