式ワタリによる、好きな物を愛でるブログサイト。完全復活目指して頑張ります。
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誰がどのタイミングでどんなことを知っているのかが曖昧です…多分原作とかと、そろそろ完全に色々合わなくなっていくと思います。
今、杏里はとてつもない恥ずかしさにみまわれていた。
というのも、罪歌が「これ着なさいよ、これ」なんて渡してきた服が、いつも来ている服よりも軽くて……派手派手しかったからである。
断ろうとは思った。けれど、変装に役立つだろうことも間違いではないだろうからと、少し悩んだ。するとその少しの間に彼女は勝手に会計を済ませてしまったのだった。
何時の間に盗ったんだろう…と、街を歩きながら今は手元にある己の財布を確認するが、当然ながらそんな考えが隣で缶ジュースを飲みながら歩を進める罪歌に伝わるわけもない。どうせ、伝わったところで大した反応もないだろうけど。
そんな彼女は、自分以上に派手…というわけでもなかった。
実用性をある程度重視しているような、そんな服装である。上は無地のシャツと薄いジャケット、下はジーパンで靴はブーツ。それからさっきちらっと見えたのだけれど、ジャケットの裏にカッターナイフが二本。
体の中から日本刀を出せるだろうに、果たして要るのかどうか。
どうせなので、こちらは訊いてみる事にした。
「ねぇ…どうしてカッターなんて持ってるの…?…貴方の『本体』は?」
「『本体』なら出せるわよ。でも、こんな街中で日本刀は目立ちすぎるでしょ?だから一応、カッターも持っておく事にしたの」
「…目立つのが嫌…なの?」
ちょっと意外だった。
人の目や状況を無視して動きそうなイメージを持っていたから尚更に。
流石にこちらの思考は表情に出て伝わってしまったのか、若干ジト目でこちらを見ながら彼女は息を吐いた。
「今回は嫌とか嫌じゃないとか、そういう話は関係ないの。ただ、」
「ただ?」
「目立ったら動きにくいから」
「…?」
「楽しみたいのよ、私は」
「…あぁ、そっか」
ならば目立つ事を避けたい気持ちもわかる。
切り裂き魔事件……あるいはリッパーナイトは、未だに池袋の人々の心に刻まれ、覚えられている。そんな中で日本刀なんて振り回したら普段以上に目立つし警戒されるしで、全然楽しい事は起こらないに違いない。
「もちろん人間は誰でも愛したいけど」
「それは止めて…」
「今は静雄一筋だから」
「それも…いい迷惑なんじゃないかな…」
「……何でそう貴方は私の言葉にケチを付けるの?」
「ケチしか付けられないからだと思う…」
応えながら、杏里は帽子を深くかぶり直した。前の方からやってくる集団の中に、クラスメイトだと思われる人物がいたからである。
…案外、サボリというのは普通なのかもしれない。
彼らとすれ違い、彼らが後ろの方に流れていったのを確認して、帽子から手を離す。
気づかれなかったらしい事にほっとしていると、罪歌が笑顔で顔を覗き込んできた。
「ね?案外分からないものでしょ?」
「……うん」
異論は無かったのでうなずくと、彼女はさらに楽しそうに笑って、体を戻した。もちろんこのやり取りの間も自分たちの足は休みなく動いている。
「次はどこに行こうかしら。どこか良いと思う?」
「そういうのは…紀田君が詳しいけど」
「貴方は知らないのね」
「……というか、見に行くような場所ってあるのかな」
「しょうがないから小物を売ってるお店にでも行ってみる?」
「…えっと…帰ったらいいんじゃ…」
「い、や」
一文字ずつ区切って言って、彼女が舌を出した、その時。
ガシャーンッ…と、とても大きな音がして。
思わず振り返った杏里の目に、宙に浮く自動販売機の姿が映った。
それが何なのかハッキリと理解したところで、出来たのは罪歌に引きずられるがままに街に出て来てしまった事への…後悔。
あれを目撃することが分かっていたら、絶対に部屋から出なかった。絶対に罪歌を部屋から出そうとは思わなかった。だって、あれを見て今の彼女が黙っていられるわけがないのだから。
だから確信を持ちながらも恐る恐る彼女の方を窺って、
「杏里、あっちに行きましょう!」
思った以上に紅の瞳をキラキラと輝かせて、今にも走りださんばかりにうずうずとしている姿を確認しても、不思議だとは思わなかった。
思わなかったけれど、その代わりのように思う事があった。
…静雄さん、ごめんなさい。
ようやく次の話でシズちゃんが出るよって話ことです。
ようやく次の話でシズちゃんが出るよって話ことです。
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