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超兵たちの幼少期のお話。一つ一つが独立してるけど、一応、続きます。
13.瞳に映る世界
神様、懺悔します。
私はあの子を壊しました。
また、あの子は私の所にやってくるだろう。
あの子は本当に私に懐いているようで、私はそれが嬉しい。動けないし五感もない、あるのはただ、『私』と言う意思と心だけのこんな私を、あの子は好きだと言ってくれるのだから。誰とも話せず誰とも触れられない私にとって、それは何よりも強い喜びだ。
だから私はあの子を歓迎するし、そうするとあの子もとても喜ぶ。それが嬉しくて、私は、またあの子と『次』の約束をする。
いつも、それの繰り返し。
けれど、それこそが私にとっての幸福だった。
続けばそれが当たり前になって、喜びが消えるかと思えばそんな事はなく、私は『再び』が訪れるたびに喜びを抱いた。それは回を重ねるごとに大きく強くなっていって、最近ではあの子がいない時に感じる喪失感が一層強くなっていた。昔はこれが当たり前だったのに、随分と幸せになれきってしまっていると、思う。
そして今も、あの子がいないこの部屋の中、私は寂しさを抱きながらあの子を待つ。
多分、そろそろ来る頃だと思うのだけれど。
『マリー!』
不意に暗闇の中、知った『声』が響いた。
あの子が来たのだと、私は歓喜に胸を躍らせる
『いらっしゃい、アレルヤ。今日の調子はどう?』
私には『今日』という物が分からない。その世界を知るための器官が全部役目を果たしていないのだからそれも当たり前で、私は、ただ、この子がここに来る事が出来るのは日に一度だと言う言葉を信じて、こうやって言葉を紡ぐのだ。
問いを受けてか、彼のえへへ、という笑い声が響く。
『今日はね、特に嫌な事が何も無かったから元気だよ』
『それは良かったわね』
『うん。こんな日が毎日続けばいいのにな』
『それは嫌だわ』
『何で?』
不思議そうな声音に、私は答える。
『続くのなら、本当に何も無い日が良いもの。だって、もしそんな日があったら、』
『あったら?』
『アレルヤはずっと、ここにいてくれるでしょう?』
尋ねかける様な言葉。
でも、私は知っている。この言葉に彼が何と答えるのか。知りながら尋ね、知りながら答えを貰い、知りながら感謝を口にするのだろう。
『うん、当然だよ!』
そうして思った通りの言葉をもらって、私は何か満たされた気分になった。
『ありがとう、アレルヤ。嬉しいわ』
『僕も、マリーが喜んでくれるなら、嬉しい』
きっと私が彼の顔を見る事が出来たなら、彼が笑っているのが見えたのだろう。彼の言葉を聞きながら、私は思った。彼の声にはそれだけ喜色が含まれていたから。とはいっても、私には笑顔というのがどんな顔なのかもわからないわけなのだけれど。そして、一生知ることもないんだろうけど。
私の世界は暗闇だ。瞳には何も映らない。目の前に広がるのは暗闇の王国。そこにポツポツと見えない明かりを灯すのがこの子の声だ。
だから、私はこの子が大好きだし、ずっと傍にいて欲しいと思う。
私の世界に明かりを灯す事が出来るのは彼くらいなものだろうから。
そんな事を思って、私は何となく彼に問いかけた。
『ねぇ、アレルヤ。アレルヤの世界はどんな世界なの?』
『僕の世界?』
『えぇ。聞かせて欲しいの』
『僕の世界……僕の世界……』
悩み込むような声を耳にして、私は黙る。彼の考えの邪魔をしてはいけない。
しばらく経ったのか、経ってないのか。
とても明るい声で、彼は言った。
『よく分からないけれど、マリーはそこに絶対にいるよ。きっと、マリーがいなくなったら僕の世界は半分くらい消えちゃうよ』
その言葉を聞いた瞬間、私は私の罪深さを知った。
私はこの子の世界を、私無しでは半分も瓦解してしまう世界に作り替えてしまったのだ。
アニメでは互いに手を取り合って終わる事が出来ましたが、一歩間違えたら悲劇しか起こらない出会いではあったよね、とか。超兵機関でも、死んでしまう可能性もあったわけだから。そうなったら、残った人は壊れずに済んだんだろうか、とか。
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