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同ネタ多数だと思われる。
見渡せば、瞳に映る物など何一つとして無かった。
ビルも、道も、車も、木も、人も、何も無いまっさらな場所。ふと視線を後ろに向ければ、自分が出てきたはずの場所も消えていた。元からそんなものは無かったのだと言わんばかりに、忽然と。
色さえ見つからないその景色は白く透明に黒く鮮やかに目の前に広がっていて、妙な現実感と不思議な夢心地を見る者に与えていた。もっとも、見る者というのは自分の他には誰もいないようなのだが。
有り得ない世界の中、何なのか自分でも分からない衝動に背中を押され、足を踏み出す。
とん、とも、さく、とも、じゃり、とも、かつん、とも響かない足音と共に、聞こえない心臓音と感じながら進む。
真っ平らなだけの平面を理由も分からず歩いた。
いくら経っても疲れは感じない。いや、時間が経っているかどうかさえ、そもそも把握できていない。温度の高低も定かではないし、空を見上げれば何も無いのだが何かがあると言う事だけは認識できた。
ここはどこなのだろう。今更ながらに思う。
夢の中なのか、現の中なのか。せめてそれだけでも知る事が出来たら良いと思った。しかし、そんな知識は不要だとも思った。どちらにしたって変わる事は一つもないと直感的に悟っていた。
汗もかかないままに歩き続け、ふと、足を止める。
一体何で、自分は歩いているのだろう。
始めから理由の無かった行為に疑問を覚え、動かすのを止めた足を見る。
足は靴を履かされていた。これはなくならないのだろうかと眺めていると、靴は、何故だか消えないままだった。
その事に対して何も感じず、何も無い世界の空気を肺に招き入れる。
麻薬の様な無味無臭の単なる空気の味を確かめながら、静かに目を閉じる。
ここには何も無かった。ビルも、道も、車も、木も、人も、面倒な事も、苛立たしい事も、厄介なことも、つまらない事も、嬉しい事も、楽しい事も、優しい人も、温かな思いも、手放したくない物も、壊したくないモノも、何も無かった。
ここなら、怖い事は一つもない。
だとしたらやっぱりこれは夢なんだろうと思いながら、うっすらと目を開けて、薄く笑う。
あぁ、お前はこんなところに来てまで邪魔をするのか。
思わず零した声にもならない言葉を受けて、まっさらな世界に現れた歪な『シミ』は銀色の輝きを構えた。尖った切っ先はぴたりと、こちらの心臓に向けられている。
猫の笑みを浮かべ不機嫌そうに眼を細めるそれを前にして、自分は。
音無き世界の中、唸りにも似た咆哮をあげた。
シズちゃんが心の底から安心して暮らせる場所ってこういうところなのだろうかとか。リッパーナイト後だったら、少しくらい違う気がするけど。
で、それを邪魔しにくる素敵で無敵な情報屋。とにかく彼は邪魔しに来ると思うんですが。
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