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拍手再録です。
~1. 賭博好きのお姫さま~
それを見て素通りできないほどには彼女を気にかけていたらしい。
「……何をやっている、マリナ・イスマイール」
「あら、刹那。刹那も一緒にどうかしら」
だから声をかけてみたら、首だけ回して刹那を見て、数枚のトランプを手札に持ったアザディスタンの皇女はニコリと笑った。実に機嫌よさげな笑みである。
彼女のその表情を眺めやってから、刹那は、テーブルを挟んで彼女と相対している二代目ロックオンの方を見やった。
「ライル、これはどういうことだ」
「暇そうだったんでね、ちょっとカードゲームを教えてやったんだよ」
いつものように軽さを感じるライルの言葉たちの中に若干の焦りを感じて、刹那は少しだけ眉を寄せた。この状況で一体何に焦っているのだろうか。考えてみても今来たばかりの刹那には全く見当もつかない。
となれば、直に訊くくらいしか手は無く。
「何で焦っている?」
「いや……そのな……」
「多分、私がずっと勝ちっぱなしだからだと思うの」
言いにくそうに口ごもるライルとは対照的に、マリナがひどくあっさりと口を開いた。
その言葉に瞼をぱちくりと開閉させて、思わずもう一度訊き返す。
「……勝ちっぱなし?今日から始めたんじゃないのか」
「そうよ。今日教えてもらったの。でも何でかしら、さっきから回ってくるカードが良いのばかりで……あ、ロイヤルストレートフラッシュ」
「……マジかよ」
呻くライルと微笑みながら手札を晒すマリナの図。
いくらなんでもこれは無いだろうと思いながらも、何となくマリナ相手ならば有り得るんじゃないかと思えるから不思議な話である。
そして、別にその『不思議』に首を突っ込むつもりもなく。
カードゲームに興じる二人をもう一度見てから、刹那は踵を返してそのテーブルから離れた。
(2010/09/27)
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