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今さらな話ですが、六道さんち在住の雲雀くんは、何だか大人び過ぎている感じですよね。
そんな感じの雲雀と凪。六道さんち設定です。
071:風の行方
凪はまだ幼く、年相応の成長を見せていると思う。
思う、というのは、自分もまた幼いと言われてしまう年齢だから、本当にそうなのか判然としないからである。自分では客観的に物事が見れていると思っているけれども、もしかしたらこれは完全な主観の観測なのかもしれない。その辺りはもっと大人になって、もっと経験を積めば判別が付くようになるはずだ。
……と、そんな話はともかくとして。
「にいさん、かぜは、どこにいくの?」
年相応に育っている義妹は、そう言って絵本を抱きしめたまま首を傾げた。
その問いに雲雀は活字だらけの本から顔を上げて、不思議そうな顔をしている凪を見る。
随分と、難しい質問だ。どこにも行く気はないんじゃないのかとか、辿りつく場所はバラバラなんじゃないのかとか、そもそも辿りつける場所なんて無いのではないかとか、そんな風に思うが……それらの考えをそのまま彼女に伝えることは何となく、憚られた。
なぜなら彼女はまだ幼稚園児で、しかも年少なのである。今の内から夢の無い事を言って聞かせて妙に現実的すぎる子になってしまったら困ると言うか、嫌だ。だからと言って夢見がち過ぎる子供になってくれても、困るけれども。
数秒悩んだ後、雲雀は、この場は嘘を言って切り抜けることにした。
「風は、風の家に帰るんじゃないかな」
と言っても、全部が全部、嘘と言うわけではない。
自分は、風発生の原因だとか、風が無くなる理由だとか、そう言うったことを全く知らない。だから、もしかしたらそうである可能性だって、無きにしも非ずなのだ。一応、今この段階においてはの話だが。
その内もっと本を読んで行ったら知りえる知識ではあろうし、本当のことを知った時にでも、さりげなく、けれどもしっかりと、本当のことを教えてやっても遅くは無いだろう。
そして、風に関する本当の事も嘘の事も知らない義妹は、ぱちくりと瞬きをした。
「かぜにも、おうちがあるの?」
「あるかもしれない、というだけの話だよ。でも、」
今日の強い風を思い出しながら、言う。
「あんなに急いで帰るんだから、あってもおかしくないとは思わない?」
兄妹は仲良し、なのです。
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