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雰囲気小説……。臨也と静雄のお話。



「花が何で枯れるのか知ってる?」
 臨也の問答はいつも唐突だ。
 そんな、前振りが無い、というよりも空気を敢えて読まないような彼の言葉に答えてやる道理など当然ながら存在せず、静雄は沈黙の中に怒気をさらに含ませて、そのまま持っていた道路標識を仇敵めがけて振りまわした。
 横殴りのそれをいともあっさりとかわし、楽しそうに臨也は笑う。
「ちょっとくらい話に付き合ってくれても良いじゃん。別に喧嘩中だからってさ、会話しちゃいけないわけでもないんだしさぁ」
「煩ぇ!手前と話す事なんて一つもねぇよ!」
「つれないなぁ……残念」
 静雄が叫び返すと、臨也は笑みを絶やす事無く肩を竦めた。
「じゃあ、勝手に俺が語るから。シズちゃんは聞いてるだけでも良いよ」
「ざっけんな!黙れ!」
「シズちゃんの言葉なんて知らなーい」
 クスクスという臨也の笑い声は、ひたすらに静雄を挑発する役割しか果たさない。そもそも存在そのものが気に触る相手なのだ、笑い声なんて聞きたいと思う様なものではないだろう。笑うと言う事はつまり、何か楽しい事があったと言う事なのだから。
 もっとも臨也に関してはそう全て言いきれるものでもないのだが、少なくとも今回は愉快さゆえに笑っているのだと、静雄は何となく、根拠もなく想像できた。
 だから、早く黙らせようと武器を振るい続ける。
「……花はねぇ、枯れることで永遠の美を手に入れるんだ」
 紙一重でかわしながら、仇敵は謳い上げるように言う。
「枯れる花を目の前にして初めて、人は心に花の美しさを刻むようになる。その美しさを忘れたくないから、忘れまいとしてね。一方、永遠に咲き続ける花はどうだろう?確かにそれは美しいかもしれない。けれども、人はそんなものを心の中に住まわせないよ」
 道路標識の『止まれ』の部分を踏み台に、飛び上がった臨也はブロック塀の上に立った。それは随分と高い塀で、そんな場所に立たれれば自然、彼に静雄は見下ろされる事になる。
 不快さが、増す。
 先ほど以上の忌々しさに彩られる静雄の表情を前にして、臨也は両手を大きく広げた。
「何故か?簡単だよ!いつでも見れるからさ。心に刻んで永遠にする必要もなく、そこに行けばいつでも見れる。そしてその時、永遠は刹那になる。だって、目の前にある時以外は誰の心の中にも存在しない、あって無いような物になってしまうんだから」
「つまり手前は何が言いてぇ?」
「うぅん、別に言いたい事何て無いんだけど」
 首を振った臨也の口元が、今までの比にならないほどに歪む。
「ま、とりあえず。シズちゃん、俺に殺されといてくれない?」






なんか色々含んでるような含んでいないような話に。
解釈はお好きに!
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