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子供超兵の話第二段です。
14.王様
僕の世界には神様がいる。
そして、僕の世界には神様に勝てそうな人もいる。
『つーか実践やって何の意味があんだかねぇ』
「うーん……成果を見たいんじゃないのかな」
『それで成果が死んじまったら意味ねぇだろ』
「死んじゃったらって……そう気軽に言うもの?」
『気軽に言いたくもなんだろうよ。こんだけ廃棄されてるの見たらな』
廃棄されている物を見ても見なくても気軽に言うに違いないのに、まるでそうなったのが環境のせいだと言わんばかりに言葉を口にする片割れに、僕はため息を吐いた。
これが『彼』であり、また『僕が望んだカタチ』である事はきっと、間違い無いのだろうけれども、だからこそ、僕は彼のそういう所が分からない。何で気楽に死なんて口にできるのか、僕には分からない。そう言ったら、甘い、と呟かれたけれども、そのままでも良いと彼は言った。だから多分、このままでも良いのだろう。
それでもやっぱり理解したいと思うのは、彼が僕の片割れだからに違いない。
彼はやはり僕自身だから。僕は彼と共に在り、彼が僕と共に在るから。
こう言えばきっと彼は呆れるのだろうと思っていると、片割れがふいに言った。
『まぁ、良かったじゃねぇか』
「……?何が良かったのさ?」
『今回がお前じゃなかった事』
「……っ」
心を見透かされたかのような言葉に、僕は唇をかんだ。見透かされるまでもなく見通されているのは分かっているが、それにしたってその言葉だけは言って欲しくなかった。自分でも理解している程に汚らしいそれが言葉の形を取って外に出るのを見るだけでも何だか、胸がむかむかする。吐き気に襲われる。つまり、気分が一気に急降下するのだ。
片割れはそれを知っている。僕の心を見通せるのだから当然の事ではあるけれど、彼は、知っていて、その上でこう言った事を口にする。僕が僕の本心から逃げないようにしているのだと、気付いたのは一体いつの事だっただろう。
だから僕は、彼の言葉から逃げてはいけない。
僕は気持ち悪さを抑え込むように胸を抑えた。
「……あぁ、そうだね。そうだよ。僕はそう思ってる」
『分かってんなら良い。責めてるわけでもねぇし、世間話として流しとけ。……つってもまぁ、始めっから分かってるって、分かってたけどな』
「分かってて言うんだね……」
『まーな。こんくらいがお前にゃ丁度良いだろ』
「あとね、」
『ん?』
「これは絶対に世間話って言わないから」
『こんな場所にいたら、世間話もこんな風になっちまうんだよ』
仕方ねぇだろ、と片割れは続けた。きっと彼が目の前に存在する誰かだったら、今頃、僕は彼が盛大な欠伸をするのを見る事が出来たはずだ。
僕は、片割れが全てが状況のせいだと口にするのをとがめたりしない。彼は全部分かった上でこうやって喋っているのだ。もしも注意なんてしたら、開き直るように軽い謝罪を僕に与えるだけなのだろうと思う。
やっぱり僕は片割れにだけは勝てない。絶対に。
「ハレルヤはさぁ、」
『……んだよ。説教か?』
「違う違う。ハレルヤはさ、本当にすごいよね」
『は?』
「だってそうじゃないか。全部分かってて、全部見通してるんだもの。僕はきっとずっと君には勝てないんだろうなぁって、思ったんだよ」
『当たり前じゃねぇか』
つまらなさそうに、しかしその中に別の感情を混ぜ込んだ声で、片割れは言う。
『お前が俺に勝てる日なんて一生来ねーよ。そもそも俺に勝てる奴が一人もいねぇだろ』
「マリーなら勝てるかもしれないよ」
『負ける気がしねぇな』
「まぁ、ハレルヤだもんね」
『ワケ分かんねぇ理由だな』
「でも納得出来るでしょ?」
笑うと、心の中から沈黙が返って来て、また笑った。
僕の世界の神様に勝てるかもしれない、たった一人の可能性。
きっと君は僕の世界の王様なんでしょう。
神様はマリー。王様はハレルヤ。そんな感じのアレルヤさん。
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