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出会い編。
初めて出会ったのは、ありがちな話だけれど学校の屋上。
授業に出るのが何だか億劫で、屋上で時間を潰して…つまりサボってしまおうと思って、そこに足を踏み入れたのが始まり。
そこに先客がいたのが、全ての始まりだった。
ドアを開いて最初に見えたそれが何だか分からなかった。
けれども相手には自分の事がよくよく認識できていたらしい。何気ないような確認の視線が向けられたのだが、その瞳にある光に思わず身がすくんだ。
その目はまるで野生の獣のようで、少なくとも自分とは相容れないだろうと思わせる物だった。住んでいる世界は同じなのかも知れないけれど、存在している舞台がまるっきり違う、そんな目。
そして、その目を持っている人物が問題だった。そこに、ようやく思考がいたる。
この学校にいる生徒なら独り残らず知っているだろうその名前を、まさかこうやって実際の存在と結びつけることになるなんて、思いもしていなかったけれど。
彼の名前はスペルビ・スクアーロ。
正直、あまり関わりたくない相手。
だから慌ててドアを閉めて、今この瞬間を無かったことにしようと思い、が。
「待て」
ディーノは、不意にかけられた声に手を止めた。自分から彼の言葉を自らの意志で受けて止めようと思ったのではなく、言われたからつい止めてしまった感じ。相手の言いなりになって止まった状態。
今すぐにでも逃げたかったのだけれど、しかし、それをするには相手の気配に呑まれてしまっていたために無理になっていて。
一体何を言われるのだろうか。勝手に屋上に入ってきたことで怒られるのか。それだけで済むのならば良いけれど、危害を加えられたりするのだろうか。
びくびくとしながら次の言葉を待っていたディーノに、かけられた言葉は良い意味で見事に期待を裏切った。
「屋上、使うんだったら伝えば良いだろぉが」
「…え?」
「…ん゛だよその顔」
ぽかんとした表情を浮かべた自分をどこか面倒そうに見やり、銀色は、ふいと視線を空に戻した。先ほど、自分が入ってくる前もずっとそうやって空を眺めていたのだろう。そう思わせるように。
その動きにつられるようにディーノも空を見上げた。
青い青い空。
雲は、あまりない。
「…空、好きなのか?」
その言葉は、いともあっさりと口から出た。
先ほどの恐怖がまるで嘘のようにあっさりと。
「別に。ただ暇を潰してるだけだぁ」
対して、スクアーロもあっさりと答えた。
「見てて、悪い気はしねぇしな」
「ふぅん…けど、今日は本当に青い空だな…泳げそう?」
「無茶言うなぁ、へなちょこ」
「…あれ?」
普通に会話できていることはさておいて、ディーノははてと首を傾げた。
「何でお前が俺をへなちょこ呼びしてんだ?」
「有名だろ。つーかテメェは名前で呼べるほどの価値があるように思えねぇし」
「酷くない!?」
「ならとっとと見返せるくらい強くなれぇ」
「…う」
「それが出来てから何とでも言え」
「……仰るとおりです」
見事すぎてぐぅの音も出ない。
とほほと肩を落とし、改めて現状を見てみるととんでもない状況だというのがいい加減、理解できるようになってきた。だって、あの鮫と、こうやって一緒にこうやって話している、というのが信じられない。彼を、自分は獰猛すぎててにおえない相手としか見ていなかったから、本当に。
実際はそれだけではなくて、どうやら危害を加える気もなく、危害を加えようともしていない相手に対しては何もしない人物だという事らしい。こんな当たり前なこと、と言われそうな認識だけれど、今の今まで彼と話しても関わってもいなかった自分からすると充分すぎる新しい認識だ。
ちょっと、面白いかも知れない。
好奇心が、芽生えた。
「なぁ、スクアーロっていつもここにいるの?」
「いつもじゃねぇな…何もすることが無くて暇なとき、ってとこだぁ」
「そ?じゃあ、またお邪魔しても良い?」
「俺に訊く必要ねぇだろーが。屋上は俺のもんじゃねぇ」
その言葉に。
一瞬虚を突かれてディーノは黙ったが、直ぐに表情を笑みに変えて口を開いた。
「本当に、そうだよな」
こういう仲良しになり方。
とりあえず、近づいて行くのはディーノだろうなぁ、とか。
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