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今回は張飛に挑戦してみました。天玉町一家、つまり現パロだけどもね!
劉備もちょこんと出演してます。



15:それはとても小さな(三国伝:天玉町)
 
 
 
 本当に、あと少しだったのだ。
 残り数センチ……否、数ミリで、指先は、届くはずだったのに。
 なのに。
「何であそこで手ぇ出してくるんだ徐庶の野郎!」
 思わず叫ぶと、ぽんぽんと肩を叩いてくる手があった。
 視線を手の方に向ければ、そこにあったのはにこやかな表情浮かべる劉備の姿。
「ドンマイ張飛。大丈夫、明日があるって」
「いや……アニキ、それ、昨日も一昨日もその前も聞いたぜ……」
 叫んだと時とは一変、静かに、そう返す。彼のにこやかの表情のせいで、毒気らしき物が綺麗に抜け去ってしまっているようだった。
 この中学校の購買には、一日で三個しか発売しない焼きそばパンがある。勿論普通の焼きそばパンだって売ってはいるのだが、限定品の方はそれとは比べ物にならないほど美味しいらしいのだ。そんな話を聞いてしまえば、食べたくなるのは当然だろう。
 だから、張飛はずっとその限定焼きそばパンを狙っている。その話を聞いた一年生の時から、ずっとずっと。
 しかし三個、というあまりの数の少なさのせいで、走って購買へ行ってみた時には既に姿が無くなっている、と言う事がしょっちゅうだ。一個残っているのを見ることも、しばしば、あるにはあるけれど、そういう時は近付く前に誰かがさっと取って行ってしまう。今日の様に、あと数ミリまで届く事は、本当に稀なのである。
 だからこそ悔しさも大きいわけであるのだが。
 普通の焼きそばパンをかじりながら、息を吐く。
 三年生になれば徐庶は卒業していなくなっているし、ライバルは減るだろうけども、その時、自分はあの限定品を手に入れる事が出来るのだろうか? ……残念ながら、そうは思えない。諦める気も無いしいつか絶対取ろうとは決意しているのだが、こればかりはどうなるかが分からない。そう思わせる程度にはこれは、困難な事この上なかった。
 だからこそ、今回の敗退は痛い。
 もそもそとパンを食べつつ、張飛はぼやいた。
「もうちょっとだったのによ……」
「元気出せよ。今日で終わりじゃないだろ? ……あ、イチゴ牛乳飲むか?」
「……いる」
 ストローの刺さった紙パックを劉備から受け取り、口を付ける。
 口の中に広がった甘さにつられるように、明日も頑張ろうか、なんて思った。






ちなみに、徐庶が張飛が取ろうとしていたものをかすめ取っちゃうのは今回に限ったことではないのです。
別に他意はないし、欲しいものがかぶってるだけで、かつ張飛が競り負けちゃうという感じ。


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