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臨静っていうか、本当は臨也と静雄と幽ですよ(カテゴリについて)



 朝起きたら女になっていたなんて体験、そうそうする事は出来ないだろうとは思う。
 しかし、その経験がどれほど稀有であった所で、それを身をもって体験するような事態を、両手を広げて歓迎出来るわけも無く。
「……何でこうなってんだ」
 ベッドの上で身を起こした静雄は、思わず片手で顔を覆った。
 昨日、自分が何かしたのだろうか?考えてはみるけれど、別に天罰がくだる様な悪い事はやっていない。むしろ、そういうのは臨也の方がたくさんやっているだろうから、天罰を先に食らうのはあっちだろう。
 では新羅やら森厳やらの危険な医者親子はどうか。
 この二人ならば何でもござれだろうことは間違いないが……こちらも、心当たりはなかった。思い返す限りで、昨日は一回も両者ともと遭遇していない。セルティと世間話をした事はしたけれど、そんなのはいつもの話だ。
 それ以外にも何かなかっただろうかと昨日の記憶を手繰り寄せて考えてみても、やはりそれらしい事柄が捕まる事も無い。
 全くもってワケが分からなかった。
「……どうすっかな」
 ワケが分からないなりに、けれど考える事は考えなければならない。
 幸いな事に今日は仕事が休みだから、出来うる限りは家から出ない事にする。これは決定事項だ。……が、実はそうすると食べるものが何もない状態での籠城になる。昨日の夜確認したところ、冷蔵庫の中は見事なほどに空だったはずだ。
 朝食くらいは抜いたところで問題ないが、昼食、夕食……と進むにつれて、途中で耐えきれなくなる気がする。それに、今日がそれでどうにかなったとしても、明日が果たしてどうなるのかが分からないのだ。
 正直、この状況は困ったなんて言葉では済まない。
 それに、だ。今までの考えは全て『誰も家を訪れない』事が前提である。
 もしも誰かが何かの気まぐれで訪れたりしたら……居留守を使える相手なら良いが、
「やっほー!シズちゃん、遊びに来たよー!」
 ……こーゆー、鍵が鍵の役割を果たしてくれない相手もいるのだ。
 一瞬で憂慮を現実にしてくれた相手に対して、静雄は。
 黙って枕元にあった目覚まし時計を投げつけた。
 かなり本気で投げたはずなのだが、それをいとも簡単に避けてこちらを向いた侵入者……折原臨也は笑みを作り、固まった。
 ぴしり、という音がするほどに。
 ……こんな臨也の姿が見れただけでも、今日という日の受難が報われた気がした。
「え……え?シズちゃん、え……………………え!?」
 笑顔から困惑に表情を変え、混乱の真っただ中にいるらしい仇敵。
 それを、面白く思いながら見ていた……間は良かった。
 これだけで終わってくれたらよかったのに、来訪者はまだいたのだ。
 そして、その『来訪者』は臨也の後ろからひょこりと顔をのぞかせた。
「……えっと」
 来訪者……平和島幽は、いつも通りの表情のまま首を傾げ……ぺこりとお辞儀した。
「すみません。このノミ蟲さんが兄さんの部屋に入るのを見て止めようと追いかけたんですけど、部屋を間違ったみたいです。でも俺、兄さんに女の双子がいるって初めて知りました」
「え、シズちゃんに双子っていたの!?情報屋なのに俺、全然知らなかったよ!?」
「俺も知らねぇよ……」
 だいぶ混乱しているらしい幽のおかしすぎる言葉と、それを真に受ける臨也の行動に、静雄は思わず頭を抱えた。
 自分の呟きを耳にしたからか、ここでようやく二人は混乱の世界から帰ってきたらしい。
「……まさか、本当にシズちゃんなの?」
「兄さんの双子の姉か妹じゃなくて……?」
「ちゃんと俺だ。っつーか幽、俺に双子がいたら流石にお前が知ってんだろ」
「いや……あまりに瓜二つだったから」
「まぁ、本人だしな」
 これで似てなかったら逆に問題だろう。
 そんな事を思い、応えつつも、とりあえずベッドから降りて、ダボダボになったパジャマのまま二人の前に立つ。
 ……まさかのまさかだったが、臨也よりも小さくなっていた。
「……まさかノミ蟲を見上げる日が来るたぁな……悪夢だぜ……」
「俺はちょっと感動してるよ……まさか。シズちゃんを見下ろす日が来るとはね……」
「ノミ蟲さん、感動ポイントが違います」
 臨也にツッコミを入れた幽は、そのまま彼の黒いコートの端をつまんで引っ張った。具体的に言うと人差し指と親指の先だけで、触るのも嫌そうに。もっとも、それが顔に出る事はないのだけれど。
「ノミ蟲さん、一緒に買い物に行きましょう」
「え、何で俺が幽君と?」
「兄さん、どうせ家から出たくないでしょうから。冷蔵庫だってろくに何か入ってるわけも無いし、俺たちが代わりに朝ご飯を買って来ないと兄さんの朝食が無いんです」
「じゃあ君だけで行けばいいじゃんか。俺は残るよ」
「ダメです。貴方を残して兄さんに何かあったら困る」
 パタン、と、そんなやり取りを続けながら、二人はそのまま家の外へと出て行った。
 唖然とそれを見送った後……静雄に分かったのは、自分が家の外に出る必要はないと言う事だけ、だった。






結局、昨日の言葉通り書いちゃった…。
混乱して「双子の姉か妹」的な事を口走る幽を書きたかったんです。
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