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やっと皇女を出せました…。



「退屈なのよ」
「…だからってどうして僕らの教室に」
「だって、刹那は姿をくらましてしまっていて」
 そう言って、突然この教室に現れたマリナはため息を吐いた。
「訊いてみれば今日は休んでいたって言うし…風邪なのかしら。後でお見舞いに行くべきかしらね?留美、貴方はどう思う?」
「行かない方が良いのではなくて?」
 その方が、絶対に刹那も安心するだろう。
 基本的には付き人に淹れてもらっているのだが、今回はアレルヤに淹れてもらった紅茶を飲みながら、留美は答えた。
 紅龍を連れて来れないのは、結構辛い。荷物も何もかも自分で持たなければならないし、紅茶を一番自分好みに淹れることが出来るのは彼なのである。アレルヤとて下手であるわけではないしむしろ上手な方だけれど、比べてしまえばそう言う事。
 早く、普通に紅龍を連れてくることが出来る学園に戻って欲しいものである。
 あと、もう少し賑わいを取り戻して欲しいものだ。
「マリナさん…えっと、昼休みにこんな所にいて良いんですか?学年が違うって怒られないんでしょうか…」
「あら、それは大丈夫みたいよ?それを言い出したらクラスまで制限することになるし、まぁ…そう言う事以前に、あの人たちは私たちの顔なんてそう覚えていないようだし」
「覚えているのは何人かの超重要人物程度、と言う事かしら?」
「そのようだと、私は思うの。リジェネもそう言っていたわ」
「少し違う気がするけれど、大雑把に見たら合っている、のかもしれませんわ」
「そうなの?僕は納得してしまったけれど」
「だってアレルヤ、考えても見てご覧なさい」
 と、留美はこそりとアレルヤの耳元で囁くように……マリナの耳にはとりあえず届かないようにと、言葉を紡いだ。
「ならばどうしてマリナ・イスマイールに監視がついていませんの?確実に彼女は超重要人物でしてよ。それはもう生徒会ばりに」
「…その言葉を否定しようとは思えないけれど…ほら、人手とか」
「そのような言葉が出る時点で既に、マリナ・イスマイールの言葉が多少違っているという事ではなくて?」
「…う」
 そこまで言うと、流石にアレルヤも言い返す言葉がないらしい。
 黙り込んでしまった彼を満足げに見やって、不思議そうな顔をしているマリナに微笑んでみせる。今の会話、聞かれたとしても問題はないかも知れないが、事が事なので慎重に行くべきだろう。有る意味で彼女は切り札なのだから。
 それにしても、まさかマリナが停学を免れるとは思わなかった。中盤戦くらいで脱落すると思っていたのだけれど。考えてみれば彼女はスイッチさえ入らなければ普通なのだから、そう思えば理解は出来るのだが。
 それを言うのなら、ネーナなんて限りなく奇跡に近い生き残りだけれど。
 何だかんだで、結局彼らは『気に入らない』『反抗者』を取り締まっているに過ぎない。何のリアクションも見せず、同時に従順なふりをしていれば多少は見逃されるようだ。恐らくネーナもマリナも…刹那だって、そういう理由から生き残っている。
 まさに独裁。
 学園の所有者や理事長であっても、そこまでの事はしなかったというのに。
 あれで結構、公平さは存在していたというのに。
 それすらも分からない愚者なのか。
「言ってみたところで詮なき事ですわね…」
「留美、何か言った?…じゃなくて、マリナさん、でもやっぱり警戒はしないと」
「分かっているわ。時にアレルヤ、私、貴方に聞きたい事があるのだけど」
「…?何でしょう?」
「ハレルヤが停学になった事、どう思っているの?」
「……」
「貴方はどんな思いでそれを捉えているのかしら?」
「…仕方がなかったんだと、思います」
 静かすぎるアレルヤの返事。
 けれど、それは、有る意味でそうではないと、言ってしまっているようなものだった。
 それはそうだろう。彼の気持ちは良く分かる。ハレルヤの素行は問題だろうが、それを認めていようが、ともかくあの停学は酷い。
 諦めなど、付けようもないだろう。
「ハレルヤは危害を加えられたわけでもないし、今のところ大人しいし、とりあえずさしあたっての問題はありませんからもう、今はそれで良いかなって」
 どこか困ったようにアレルヤは笑い、俯いた。
「というか…そう思わないとやっていけません。彼の停学に関しては不思議も何もないんですけれど、その前に踏むべきステップが抜けていた事が少し」
「分かるわ、それは。最初は注意から、というのは鉄則ですもの」
「それを無視した行動なんて、確かに独裁以外の何でもございませんわ」
 だからこそ、彼らは近いうちに学園を去る事になるのだろう。







そして事態は完全に収束へと動き出すのです。
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