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そうえば何で綱吉はスクに敬語なんだろう。すごい今更だけれど。



 夜の校舎と言うのは、思った以上に静かで恐ろしい。
 まず、足音が必要以上に響き渡る。こんな時間に他に誰もいないというのは分かっているけれど、響いた自分の足音が別の誰かの足音であるような錯覚を感じて、進めていたはずの足が竦んで動かなくなることも結構あった。そういう時は、回復するまで呆れ顔の鮫にズルズルと引きずられていったりしたわけだけど。
 もちろんそれだけではなくて、進んでいく先に暗闇しか見えないことだって恐怖の対象になる。窓に映る光に悲鳴をあげかけた事も一度や二度ではない。ちなみに窓の光と言うのは、窓の向こうの住宅の光が丁度悪い感じで映っていただけだった。
 ともかく。
 七不思議なんて怖がらせるための存在も要らないんじゃないかと思える程に、夜の学校と言うのは、それだけで十分に怖い場所だったのである。
 ……知りたくなかった。
 そんな事を思いながら、はぁ、と綱吉はため息を吐く。
「俺……本当に付いて来てもらえてよかったです…」
「あ゛ー…確かにお前一人じゃぜってぇに無理だったろうなぁ゛……」
 すると、しみじみと心底納得しているように言われた。
 まぁ、これは仕方ないだろう。…ちょっと悲しいけど。
 現在進行形でズルズルと引きずられている状況なのだし。
 そんな自分自身を情けなく思いながら……襟首を掴まれ引っ張られながら、もうちょっと強くなろうと思う綱吉だった。
「…で、どっかアテとかねぇのかぁ?」
「『少女』が出るアテですか?…そんなのリボーンが確認させてくれるわけがないじゃないですか。今回は完全にアイツの暇つぶしですよ?」
「…悪ぃ」
「いえ…でも、確かに場所とかちゃんと確認出来たら良かったですよね」
 極寺ならば概要を詳しく知っていそうだし、訊いて来れれば…と思って、はたと気づく。
 そういえば、昼間にリボーンが七不思議を口にした時、彼は何も知らないようだった。普段なら誰より最初に知っていそうな気がするのだけれど。
 もしかしなくても…リボーンのせいだろうか。
「そんなに情報渡したくなかったのかな…」
「ん゛?何か言ったかぁ?」
「あ、一人事です。…と、それから、そろそろ立てそうです」
「……次はねぇからな」
「分かりました。腰を抜かさないように気をつけます…出来るだけ」
 三回目の警句に苦笑しながら立ち上がり、何となく気になって窓ガラスを見た。
 そこには自分、スクアーロ、クロームの姿が映っていた。
 鏡になっている窓から視線を逸らして、唯一の光源を持っている鮫に向かう。
「じゃあ、行きましょう……か……て…」
 あれ?と、訝しさを覚える。
 何にだろうと考えて、思い至ったのは窓に映った姿について。
 自分がいて、スクアーロがいて、クロームがいて……え?
「え……………えぇぇぇぇぇぇぇ!?何で?どうしてクロームがここにいるの!?」
「えっと…」
 綱吉の真横の、教室の開いていたドアから一歩ほど足を踏み出して少女……クローム髑髏は首を傾げた。
「ボスが呼んでるって、あの…リボーンって言う人が…」
「リボーン!?」
「えっと……用事って…違うの?」
 バッグを胸に抱く手に力を込めて、彼女は眉を八の字にした。呼ばれたから来たのに実は呼ばれていなかったなんて、彼女じゃなくても戸惑う状況だろう。
 同情しつつもとりあえず現状説明をしようとした時、ぽん、とクロームの頭に載せられる手があった。黒い布で覆われたその手の持ち主は、当然ながら綱吉ではない。そうなれば、この場にいるのは三人なのだから…誰なのかは自ずと分かる。
 その手はスクアーロの物だった。
 え?と思っているこちらを気にも留めず、彼はそのまま口を開く。
「コイツのとこのアルコバレーノがなぁ、七不思議探れって言いだしたんだとよ」
「…そっか。…今は何を探してるの?」
「消える少女…だったかぁ?」
「あ……それ、私だと思う…」
「へぇ…何やったんだよお前」
「その…骸様のお使いで、雲の人に会いに来て…制服違うから…ダメかなって、消えたの」
「使いって……大変だなぁ……お前も」
「…スクアーロほどじゃ無いよ」
 何故だかほのぼのと会話をする二人を前に、綱吉は混乱していた。何時の間に仲良くなってたんだろう、この二人。確かに指輪争奪戦は終わって久しいと言えば久しい…のだろうか?とにかくある程度時間が立ったのは間違いないけれど、それにしたって。
 どうやって仲良くなったか訊いてみたい気がするけれど、今は七不思議を探す事を優先させるべきだろう。そうしないと帰れないし、付いて来てくれた鮫にさらに迷惑がかかる。
 これで半分終わったと喜んでいると、今思い出したと言う様子でクロームが口を開いた。
「あのね、ボス…雲の人も来てるよ」
「……」
 …さっきの喜びを返してください。





少しだけ弟妹同盟の片鱗が。
 
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