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あと少しで緑のお題も終了かぁ…。
18.俯く
あまり、明るいのは好きじゃない。
明るすぎる光は目を焼く。ただでさえ闇に慣れてしまったこの目だ、いとも簡単に日の光はこの目を焼き、焼き尽くして消してしまうだろう。
眼光から灰が零れるなんて笑えない話。
だから、明るいのは好きじゃないのだ。
もっとも…だからといって、明るい日に外に出ないなんて事はない。明るさは苦手だが、それに矛盾することなく、晴れの日は好きだったから。雨の日も好きだし、曇りも、雪も、多分嵐でさえ好きだと言うと思うけれど。
だって、天候があるという、それだけでも素晴らしいではないか。
外に出られるという事だって、それだけで素晴らしいことなのだ。
とはいっても……やはり、明るい下に出るのは少し、苦手ではあるわけで。いつもは意識して明るさを認識の外から追い出したりしているのだけれど、ふっと明るすぎることに気がつけば、視線は自然と下を向く。
だいたいがそんな感じ。だから、片割れにも呆れられる。
……ただし。
室内、そんなに明るくない場所、しかも宇宙で。
この日は、少し違った理由で俯くことになった。
「……」
例えば、考えてみよう。
もしも自分がここにいなかったらどうなっていたのだろうか。
別に、どうということもなかっただろう。ただ自分以外の誰かが選ばれ、選択し、この場所にたどり着いていただけなのだろうから。
結局、それが自分だったと言うだけのことなのだし。
考えても意味がないこと、だった。
それに、今の自分の境遇に嫌気がさしているわけでもない。むしろこの忌まわしい能力を誰かのために使うことが出来ることを、喜んでいるくらいなのだから。もっとも、それを使われる人々は望んでいないだろうが。
それは、理解している事。
自分たちがしているのはそう言う事。
「分かってるんだけどなぁ…」
分かっていても、気持ちは別という良い例かも知れない。
静かに思考して、それをハレルヤが眠っている今にやっていることに我ながら苦笑する。こんな思考が片割れに知られたら、それこそ大変なことになりそうだった。
小言が、当分止まないだろう。
あれで割と、自分限定だろうが小言をよく言ってくれる片割れの反応を想像すれば想像するほど、何とも言えない気持ちになる。彼のこういった類の事柄に対する意見は、概ねではなくて確実に、正しい。ただ、彼の様に割り切っても理解してもいない、していても不十分な自分がここにいるだけなのだ。
「ん?どうかしたか?」
ついつい零した呟きが耳に届きでもしたのか、ロックオンがこちらをくるりと向いた。刹那とティエリアは競う様に、あっという間に前方の方へと行ってしまっている。そんなに急がなくても昼食は逃げないのだけれど。…とりあえず互いに負けたくないのだろう。最初と比べると、本当に仲良くなったというか。
成長って良いな、などと思いながらアレルヤは曖昧に微笑んだ。
「少し、自分のふがいなさを思っていただけです」
加害者として、もう少し自覚くらい持てば良いのにと思っていただけ。
それと、自分には代えがあるのだというのを思い出していただけ。
だから全ての思いを込めてそう答えると、ロックオンは少し悩んだ様子を見せ、ふっと笑った。曖昧ではない、優しい笑みだった。
「お前さん、自分で思っているよりは頑張ってるんじゃないのか?」
「それじゃあダメだと思うんですけれど…やっぱり、自分で認めれるくらいには」
「周りからの評価も大切だと思うけどな?ま、とりあえず」
と、言って。
彼はポンとアレルヤの頭を撫でた。
自然、顔が下を向く。
「オレはちゃんと認めてるぜ?…ん?どうした?」
顔を俯かせたまま上げようとしない自分を不思議に思ったのか、ロックオンの声に訝しさが混じる。
けれど。
上げられるわけがなかった。
『…単純』
今起きてきたらしいハレルヤが呆れた様にそう言ったが、顔を真っ赤にしたアレルヤには反論のしようは、どこにも無かった。
たまにはロク兄に兄貴っぷりを発揮してもらおうかと。