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「風邪1」の続き。
「風邪というのはつまり……体の調子が悪くなることだ」
「体の調子が悪くなったら全部『かぜにかかった』ってことになるのかな?」
「いや、そういうわけではないだろう」
あの後アレルヤを彼自身の部屋に連れて行って寝かした刹那は食堂に戻らず、他のクルーたちに知らせることもせず、彼の看病をしながら『風邪』について伝えようとしていた。
まさか、数少ない常識人に見えるアレルヤが、風邪を知らないとは思わなかった。少年兵として戦っていた自分でも知っているのに。
「とりあえず、調子が悪くなる要因は幾つもあって、その中の一つに風邪がある、と考えていれば問題はないと思う。詳しいことはロックオンにでも訊け」
「うん、分かったよ。ありがとう、刹那」
「気にするな」
言いながら、額に乗せたおしぼりを変える。
「それにしても、どうして知らなかった?」
「かぜのことかい?そうだな……」
少し考えるそぶりを見せて、それから一言。
「……データが取りにくくなるから、かな?」
「?」
どういうことだろうか。簡略すぎて分からない。
が、彼の表情から、思い出したくないことだろうことは分かった。
「言いたくないなら説明する必要はない」
「そう…?でも、せっかくだし、何か話したい気分だから」
「……そういうことなら」
ただし、無理はするな。
そう釘を刺すと彼は、分かった、と微笑んだ。
「僕が人革連の超兵機関にいたことは知っているよね」
「あぁ」
彼が出した報告書を読んでいたから、知っている。
「そこでは、被検体の子供がたくさんいてね、毎日毎日データとか、いろいろと計測されるんだ。で、さっき刹那が話してくれて知った『かぜ』だけど、こんなのにかかったら、きちんとした情報が取れなさそうだからね。だから、研究員たちは僕らの体調管理をしっかりしていたんじゃないかって、そう思ったんだ」
「……なるほど」
「それにその後も、ちゃんとした生活を送ってきたわけではないから。だから体調が悪くてもただそれだけ、だったんだと思う」
「大変、だったんだな」
それだけしか言えなかった。
刹那自身もそれほどよい生活を送ってきたわけではない。だが、風邪を知らないほどではなかった。
まあ、刹那が知らないことをアレルヤが知っていることもあるから、彼と自分の知識レベルは同じような物で、傾向が違うだけなのだろうけれど。
ふと、刹那はアレルヤがハレルヤに話しかけていないことに気がついた。
「ハレルヤなら、寝ちゃった。ふて寝かな?僕と刹那が話しているのが気に入らなかったみたいだね」
訊くとこう、笑って返された。
その様子が目に浮かぶようで、刹那も少し笑う。
本当に、ハレルヤはアレルヤが大好きなのだなと、そう、感じた。
しかし、刹那だって負けないくらいアレルヤが好きなのだから、今日みたいな(アレルヤを独り占めできる)日があってもバチは当たらないだろう。
そう。誰も呼ばなかったのは、こういう理由からだった。
特に他のマイスターの二人にばれてしまったらこんな時間は得られない。あの二人なら絶ッ対に来る。何をしていても、何があっても、すぐに。
ほかのクルーたちも、心配して来てしまうだろうし。
だからやっぱり、誰にも話さなかったのは成功なのだ。
「何か消化しやすいものを持ってくる。リクエストはあるか?」
ベッドの傍の椅子から立ち上がり、訊く。
彼は軽く首を振った。何でもいいという意思表明だろう。
「分かった」
「ごめんね、刹那」
「俺が好きでやっていることだ。アレルヤが気にやむことはない」
「……うん。ありがとう」
優しい彼の言葉に送られ、刹那は部屋から出た。
このまま二人でほのぼのできたらいいんでしょうけど……
3では他の皆さんも出てきますよ。
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