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懲りずに超兵たちで途美学園。だって、全員が分裂して勢揃いってコレでしかできないし。
でも、この話で勢揃いしているわけではありません。
09.風呂あがり
「あら、アレルヤ。こんな所でどうしたの?」
「えっとね、ハレルヤが風呂から上がるのを待とうと」
「…?珍しいわね、それ」
いつもなら、一緒に入って一緒に出ているのに。
だから、寮の大浴場の外で片割れを待っているアレルヤの姿は何とも珍しく、新鮮な物に思えた。マリーがこちらの学園に転入したのは最近で、いつも、というのもそれから今までの間の様子を見ての言葉だから、もしかしたらさほど珍しいことでもないのかもしれないのだが。
しかし、そうでないとはハレルヤの様子を見ていると有り得ないとも断言できる。学園でのベッタリ具合は言うに及ばないし、ならばそれが寮に戻っても継続しないとは考えにくいだろう。
どういうことかしら、と首を傾げていると、大したことでは無いんだけれど、と前置いてアレルヤが苦笑を浮かべた。いつもの笑みだ。
「僕がね、ちょっと先にのぼせちゃって…」
「そういえば髪、濡れてるわね」
「フラフラしながら拭いたから、まだちょっと濡れてる感じがするよ…拭き直した方が良いよね、これ」
「そうね…あ、そうだわ」
ちょっと失礼、と言ってマリーはアレルヤの手からタオルをスッと抜き取った。
それから、唖然としている彼の顔を両手で挟んで、グイと引っ張る。
「わ!?」
「…この体勢では貴方に負担が掛かるわね」
「え、ちょ、マリー?」
「下に行きましょう。まさか床に座らせるわけにもいかないわ」
「あ…もしかして」
その言葉に何やら合点がいったのか、アレルヤはフッと顔を上げた。
「マリー、髪拭いてくれるつもりなの?」
「えぇ。濡らしっぱなしでは風邪を引くかもしれないわ」
「そっか…ありがとう」
「いいえ。じゃあ、下に…」
「うぅん。床に座るから良いよ」
「…良いの?」
いくら掃除が行き届いているからと言っても、床はともかく床なのである。そんな場所に座って心地がよいとは思えないのだけれど。
眉を寄せると、慌てた様子で彼が口を開いた。
「ほら、いなくなってたらハレルヤが心配するかもしれないし」
「そうかしら?あまり気にしないと思うけど」
「…でもほら、もしもってあるじゃないか」
そう言われると、そうかもしれないとしか言えない。
クスリと笑って、マリーは結局アレルヤの言葉を受け入れることにした。
床に座ってもらって、手にしたタオルで彼の頭をワシャワシャと拭く。出来るだけ丁寧に、優しく、同時にちゃんと拭けるように。拭けなかったらこうして自分がタオルを使って拭いている意味が無くなってしまうのだから。
やるならちゃんと。
それが礼儀という物だろう。
「…マリーの拭き方って優しいね…」
「心がけているもの。そういえば、ハレルヤにはやってもらったことは?」
「あるよ。ハレルヤはね、ちょっと乱雑だけど適当とかじゃ無いんだ」
「分かるわ、それ」
「ソーマちゃんはね、真面目な感じが伝わってくるんだけど…堅いだけじゃないんだよ。頑張ってるのがちゃんと伝わる」
「ソーマにも拭いてもらってるの?」
まぁ、自分よりも学園にいるにあたっては期間が長いから分からなくもないのだけれど……何となく不満を抱く。そして、次からは絶対にソーマにだけは拭く役割の座は与えないようにしようと誓った。結局早い者勝ちと運によるものになりそうだけれども。
そんなことを思っている間に事は終わり、マリーはタオルをたたんでアレルヤに渡した。これはアレルヤの物だから、どうするかは彼に委ねる方がいいだろう。
タオルを受け取ったアレルヤは立ち上がり、丁度その時、ハレルヤが大浴場の更衣所から出てきた。それから自分を見て盛大に眉をしかめてくれた。お返しとばかりにニコリと明るく微笑んでやったけれど。
「ハレルヤ」
「部屋戻ってアイス食うぞ。…って、ん?お前、頭ちゃんと拭いたのかよ?」
「マリーが拭いてくれたんだ」
「へぇ…次からはやらせるなよ」
「え!?」
「それは横暴よ、ハレルヤ」
何だかんだで仲良しだと良い。