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こじつけ万歳!
それから相も変わらずGUDA★GUDA!
04.未成年
……時に、酒の力は偉大だと思い知らされる。
現に今が、そうだ。
あぁ……酒を飲ませすぎるのは、あるいはそれを止めないのは自殺行為と同じなのだな、とわりと本気で思う。
何故なら自分の目の前にいるのは、いつもは大人の女性らしい雰囲気を持っている姉、絹江であるはずなのに……半透明の液体の入ったグラスを片手でもって、とても明るい笑顔でいる彼女は、沙慈を捕まえて離してくれなかった。つまり、自分は実の姉に絡まれている真っ最中、というわけだ。
どうしてこうなったのだろうと、ため息を吐く。
職場で色々と苦労があるのは分かる。仕事上のトラブル、職場の人間関係。後者はともかく、前者は姉にはとても関係あるだろう。例えば取材先の人と仲良くできずに文句を言われる、だとか。
そういうことがあったとしても……これは、深酒すぎじゃないだろうか?
いつもと違う姉の姿を新鮮には思う。思うけれど……早く解放してくれないだろうか?宿題がまだ残っているのに。しかも、明日提出のが。
もう一度、ため息。
「沙慈~?どうかした~?」
「……何でもないよ、姉さん」
笑顔で訊いてくる絹江に、こうとしか答えられなかった。正直に言っても、多分効き目はないだろう。むしろ笑い飛ばされる気がする。
と、ここで、玄関のチャイムが鳴った。
「あ、僕出てくるねっ」
ほんの少しの時間でも、ここから離れることができるチャンスだ。みすみす見逃すわけにもいかない。この後、そんな機会が訪れるかどうか、怪しいものだし。
反論が出る前にと急いで玄関へ行き、ドアを開く。
そこには。
「あ、刹那君」
「……沙慈・クロスロード、これを」
空のタッパーを持つ、お隣さんの姿が。
そういえば以前、作りすぎたおかずを彼にお裾分けしていたのだった。それで、入っていた容器をわざわざ洗って、返しに来てくれた……ということだろう。これは。
無口で愛想は無さそうな刹那だけれど、こういうところはちゃんとしていて、近所付き合いをする身としてもやりやすい。
「そうだ、刹那君、ちょっと上がっていかない?」
「何故だ?」
「今、ちょっと暇なんだ。お菓子もあるし」
嘘は言っていない。大事なことを隠しただけ。
一応、今は暇ということになっていて……だから絡まれているわけだが。
それに、お菓子があるのも事実。といっても、つまみだけど。
「……遠慮する」
「え!?どうして?」
だが、返ってきたのは拒否の言葉。
今までの付き合いから、快く了解してくれると思っていたのに……。
一体、何でだろう?
首をかしげていると、刹那が数歩下がった。まるで、何かを恐れているかのように。
「………………中にいるだろう?」
「何が?」
「…酒を飲んでいる誰かが」
「いるけれど……どうして分かったの?」
驚きながら、口を開く。
リビングには、確かに絹江がいて酒を飲んでいる。けれども、そこは玄関からは見えないハズだ。なのに、どうやって彼は気づいたのだろう?
「臭いだ。あとは……勘、か。酒飲みに関する危機回避能力は鍛えられている」
「それってまさか……」
刹那の働いているという所には、酒を今の絹江以上に飲んでいる人がいるというのだろうか。『鍛えられている』というだけあって。
ちょっとだけ、恐怖を覚える。上には上がいるということだろうか。
「いいか、沙慈・クロスロード。経験者からの助言だ」
真摯な瞳でこちらを見てくる刹那に、神妙な気持ちになってこくんと頷く。
「未成年だからといって、酒を飲まずにすむ可能性は低い。今のうちに逃げておくべきだ」
「……そう、なの?」
「あぁ。手遅れになる前に行動を起こせ」
そう言ってかなりの速さで立ち去る刹那の後ろ姿を見、それから沙慈はポツンと呟いた。
「……うん、じゃあ、今から逃げようかな」
絹江さんにだって、飲み過ぎることはあるさ!
……はい、すみません。ごめんなさい。本当に許してください。