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というわけで、ハロウィンネタ。遅いよとか言わないで…。
来神時代の臨也と静雄です。
来神時代の臨也と静雄です。
「ねーねー、シズちゃん、今日が何の日か知ってる?」
「……?」
楽しげに話しかけてきた臨也に、静雄は首を傾げて見せた。
何の日……と言われても困る。今日は平日で、学校がある、何でも無い普通の日なのだ。そんな日に『何の日』と言われても答えようがない。
訝しげなこちらの視線に気付いたのだろう、彼は、クスリと笑った。
「分かんない?じゃあヒントあげるね。子供が幸せになれる日だよ」
「……手前の命日か?」
「……それは子供じゃなくてシズちゃんが幸せになれる日でしょ」
そう言って呆れた表情を浮かべた臨也は、ため息を吐いた後に続けて言った。
「今日はハロウィンだよ」
「ハロウィン……?」
その言葉に、少しだけ眉を寄せる。
……そういえば、このあいだ、幽がハロウィン限定の菓子を買って来ていた気がする。曰く、スーパーにふらりと寄ったら偶然見つけて何となく買った、ということで。まぁ、そういうこともあるだろうと軽くその出来事は受け流していたのだが。
成程、今日だったのか。
ということは、今日は十月の一番最後の日、ということになるのだろう。
実感がわかないと、少し唸る。昔……というか中学生の頃は、十月が終わるとか、十一月が始まるとか、そういった事に気付いていたはずなのに、高校生になってから季節や月日の流れがいまいち掴めなくなっている気がした。
何故かなんて、考える必要もない。
日常が、全然変わらないから。
日常を、振り返る暇が無いから。
それが、理由。
つまりそれは、喧嘩を毎日のように行なっているという事。喧嘩ばかりの変わり映えの無い毎日で、喧嘩で忙しくて日々を振り返る余裕もない。その事実に、思わず小さく自嘲の笑みを浮かべる。変わりたいという気持ちも、誰も傷つけたくないという思いも、何も変わっていないはずなのに、何でこうも世界と言うのは上手く言ってくれないのだろう。
憂鬱さに傾いて行く心に気付いて慌てて首を振り、鬱々とした気持ちを払ってから、静雄は仇敵の方を改めて向いた。
「で、それが何だ?」
「trick or treat」
そして、にこりと笑って彼が言った言葉に、盛大に顔を顰めた。
コイツは本当に、何を言い出すのだろうか。
僅かに脱力しながら、ストローのささったイチゴ牛乳の紙パックを左手で取る。
「菓子なんてねぇぞ」
「じゃあ悪戯させてくれるんだ?」
「いや、代わりに全力のパンチくれてやる」
何も持っていない右手で拳を作って見せてやると、彼はムスッとした表情を浮かべた。
「……ねぇ、菓子と悪戯どこ行ったの」
「菓子は元からねぇっつってんだろ」
「悪戯は?」
「手前の悪戯なんてロクなもんがなさそうだから普通に嫌だ」
「……やれやれ、俺も信用ないなぁ」
「当然だろうが」
お手上げだと言わんばかりに肩を竦めて嘆いて見せる臨也にそう言い放った後。
ふっと、思いついたことがあって、静雄は飲もうと思っていたイチゴ牛乳の紙パックを、口も付けないまま机の上に戻した。
「……ノミ蟲」
「んー?何?」
「トリック・オア・トリート、だ」
「……わお」
自分がその言葉を言うとは思っていなかったのか、臨也が虚をつかれた表情を浮かべる。
その表情を見れただけでも十分満足だったのだが『菓子か悪戯か』と問いかけている以上、その答えはもらっておこうと、静雄はじぃと仇敵の方を見た。
やれやれ、と、こちらからの視線に気づいたらしい彼は苦笑を浮かべ、ポケットに手を突っ込んで、そこから袋に入っている飴玉を一つ取り出した。
それをポトリと紙パックの傍に落として、彼は苦笑では無い笑みを浮かべる。
「はい、トリートの方」
「……っち」
「ち、とか言わないの。菓子がもらえたんだから良いでしょ別に。俺なんて何ももらえなかった上に悪戯もさせてもらえないんだからさ」
「一発殴ってやるって言ってんだろうが」
「それもらったら俺、普通に死ぬから遠慮しとくね」
「なら死ね」
もらってしまった飴玉を袋から取り出し口に放り込みながら言うと、彼は一瞬目を見張る様子を見せて、それから、うっすらと笑って口を開いた。
「そんなの、嫌だよ」
飴玉の味がかぼちゃとかだったらある意味完璧かもしれない。
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