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そういえば今日って臨也の誕生日だよね、という事で、そこそこ急いで書き上げました。何とか日付が変わる前にup出来そうで少しホッとしていたり。
というわけで、言わずもがな、誕生日の臨也の話。波江さんもいるよ。
というわけで、言わずもがな、誕生日の臨也の話。波江さんもいるよ。
彼の話は、いつも唐突に始まる。
「そういえばさ、波江さん、知ってる?」
「何を?」
「俺の誕生日が今日だってこと」
「……知らなかったわ」
ぱたん、と。
音を立ててファイルを閉じた波江は、雇い主の方へ視線を向けた。
臨也は、いつもの椅子に座ってパソコンのディスプレイを眺めていた。毎度の様にチャットに興じている……のかと思ったが、そうであったとしたら手の置き場所がおかしい。
両手で頬杖をついている情報屋を見ながら、ファイルを元あった場所へ戻す。
「それで、一体何のつもり?」
「ん?」
「そんな事を私に伝えてどうしたいのかしら。祝って欲しい、とか言わないでよ」
「出来れば祝って欲しかったけど、その辺りは期待してなかったから別に良いかな。じゃあ何で話したかと言えば、それは俺の誕生日にまつわる話をしたくなったからだ」
「……どうでもいいわね」
「だろうね。君ならそう言うと思った」
なら言うな。
心の底からそう思ったが、けれども、それを口にするのはどうにかとどまった。言ってみたところで彼が話を止めるとは思えないし、言ってしまえば言ってしまった分だけ彼と自分の会話が長引いてしまう。
それは、とてつもなく面倒だ。
軽く息を吐いて、本棚にもたれかかって腕を組む。
「……話したい話しなさい」
「物分かりが良い助手を持って俺は幸せだよ。……で、話の始まりなんだけど、実は高校時代までさかのぼるんだ」
高校。
来神高校。
折原臨也が、平和島静雄と出会った場所。
……となれば、彼が話そうとしている物語の登場人物に、かの池袋最強が名を連ねているのは、ほぼ間違いが無いだろう。どうやら臨也の高校生活での思い出と静雄という存在は、切っても切れない程強く結ばれてしまっているようだから。
まぁ、天敵同士みたいなものだから、それも道理か。
「ある時、俺はいつもの様にシズちゃんに追いかけられていた。それ自体は全く普段と変わりない風景だったよ? 俺も、普段の様に、俺がシズちゃんから逃げきる事によって逃走劇が終わるんだと思ってた。ただ、日付とタイミング問題だったんだよねぇ」
「というと?」
「あの双子たちが……九瑠璃と舞流が、ねぇ……追いかけっこ中に登場しちゃってさ、俺の誕生日をシズちゃんにバラしちゃったんだよ」
「それでどうなったのかしら」
「シズちゃんが、俺を追いかけてくるのを止めたんだ」
その言葉に。
ほんの少し不満がにじんでいた気がしたけれど、敢えてそこはスルーする事にする。触れても良いけれど、そうすると話がさらに長くなりそうだったから。
口を閉ざした自分に構う事無く、多少不機嫌そうに、情報屋は言葉を紡ぐ。
「その時言われたのが、なんだっけな……『俺は手前の誕生日なんて祝わねぇし、どうでも良い。けど、どうしようもない程どうしようもねぇ手前の誕生を、それでも祝ってくれる奴らのために、今日だけは殴らないでいてやるよ』だっけ?」
……高校の時の話だというのに、随分とまぁ、彼の言葉を良く覚えているものだ。
「でさ、シズちゃん、あの日から今日まで、俺の誕生日には本当に攻撃してこないの。……本当にあり得ない。何考えてるんだろあの化け物」
苛立ちを隠そうともせずに唸る性格が捻れ気味の男は、息を吐いて頬杖を止めた。
机に額をぶつける彼の様を見ながら、肩を竦める。
多分、平和島静雄は、彼に言った以上の事以外は何も考えていないのではないだろうか。そして、恐らく臨也もそう思っている。故に、嫌なのだろう。これではまるで、仇敵に気を使われているようだから。
まぁ、実際、気を使われているのだろうけれど。
そんな風につらつらと考えながら、波江は口を開いた。
「ねぇ、ところで、そろそろ帰って良いかしら」
あれ……祝えて無い……? ……いつもの事ですね、すみません。
まぁ、なにはともあれ。
お誕生日おめでとう、臨也。
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