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ちゃんと大会の方もやってるんですよ。
57:シンバル
大会会場の開場席にて。
皆が戦っている様子を見ながらぼんやりと、襲ってきているような襲ってきていないような睡魔と一緒にゼータはその場に座っていた。
正直、暇。
「……ボクらは一体何をしていれば良いんだろう」
「お前の場合は何もしていないのが一番だと思うが」
「そうなのか…?」
「そうだと思うわ」
「…そうか」
シャアとララァ、二人から同時に言われるのならば本当にそうなのだろう。
じゃあ眠るのもいけないのだろうかとか考えたりもしたが、そこは別に気にされるポイントではないだろうと結論づける。もっとも、微妙に眠たいのにそこそこ眠たくない上に、観客席は堅くて眠る気になれない。
ならば、見ているしかないのだろうか。
それがかなり暇なことなのだけれど。
だからといって、戦うメンバーに何とか入れてもらうのが良かったかと言えばそういう話ではない。そちらの方がむしろ面倒さでは上である。従って、自分としては今の方が比べてみれば良い状況ではあるのだ。
が、最も最良であるのは宿に残っていること。
今からでも帰って良いだろうかなんて思いながら、敵を順調に倒していく皆の様子を見る。何だかんだと言ってちゃんと主人公だし最後まで勝ち残るんだろうなと予測を建てていたのだけれど一回戦目からストライクフリーダムやインフィニットやデュエルのSEEDチームに当たって倒されてしまったガンダムたちのチームは、ここよりも近くあちらの方で応援をしていた。
……あの試合は名戦だった。
「ビデオカメラがあれば良かったんだが…」
「何の話だ?」
「…別に」
単なる独り言だし他人に聞かせるような物ではないと首を振れば、そうか、とだけ返してシャアは黙った。その辺りのニュアンスはしっかりと伝わっているらしい。
何だかんだと言って、自分と彼の付き合いも割と長い。
まぁ、ガンダムには及ばないのは当然だが。
しかし…考えがループしてしまうのだが……やはり暇、だ。
…応援でもしてみようか。
「それならゼータ、良い物があるわ」
「…?」
「はい、これ」
心を読まれたことは今更なので気にせずに、ララァが取り出した物を黙って受け取る。
真新しく金ぴかで、影は間違いなく丸くなる、二枚セットで両手に一枚ずつ装備する、主に音を奏でるのに使用する道具。
それはシンバルだった。
…何でこんな物がここに。
「持っていたの」
「…何故だ?」
「さぁ。持っていたから持っていたのよ。よく分からないわ」
「…そうなのか」
ならばそうなのだということで。
彼女に対してそういうツッコミをすることの無意味さはツッコミ役を見ていて良く分かっていることだし。
「だが……これで応援はどうなのだろう」
「そうね…少し変かも知れないわね…」
「……変どころでなく奇妙だろう」
恐らく自分たちの中で唯一正統派のツッコミを名乗ることが出来るシャアが、どこかげんなりした様子で呻いた。見て少し考えれば分かるだろうそのくらい、とでも言い足そうな表情に、ゼータは思わずララァと顔を見合わせる。
…そんなに変なのか。
少しだけ変かとは思っていたのだが。
「だが…応援ではよく大きな音が…」
「音を出す物体が違うだろう…?」
「でも音が出ることに代わりはないわ」
「傍から見る私の身にもなってくれないか…?」
そんなに嫌なのか、と言いたくなるような態度に口をつぐむ。
あまり言わない方が良いのかも知れない、この続きは。何だか疲れさせてしまうようだから。
こっそりガンダムが初戦敗退なのは、まぁ、そんな感じの主人公だし、みたいなノリです。