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300年後かぁ…本って、希少価値が出て来そうな気がする…無くなってたりして。
今でもブログ小説とか携帯小説とか、とにかく色々とあるから。あるいはそういうことも有り得るかもしれませんね。
という感じの話です。
10.時代遅れ
「ん?アレルヤ、お前何持ってんだ?」
「あぁ、これですか?」
二日後に予定されているミッションのために地上に降りた、ロックオンとアレルヤは、一時的なものとはいえ穏やかな平和な時間を堪能していた。
そんな中で、ふらりとアレルヤが散歩に、ロックオンが待機場所で昼寝を決め込んだのがつい一時間前。そして、起きたロックオンの直ぐ目の前には、紙袋を持ったアレルヤがいた……というのが今の状況の概ねである。
嬉しそうな笑顔を浮かべているアレルヤは、紙袋に手を入れて、中にあった物をロックオンへと手渡した。
「……本?」
「えぇ。見つけたので買ってきました」
良かったらどうです?と渡された本をペラリと捲れば、どうやらそれはノンフィクションの小説らしく、中々に興味を惹く物だった。
「良いんじゃないか?面白そうだし…借りても?」
「良いですよ。そう言うと思ったので、余分に買ってきましたし。にしても……やっぱり、ロックオンとの本に関しての会話は楽しいですね」
「へぇ?」
どうしてかと理由を視線で問うと、だって、と彼は苦笑気味に言った。
「ハレルヤは本のどこが良いんだ?って…本気で訊いてきますから……そのくせ、ちゃんと読書はするんですよね。しかも物によったら理解力は僕よりも上だったりして…」
「アイツは勉強せずにテストで点を取れるタイプか?……で、刹那はそもそも本を滅多に読まない、か。体動かす方が性に合ってるって言ってたし」
「ティエリアの場合、難しい本ばかりで……会話が…」
「続かないのか」
「……はい」
しおらしくコクリと頷くアレルヤ。
仕方ないだろうと、ロックオンは同情と共に思った。あの三人だったら、ハレルヤに関する証言が正しいのならば(そこは自分が知り及ぶ所ではない)確かに……話をすること、続けることは難しい。
対して自分は幅広く本を読むので、話しやすいだろう。何度か本の貸し借りも行っているから、そういう点から見ても話しやすいに違いない。本の感想を言い合ったりも出来るし、面白かったからと本を渡すことも可能だし。
「けど、」
と、アレルヤが悲しげにポツンと呟いた。
どうしたんだ?と続きを促すと、本の表紙を撫でながら、一言。
「本……減ってきてますよね」
「ん?あぁ、確かにな」
今では本の内容のデータ配信なんて物もある。わざわざ嵩張る紙媒体で手に入れようとする物好きも、ちゃくちゃくと減少しているのだろう。それでも自分たちのように、きちんと物好きが存在するが故に本も存在しているわけだが。
それは確かに残念な事だ。紙媒体のほうが味があって良いと思うのに。
けれども。
「人間ってのは便利な方にながされるからな。悲しく思うのも事実だが……こうなるのもある意味じゃ、当然って言えるんじゃないか?」
「じゃあ、僕らは時代遅れってことになりますけど」
「ま、それもアリだろ」
「アリですか?…ですね」
一度は聞き返したが同意してくれたらしい。彼は微笑んで、それから自分の隣へと腰掛けた。傍らに紙袋を置いて、中から他の一冊の本を出して。
「どうせ暇ですし、晩ご飯の時間帯まで読書でもしておきましょう」
「賛成。トレミーに戻ったら、刹那とティエリアの子守で読書どころじゃないしな」
「それ……言ったら怒られますよ?」
口では咎めているものの、表情が笑みでは大して堪えもしない。
軽く笑い返して、ロックオンは本の表紙を開いた。
どんな本を買ったのかは皆様の想像に。