水曜日の物語 ⑤夕暮れ帰り道

あぁ、これが俗に言うシズデレというものなのでしょうか…。

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　結果として、二人が静雄と合流したのは夕刻、とある自動販売機の前で、だった。

　しかも発見したのではない。二人してぐったりと、ふらふらと力なく歩いていた所で、後ろからポンと気安く肩をたたかれたのであり……つまり、発見されたのは自分たちだったのである。

　ゆるゆると振り返った自分たちに、彼は少し驚いたような表情を浮かべた。

「疲れてんな」

「まぁね…俺本当に頑張ったんだよー」

「私も頑張ったわ……」

「…お疲れ」

　そう言って、彼は穏やかに微笑んだ。

　いつもいがみ合っている仲とは思えない位のその微笑みに、臨也は思わずぎゅーっと静雄を抱きしめていた。

「うん、俺本当に頑張ったんだよー」

「分かった分かった。褒めてやるから」

「私も頑張ったのよ、静雄」

　負けじと静雄の胴に腕をまわした罪歌は、ぎゅっと抱きつき彼を見上げた。

「私も褒めて」

「あぁ、褒めてやるよ」

　言って彼は、ポンポンと臨也の背を叩いて、グシャグシャと罪歌の髪をかき交ぜた。

　心地の良いテンポに何となく目を閉じていると、で？という彼の声が耳に届いた。

「何でお前らそんなに疲れてんだよ」

「えっとね、最初はシズちゃん襲撃計画を立ててるやつらを潰して、次に罪歌が来良高校に勝手に入り込んで、」

「その後、襲撃計画の人で私が愛し損ねた誰かが、今度は私たち相手にと人を集めて襲って来たのよ。倒したけれど、ちょっと腕が立つ人が多くて大変だったの」

「で、さらにその後にマイルとクルリに絡まれて」

「その後に狩沢という人と遊馬崎という人に絡まれたわ」

「…前半はともかく後半はマジでキツイなオイ。てーか…俺の襲撃計画？」

　首を傾げる静雄に、問題無いよと臨也は体を彼から離して手を振った。

「罪歌とか杏里ちゃんを人質にシズちゃんを襲おうっていう馬鹿がいて」

「まぁ、私たちが襲われても返り討つだけなんだけれど」

　胴から左腕に抱きつく対象を変えて、罪歌もこくりと頷いた。

　実際、別に自分たちが動かなくてもどうとでもなりそうな連中ではあった。多少腕が立つ人がいたと彼女は言ったけれど、それだって普通よりやや上と言うくらいであって、結局はチンピラと呼べるだけの存在ではあったのだし。

　正直……手を出した後に、意味無かったかななんて思ったくらいだったのだから。

　けれどやっぱりというか、静雄はそうは思わないわけで。

　ほんのちょっと表情を曇らせて、自由になっている右腕で頬をかいた。

「しかし…そりゃ悪かったな。俺のせいなんだろ？」

「いいえ。静雄のせいではなくて、彼らの頭が悪かったせいよ」

「そうだよ。シズちゃんが気に病む必要はないね。あぁ、でも、もしも申し訳ないと思うんなら……そうだね、そこの自販機で何か買って奢ってよ」

「…そんなんで良いのか？」

　疑わしげにこちらを見る彼に、少しだけ苦笑した。確かにいつもより優しい態度だけれど、抵抗なく何でも信じてもらえるほどではないらしい。まぁ、こんな内容を無条件で信じられても気持ち悪いので構わないし、そもそも……その程度で礼になるとも思っていないのだろう。

　けれど、とりあえず。

　そんな事を言ってくれるんなら、もう少し欲張ってやろうか。

「自販機で不満なら、今度シズちゃんの手料理食べさせて」

「……は？」

「あ、それは私も食べたいわ」

「罪歌！？」

「じゃあ明日の昼か夜に」

「えぇ。そうしてもらいましょう」

「…あー、もう仕方ねぇ…そんなに美味くねぇぞ？」

　罪歌も同意した所で諦めたらしい。

　呆れた様に息を吐く静雄に、臨也はとびっきりの笑顔を向けてやった。

「大丈夫！下手だったら下手だったらで弱み握れるしね！」

「は！？」

「つまりシズちゃんは料理を作ってくれるだけで、俺に対しての恩返しは出来るワケ」

「私だって、静雄に作ってもらえたらそれだけで十分だわ」

「………何だ？これ、怒るとこか？」

「いいや？安心する所だよ？」

「作ってくれるだけで私は嬉しいの」

「……まぁ、良いか。とっとと帰るぞ」

「はーい」

「分かったわ」

「…行くぞ」

　二人の答えが素直だったからか、静雄は静かに笑んだようだった。

 

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なんていうか、静雄さんが臨也と罪歌がいる状態になれつつあるっていう。