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名前が一個も出てこないけれども。臨也と静雄のお話です。イメージ的には来神時代。
ちょいシリアスめかも。
039:侵食
コイツの言葉は気持ちが悪い。
現在進行形で、しかも目の前で、良く分からない持論を展開している仇敵をぼんやりと見ながら。その言葉を聞き流しながら。そうやって気持ち悪さをやり過ごしながら、ぼんやりと思った。
コイツの言葉は気持ちが悪い。その理由は分かり切っている。コイツは他者を害しようと言葉を振るうから。自分が人を殴ったら人が壊れてしまうように、コイツが言葉を投げつければ人は壊れてしまうのだ。
コイツの言葉は、毒。
そして、もしかしたら、もしも『それだけ』でしかなかったのなら、ここまで気持ち悪いと思う事は無かったのかもしれない。
一番の問題は、コイツがそれを自分の意思で振りまいていることだろう。
無意識に、じゃないのだ。コイツは、意識して毒の潜んだその言葉たちを振りまいている。やろうと思えば毒の無い言葉を紡ぐこともできるハズのその唇で、いつもいつも他人を馬鹿にしたような慈しむような笑みを浮かべて、人々に毒を与える。
人は普通は気付けないから。気付けるほどコイツの事を知らないし、気付けるほど人を見抜く力を持っていないし、気付けるほど鋭い勘を持っていないから。だから、みんな引っかかって、みんな泣く事になってしまう。
あぁ、本当に。
気持ち悪い。
……そして、その思いが顔に出ていたのだろうか。
少し妙な表情を浮かべて、コイツは口を開いた。
「気持ち悪いよね、君って」
見下すような同情する様な、異種を見る様な同類を見る様な、嘲る様な救いたい様な、妙な表情を浮かべてコイツはそう言った。
どうしてそんな結論に至ったのかは知らない。知る気もない。だから尋ねない。
ただ、彼にとって自分が気持ち悪いであるという事実は理解して、薄く笑う。
なんだ、コイツと自分は同類なのか。共に気持ち悪い、嫌な存在なのか。
だとしたら自分がコイツを嫌う理由も自ずと分かるものである。
自分の同類なんて自分一人で十分なのだから。
手段がが暴力だろうと言葉だろうと、人が壊れるのは同じだよ、なんてお話でした。
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