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突然に人間になったらショックはあるでしょう。
特にこのヒトとか。
そんな感じでブイ、エクシア、ヴァーチェな話です。
(これに出てくるそれ・びーのメンバーは、2009年の春号以前の設定です)
19:ポップコーン
「オレはッ……オレはガンダムに…ッ…」
「安心しろエクシア。現状では誰もガンダムになれん」
「オレは……オレは…」
「エクシアにーちゃん…よかったらこれ、食う?」
「オレ…は……」
あまりの衝撃にだろう、精神崩壊まで起こし掛けているエクシアに、本日のおやつことポップコーンを差し出してみるが……反応と言った反応がない。完全に自分の世界に突入しているようだった。
どうすればいいんだろうかと、エクシアと一緒にいるヴァーチェに視線で訊いてみるものの、諦めろとばかりに首を振られた。……確かに、諦めるべきかも知れない。
しかし、である。
「なー、ヴァーチェにーちゃん」
「何だ?」
「エクシアにーちゃん、ずっとこのままじゃマズイんじゃない?」
「それは……オレも思っていたところだ。出来れば今すぐ連れて帰りたいんだが…」
「オレは帰らないッ!」
今までこちらに何の反応も無かったというのに、その『帰る』という言葉にだけはしっかりと反応して、エクシアはうつむき加減だった頭をバッと上げた…が、直ぐに下を向いて「オレは…オレは…」という一人の世界に戻ってしまった。
はぁ、と溜息を吐いて、ヴァーチェはその場に座り込む。
「この調子だからな。無理に連れて行けば被害が出るぞ」
「それ、大変そうだね…」
いくら人間形態(?)とはいえ、本気で戦ったりすれば凄い被害が出ることは殆ど、間違いないのだ。日頃は平和すぎて使いようもないスキルだけれど、『ガンダム』という存在の戦闘能力は高い……らしいし。
しかもついさっき分かったことらしいが、人間になってしまった今でも、元から装備していた武器は使えるようだし。
「けど、エクシアにーちゃんって接近戦の方だよな?ヴァーチェにーちゃんが一発でも撃っちゃえば終わるんじゃねーの?」
「ブイ、現状を理解しているか?」
「え?」
「今の状態でそれをしてみろ、エクシアの丸焼きが完成するぞ?」
「……あ!」
普段ならともかく、人間状態の今なら……シャレにならない。
そこまで思い至らなかったと、シュンとしていると、思いついたという様子でヴァーチェがポツリと呟いた。
「まぁ…三途の川を渡りかけても生きてるのや、自爆して生きてるのもいるのだし、問題ないかもしれないが」
「そこ言ったら終わりだって!」
叫んでから、もう……と溜息を吐いて、ブイは再びエクシアを見た。
……さっきより、背負っている暗いオーラが深まっている気がする。
「…あれって…大丈夫?」
「もう知らん…」
諦めた、と呆れ顔でヴァーチェはふい、と視線を逸らした。
「ショックだったからと言って、何故『帰らない』という思考へ繋がるのか…」
「他のみんなに見られたくないとか?」
「ガンダムにほど遠い今をか?……かもしれない」
「あれ?どこか行くの?」
歩き出した彼に、ブイは首を傾げつつ問いかけた。
背を向けているヴァーチェは、こちらを見ることなく、一言。
「他のに会ってくる。昨日は帰れなかったからな……心配して探し回っている様が目に浮かぶようだ。そいつを頼む」
「え?ちょっと待って……行っちゃった」
背中が見えなくなってから、ブイはくるんと体を反転させて深まった暗いオーラでカーテンでも作れそうなほど、それほどに沈んでいるエクシアを見……何か、あ、ダメだ…と、思った。騒動が収まるか、ショックを払拭する何かがないと立ち直らない。
「頼むって言われてもなー……」
何をしろというのだろう。
少し考えて、結局エクシアの隣に座った。
それから直ぐ傍にポップコーンの入った袋を置いて、ちょん、と彼の肩を叩く。
「エクシアにーちゃん、何か食べないとヤバイよ?昨日何も食ってないし」
「オレは…オレはガンダムに……」
「にーちゃん…」
やっぱりダメか、とブイは少々…途方に暮れた。
何と言うか…ブイとそれ・びーって…接点のない…。
ヴァーチェは、一日エクシアに付きっきりでした。結構世話焼きだなぁ…。